東西冷戦の象徴と言われたこともあったマクドナルドがロシアから撤退する。
米マクドナルドやスタバ、ロシアでの営業一時停止 | ロイター
ロイターによると、ロシアによるウクライナでの戦争を受け、ニューヨーク州年金基金などが世界的なブランド企業にロシア事業の停止を呼び掛けていることによるという。
機関投資家の声に真摯に向き合っているということなのだろうか。
こうした事例からすれば、この先、価値観が大きく変わっていくことになるのだろうか。もしかしたら、ESG投資もその類のひとつのかもしれない。
問われるESGの質
人類と地球の保護を目的としたはずのESG(環境・社会・企業統治)投資が、ウクライナに侵攻したロシアの独裁政権に資金を提供する形となっている現状が露呈しているという。
ウクライナ侵攻で露呈したESGの矛盾、ロシア国営企業に資金流入 - Bloomberg
「ESG」を冠した複数のファンドが、ロシア国営エネルギー大手ガスプロムやロスネフチ、同国の銀行最大手ズベルバンクの株式を保有している。これらのファンドはロシア国債も保有しており、最終的にプーチン大統領の独裁政治の財源となる資金を提供していることになる。(出所:ブルームバーグ)
難しい問題なのだろう。従来のESGの視点からすれば、基準に適合さえすれば、投資可という判断はあったのだろう。
ブルームバーグによれば、「いまだにサステナビリティーと倫理を混同している人々がいる。サステナブル・ファンドやESGファンドは道徳ファンドと同じではない」と言う意見があるという。
「今こそESG投資家にとって見直しの時期」と主張する声もあるという。
「われわれはロシア政府と、ロシア政府に関連する全ての企業に対してどう行動するかを決めなければならない。他の独裁政権に対しても、どうするかを決めねばならない」。(出所:ブルームバーグ)
「投資家として、企業そのものだけではなく、その企業が事業活動を行う環境にも目配せしなければならない」。
独裁政治や横暴な政府というものの存在を織り込まないのであれば、すでにESG評価に失敗している。(出所:ブルームバーグ)
これまでのESG基準では不足があって、そこモラルや倫理に足す必要があるということであろうか。それとも、ESG投資をアップデートし、新たなカテゴリーが変えていくことになるのだろうか。
脱ロシア
こうした動きは何もESG投資ばかりではないのだろう。
EUはエネルギーのロシア依存の比率を下げることに動き出している。背景には脱炭素もあろうが、地政学リスクを考慮しなければならないのだろう。原発についても再考はあるのだろうか。
EU、ロシアのエネルギー依存脱却へ 10年以内に「ゼロ」 | ロイター
ロイターによれば、EUの執行機関欧州委員会が、ロシア産天然ガスの依存度を年内に約6割低下させ、「2030年よりかなり前に」 依存をゼロにする計画を発表したという。
風力発電と太陽光発電の拡充で今年は200億立方メートルの天然ガス需要が代替できると試算。30年までに発電能力を3倍に高めれば、毎年1700億立方メートルの天然ガス需要が削減できるとした。(出所:ロイター)
米は小麦の代用になるか
「小麦よりもアジアで愛されるコメ、価格は比較的安定している」とブルームバーグは指摘し、アジア諸国は代替品を見つけることができるはずだという。
アジアの食料インフレ、「コメ愛」で悪化回避も-ADBエコノミスト - Bloomberg
パンや麺、家畜飼料などに使われる小麦の国際貿易のおよそ4分の1をロシアとウクライナが合わせて占めるが、ウクライナの港は閉鎖され、ロシアは制裁で貿易が困難な状況だ。価格急騰で世界中で食物インフレが加速し、輸入に頼っている国々には懸念が広がっている。(出所:ブルームバーグ)
食糧不足でパニックになるくらいなら、小麦粉の代わりに米粉の利用がもう少し進めた方がいいのかもしれない。情勢が落ち着くまでは、小麦の需要が減じるように、米食を増やすことに真剣に考えてもいいのかもしれない。
「参考文書」
世界の食料価格、2月過去最高に ウクライナ危機で拍車: 日本経済新聞
シェルとBP、ロシア産石油の新規購入停止-自主制裁が拡大 - Bloomberg