経団連の十倉会長が昨年12月、「2022年の経済展望とサステイナブルな資本主義の道筋」という講演した。
その中で、爆発的に増加する人口について、とある人の言葉を引用し、「地球を生命体に例えれば、人類の異常な拡張こそがウイルスであり、Covid-19は免疫だ」と言っていた。
2100年ごろ、世界の人口は110億人に達するという。ただこれをピークにして、その後はなだらかになるそうだ。どの国も豊かになり、子どもの出生率が下がるという予測によるという。
こうした現実からすれれば、今直ぐに、カーボンニュートラルに取り組まなければならないと十倉会長は強調し、そのための「サステイナブルな資本主義」だと指摘、GX グリーントランスフォーメーションが欠かせないとする。
この講演内容をどこを切り口にして読むかで、多少解釈は異なるのかもしれない。いずれにせよ、カーボンニュートラルの達成から逃げてはならず、そのための技術革新と実用化は絶対とする。
経団連:2022経済展望とサステイナブルな資本主義の道筋 (2021-12-23)
一方で、GXのX、トランスフォーメーションが意味するように、「社会変容」「行動変容」は不可避で、国全体で、気候変動に関する意識の遅れを挽回する必要があるという。
GXを推進するには、科学的、論理的、定量的に、わが国の置かれている状況について、不都合なことも含めて、国民に正しく理解してもらう必要があります。(出所:経団連)
また、「GXは成長の柱」と、十倉会長は繰り返す。
それが確実に実行され、人が変わり、企業が変わり、社会変容がおきれば、未来に少し希望の光がみえてくるのであろうか。
ESG投資:日本を見限る個人投資家
日本の個人投資家も世界の株式市場がESGへ傾斜するのと同様に、その傾向にあるという。しかしなぜか、自国の企業を対象とするESGアクティブファンドをほぼ素通りしている、とブルームバーグがいう。
ESG Weekly: ESGマネーが素通りする日本、「三重苦」にあえぐ - Bloomberg
国内企業限定のESGアクティブファンドには資金が集まらず、また、その運用成績もばらつきはあるものの、低パフォーマンスと指摘する。
「個人は投資に際して過去の実績を重視する傾向があり、ESGに関係なく日本を見限ることがトレンド」と言う。
パフォーマンス格差の壁により、個別企業のESG優劣が吟味される以前の段階で日本株へは資金が向かいづらい構図となっている(出所:ブルームバーグ)
その背景を、米巨大企業が研究開発に潤沢な資金を費やしている半面、日本企業はキャッシュを積み上げているとブルームバーグはいう。
「昨年9月末の民間企業の現金・預金は321兆円と過去最高となり、最高を更新するのは2020年3月末から7四半期連続」と指摘、「コロナ禍でも日本企業は「将来への種まき」より「守り」を優先している」という。
政府も同様に動きが鈍く、環境政策について、「掛け声だけで実際の支出は少ない」とみなされ、政府を頼れない企業は経営効率を上げて株価パフォーマンスを改善させなければならず、ESGマネーを呼び込むスタートラインにすら立てていないという。
十倉会長の思いと現実では甚だ乖離しているということなのだろう。
秋田沖の風力発電事業を失注したレノバが赤字に
再生可能エネルギー開発を進めるレノバが、秋田県由利本荘市沖の洋上風力発電事業案件を獲得できず、2022年3月期の連結最終損益が赤字に陥ったという。
この事業を獲得したのは、三菱商事を中心とするコンソーシアム。レノバが獲得できなかった案件には、ウェンティ・ジャパンも加わっているという。
三菱商連合が洋上風力発電事業を総取り、政府公募で競合を圧倒 - Bloomberg
ブルームバーグによれば、いずれの事業でも米GE ゼネラル・エレクトリック製の出力1万2600キロワット/基の発電設備が採用となったそうだ。三菱商事がスケールメリットを活かした効果によるものなのだろうか。
レノバの案件失注と赤字化に、十倉会長が感じる危機感の根っこがあるのかもしれない。GXを成長の柱にするための課題がそこにありそうだ。