第7次エネルギー基本計画の議論が始まったようです。
総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会が開催され、会議の冒頭、齋藤経産相は「化石燃料の輸入金額は22年に34兆円にまで上昇しており、輸出で得られた国富を全て化石燃料で失っている」と指摘したといいます。
第7次エネルギー基本計画の議論開始 国際物流では環境負荷を削減:日経ビジネス電子版
世界的に利用が進む人工知能(AI)による電力需要の増加も挙げ「脱炭素エネルギーを安定的に供給できるかが国力を大きく左右する」との見方を示したそうです。
日本の生き残りをかけたエネルギー政策の議論になるといいます。再生可能エネルギーの活用に向け議論が深まるのでしょうか。
「脱炭素」には再生可能エネルギーは不可欠であることはいうまでもありません。この再生エネを巡って国内の争奪戦が始まり、安価で安定的に調達できるかが、企業の競争力を左右する時代になってきたといいます。
[新連載]ラピダス・TSMC、巨大工場立地の真相 再エネ争奪の前哨戦:日経ビジネス電子版
国の支援を受け次世代半導体の生産をめざすラピダスは、工場を北海道で建設中です。
「再生エネを積極的に使い、グリーンな技術を生かした工場を実現する」、大量に風力や太陽光などの再生エネ由来の電力を調達できる土地して北海道を選択したようです。
再生エネ適地のひとつにあげられる北海道、ラピダスの後を追うように北海道で拠点設置を決める企業は増えているそうです。ソフトバンクは苫小牧市に国内最大級のデータセンターを建設すると発表し、電力の多くを再生エネで賄うことを目指しているといいます。今後、ラピダスに部品を供給する周辺産業の進出も相次ぐといいます。
「日本の工場は稼働開始時から全消費電力が再生エネだ」、熊本県菊陽町に進出した半導体受託生産の世界最大手 TSMC台湾積体電路製造もまた再エネ調達を積極的に進める企業のひとつです。 九州もまた再エネ適地といわれています。
再生エネがあるところに、巨大産業が立地する──。(出所:日経ビジネス)
そんな時代が到来したようだといいます。足元では再生エネは使い切れないほどあるため、「今後も余る」と高をくくる企業がある一方で、一歩先行く企業は、PPA(電力購入契約)を締結したり、設置が計画される再生エネ発電所にアプローチする動きも活発化させています。
再生エネの獲得競争は今後激化しそうだ。電力中央研究所は、50年の電力消費が21年比で最大37%拡大すると予測。主な増加要因が生成AI(人工知能)の普及拡大で、世界的に化石燃料依存を減らす中、一段と再生エネを求める動きが強まる。(出所:日経ビジネス)
再生エネ争奪戦が始まりつつある日本、「30年以降になれば、再生エネなどクリーンエネルギーの争奪戦が本格化する」、経産省幹部はそう見ているといいます。「2~3年前には再生エネが取り合いになるとは予想しづらかったが、電力需要の大幅増を招く生成AIの登場で競争に拍車がかかっている」とも語ったといいます。先見性がないことを自ら証明しているようなものです。
米アップルにアマゾン、グーグル、グローバルにビジネスを展開するビッグテックは、世界のどの土地においても再生エネ調達を積極的に進め、進出した地で再エネ以外の電力を使うという前提はないようです。日本の再生エネ比率が向上しないと、これからは日本への投資を敬遠する、新たなジャパン・パッシング(素通り)になりかねないといいます。
昨年の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議で、アンモニアを推奨して、不名誉にも「化石賞」を頂いたことが思い出されます。 さて、いまだに7割以上を化石燃料に依存する電源構成が今回のエネルギー基本計画で、今度こそ見直されることはあるのでしょうか。
「参考文書」
AI、電力も富も爆食 「シン双子の赤字」が招く円安ループ 円の警告・国富を考える(4) - 日本経済新聞
なぜ必要? 今さら聞けない、再エネ調達の基礎知識:日経ビジネス電子版
「化石賞」日本が推すアンモニア発電は愚策か、石炭依存国の希望か | 日経クロステック(xTECH)