まだ気が早いですが、冬がやってきて、もし今年も寒い冬になると、計画停電になる可能性が否定できないといいます。 経済産業省が来季の冬の電力需給の見通しを示し、それによると、東京電力管内では安定供給に必要な予備率3%を大幅に下回ってマイナスになると予測し、極めて厳しい状況といいます。
来冬の電力需給見通し 東京電力管内の予備率はマイナスと予測 | NHK | 宮城 福島 震度6強
先進国であるはずの日本で、計画停電もあるまいと思います。こうした報道を目にすると、後進国化していないかと危惧を感じます。
NHKによれば、要因は、老朽化した火力発電所の休止や廃止が相次いでいるうえに、先の東北地方を襲った震度6強の地震で、火力発電所の設備が壊れ、現在も復旧の見通しがたっていないことも影響しているといいます。
電力の安定供給には、ピーク時の電力需要に対する供給の余力=予備率が3%は必要とされています。10年に1度の厳しい寒さを想定した場合、東京電力の管内では、
▽来年1月はマイナス1.7%、
▽来年2月はマイナス1.5%になると予測しています。現時点では電力の供給が十分確保できないことを意味します。(出所:NHK)
需要が明らかにあり、また電力を扱う企業もたくさんあります。それなのに、なぜ供給不足が生じる恐れがあるのでしょうか。企業は何をし、何のために商いを行っているのか理解できません。
様々な要因があることも理解できます。「脱炭素」「脱原発」に、ウクライナ危機による資源価格のさらなる高騰など。難しい連立方程式を解くことが求められているのかもしれません。しかし、それにしてもでも、こんな事態に陥るまでになぜ状況が悪化してしまのでしょうか。
遅延する新車の納期
自動車では、注文してから納車されるまでの期間が、大幅に延びているといいます。従来、1カ月~1.5カ月程度だった納期が、今では2カ月で納車できれば短い部類に入る事態になっているといいます。車種やグレードによっては半年を超え、1年以上になる場合もあるそうです。
半導体不足だけでない「新車の納期遅れ」の真実 | 販売・購入 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
納期遅延の原因は、半導体の不足だけではない。例えば電気信号を伝えるワイヤーハーネスなどの部品、複数の部品によって構成される各種のユニットなどが、幅広く滞っている。しかも、供給の滞りは不定期に生じるから、計画が立てられない。(出所:東洋経済オンライン)
電化製品までも入手難に
自動車に加え、今やパソコンにカメラの新製品が手に入らない、LED照明までが品薄と日本経済新聞は指摘しています。半導体不足のためですといいます。
車や家電が手に入りづらい 半導体不足は解消するか: 日本経済新聞
米中対立により、半導体のサプライチェーン供給網に目詰まりが生じ、そこに天災などによる半導体工場の稼働低下などの要因が重なり、また新型コロナによる生活様式の変化で、問題が顕在化したといいます。
半導体各社が積極的に投資を進め、生産能力の増強を図っているそうですが、これには時間がかかるといいます。また、これだけでは問題は改善せずに、工場の運用や立ち上げを担う人材も不足感しているといいます。
「需要が供給を上回る状況が続けば、価格が上昇しかねません」と日本経済新聞は指摘します。不思議なことで起きるものです。
これほどにビジネスにとっては好環境であるはずなのに、経済が停滞気味というなのはなぜなのでしょうか。
なぜ円安なのだろうか
西側諸国が高進するインフレを抑制しようと動き始め、それに対して日本は未だ日銀が目標とする物価に到達しないと、金融緩和を続けています。市場はそうした姿勢を受けて、円安方向に動いています。
為替の円安、関西経済全体としてプラス面が大きい=日銀大阪支店長 | ロイター
ロイターによれば、日銀の大阪支店長が、輸出産業が多い関西では、円安はこれら産業の収益拡大につながると指摘し、輸出企業の株価上昇を通じて個人消費の下支えにもなると語ったといいます。
様々なところで需要過多となり価格上昇の危険性を高まってきているのに、さらに個人消費を促進して何か意味あることなのでしょうか。品不足というフラストレーションを高めることにならないのでしょうか。
日銀が、こうした社会を鑑みずに、自らのことばかり考えているように見えてしまいます。
中小企業や非製造業では価格転嫁が難しい企業が少なくなく、価格転嫁が進まない場合には企業収益を下押しし、実質所得の低下などを通じて個人消費を下押す可能性がある。(出所:ロイター)
ウクライナ危機は不確実性を高め、様々な資源などの価格に上昇圧力が加わり、この先経済へ影響を及ぼすことが指摘される。こうしたネガティブ要素は考慮されずに、足元からだけで情勢判断しているのでしょうか。
結局、株主重視のままなのか
全米経済研究所の研究によると、MBA 経営学修士号を持つマネージャーの生産性は、そうではないマネージャーよりも高くはないと、Business Insiderが伝えています。
MBAを持つマネージャーを採用すると、売上は上がらず賃金は低下…最新調査で明らかに | Business Insider Japan
また、アメリカとデンマークの企業を調査したところ、MBAを持つマネージャーを採用すると従業員の賃金が低下したことが明らかとなったそうです。それでも、MBA取得者に対する需要は高まっているといいます。
研究者が調査結果に基づき出した結論は、1970年代に変化したビジネススクールの典型的なイデオロギーが、MBAを取得したマネジャーの仕事への取り組み方に影響を与えているということだった。つまり、彼らは労働者よりも株主を重視するようになったということだ。これは、MBAを持っていないマネジャーが、より多くの売上や利益を労働者と共有する傾向があるのとは対照的だ。(出所:Business Insider)
株主重視することについては、ビジネススクールだけでなく、経営コンサルタントも同様に企業に対して同じことを助言してきたのだからといいます。
株主第一主義を改め、ステークホルダー資本主義が説かれているが、この新しい考えの研究が浅く、学んだ人もいないのでしょう。日本経済界も、まだ株主重視にどっぷりつかっているとなのでしょう。景気が好転するにはもう少し時間がかかりそうです。
どこにおいても、「人」が不足しているということなのでしょう。