Up Cycle Circular’s diary

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【気候変動の対策強化を求める株主提案】それを拒絶する企業たち その理由は

 

 株主総会で、気候変動への対策強化を求める株主提案の動きが広がっているという。

 JIJI.COMによれば、電力会社以外で昨年1件だった株主提案が、今年は金融や商社などに対し出されているそうだ。招集通知に気候変動や社会課題への対応状況を掲載する企業も増えているという。
www.jiji.com

 住友商事東洋製罐グループには、オーストラリアの環境団体と香港のファンドがそれぞれ情報開示の強化などを求めて株主提案したという。また、関西電力には京都市が石炭火力発電所の新設中止などを提案したそうだ。

 

 

  住友商事によれば、株主から「パリ協定に沿った事業活動のための事業戦略を記載した計画の策定と開示という条項を定款に規定する」との提案があったという。

 取締役会で検討、この提案に反対との立場と表明し、株主総会では否決されたいう。

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(資料:住友商事

 取締役会として反対した理由は、既に気候変動緩和の各種課題解決を目指していること、また、必要に応じ機動的に計画を変更し、実行していくためには個別方針を定款に定めることを避けたという。

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「提案することで取締役会が対策の検討を迫られる」。

気候ネットワークの平田仁子理事がそう話しているとJIJI.COMは紹介する。  

 住友商事の事例でも、意味はあったのだろう。

dsupplying.hatenablog.com

 

 一方で、そうした方針を定款に規定する企業もある。

 ダノンが上場企業としては世界で初めて、株主価値の持続的向上と社会、環境問題解決の両立をはかることを定款にて明確にし、株主総会で99%以上の株主の賛成で決議されたという。

dsupplying.hatenablog.com

株主の長期的な価値創造と社会、環境問題の解決は二律背反ではないという、SDGs・ESG経営の考えを、ダノンが実践していくことを期待しています。 

(出所:ダノン公式サイト「ダノン、上場企業初となる「Entreprise à Mission(使命を果たす会社)」に) 

 国内企業も、株主提案を端から拒絶することなく、もっと前向きにとらえてみてはどうだろうか。

 既に取り組んでいるのなら、定款を変更しても何も差し支えないのではなかろうか。それともNGOからの提案を受け入れることに抵抗感でもあるのだろうか。

 

 

 欧州では、バイオマス発電力の一部を再生可能エネルギーから除外する方向の規制強化を検討しているそうだ。

 日本経済新聞によれば、その背景には、環境団体や専門家からの圧力の高まりがあるという。 

www.nikkei.com

 環境団体や専門家らは木材の燃焼を伴う発電は二酸化炭素(CO2)を排出し、「カーボンシンク」とよばれる森林によるCO2吸収の機能を低下させると訴えている。

欧州委に対しては、再生可能エネルギー指令を改正し森林由来の原料を使った電力を再生可能エネルギーと認めないよう求めている。 (出所:日本経済新聞) 

 きわめてリーズナブルな主張なのだろう。木を燃やさなければ、二酸化炭素の排出より吸収の方が多くなることもあるのかもしれない。それでも持続的な森林管理は必要であろうし、伐採が必要な木がなくなることはないのだろう。

「全体のなかでバイオマス発電は必要な部分だ。だが、それは適切なバイオマスである必要がある。(バイオマスといえば)森林を丸ごと切って焼却炉に放り込むという見方は容認しがたい。それは持続可能でないし、議論として成立しない」と、欧州委のフランス・ティメルマンス上級副委員長(気候変動担当)が述べたという。

 サスティナビリティで先行く欧州でも、規制がないと秩序は維持されないのだろうか。

 

 

 こうした気候変動に関わる問題は企業活動によって生じ、また、その問題は企業活動によって解決される。

 国の規制は常に後手に回るものだ。いつまでもNGOばかりが監視活動するのではなく、もしかしたら、株主一般がそうした目を養えばいいのかもしれない。