Up Cycle Circular’s diary

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ESG投資 滞り始める石炭火力への融資 商社の業績を左右する

 

 あの著名な投資家のウォーレン・バフェット氏の米バークシャー・ハザウェイが、日本の5大総合商社に出資して話題になったことは記憶に新しい。その商社たちの中間決算が出そろい、その内容を日本経済新聞が報じる。

 

www.nikkei.com

 

 

 

地球温暖化に加担してきた商社たち

 商社間の業績の差は、「鉄鉱石」と「原料炭」だと日本経済新聞は指摘する。 

「鉄鉱石」に強い三井物産伊藤忠商事、丸紅は恩恵を受け、「原料炭」が得意な三菱商事が苦戦しているという。

経済回復の兆しを見せる中国は鉄鋼生産を増やし、鉄鉱石の価格は高止まり。一方、原料炭の価格も一時上昇したが、「中国が豪州産の石炭の通関手続きを規制する」との観測が影響して下落。 (出所:日本経済新聞

 

 「鉄鉱石」に「原料炭」、どちらも「鉄鋼生産」に必要不可欠な資源。そして、その鉄鋼は、製造工程で大量の二酸化炭素を排出し、産業界の中にあって、その多さが指摘されている業界のひとつだ。

 

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プラスチックス 商社業績に貢献

 そればかりでなく、どの商社も一様に化学品も手がける。

 伊藤忠商事は、中国向けの合成樹脂や日用品など化学品部門が堅調だという。丸紅も化学品関連が好調で、4月前後に価格が急落したエチレンを、価格上昇後にさばいて利益を出したという。三井物産も基礎化学品のトレードが堅調だそうだ。

 プラスチックスという言葉を使っていないが、市場に出回るプラスチックス製品の原料となるレジンであったり、それを作る原料が商社の好成績を支えている。

 

 

 

 商社の憂き目 石炭火力へのダイベストメント

 五大商社の一つ、住友商事は豪州の石炭火力発電事業で250億円の損失を出したという。

 週刊エコノミスト Onlineによれば、「脱炭素」方針を重視する金融機関から事業への融資が滞ったことが原因とみられるという。この発電所には、これまで豪州などの銀行団が融資していたが、今年8月に融資契約が終了することが決まったという。

 この石炭火力発電事業への融資で借り換えができなかったと住友商事は公表、週刊エコノミスト Onlineは、邦銀によるダイベストメントを憶測する。

 

weekly-economist.mainichi.jp

 

 結果として、20年7~9月期決算で投融資額250億円全額を減損として計上したという事実が住友商事に残った。

 世界的な脱炭素やESG投資の流れが定着してきていることを示す好例なのかもしれない。週刊エコノミスト Onlineは、過去に着手した石炭関連事業については損失が顕在化するリスクもはらむと指摘する。 

 

総合商社とは

総合商社はメーカーのように技術や研究といった「コア」がなく、経営の自由度の高さを生かして成長してきた。

事業の売却など資産の入れ替え(リサイクル)は常に実施しており、資産リサイクルと全体的なポートフォリオの維持は両立しうる。

これまでの「我慢と変革」の結果が、事業ポートフォリオとして表れているともいえる。 (出所:日本経済新聞

  

 今、商社にとっては「我慢」のときなのだろうか。

 

 

 

 鉄鋼石を産出する資源会社の脱炭素への挑戦

 豪英の資源大手BHPグループは、「鉄鉱石」や「石炭」、「ボーキサイト」など様々な金属や鉱産品を取り扱う世界最大の鉱業会社だ。

 そのBHPは、2050年までに「CO2のネットゼロ」になるという目標を公表し、2030年までに自社事業からのCO2排出量を30%削減するという具体的な目標を設定している。これには、「スコープ3」での30%削減も含まれているという。つまり、客先工程でのCO2削減にも取り組む必要が生じる。

 自分たちが生産、供給する鉄鉱石と石炭を利用する鉄鋼産業の温室効果ガスの排出削減に協力することが、自分たちの目標達成につながるというわけだ。 

 そして、中国で世界最大手の鉄鋼メーカのひとつである中国宝武鋼鉄集団と協力して、「脱炭素化イニシアチブ」を進めるという。

 BHPは、このイニシアティブに今後5年間で3500万ドル(約36億円)を投じるという。

 

www.smh.com.au

 

  こうした事例を見ると、商社もいつまでも「我慢」ではなく、「脱炭素」という流れを取り入れて、事業ポートフォリオを見直したり、事業自体の「変革」に挑戦しなければならないのかもしれない。

 

総合商社だからこそできること

 総合商社は、資源から食糧、衣料関連など様々な分野でトレードなどでビジネスを行い、その仕事は全世界へと広がる。もしかしたら、SDGsの17の目標に、一番関与できる業界のかもしれない。

 

 SDGs 「Sustainable Development Goals」、国際社会が協働して地球規模で取り組むべき目標がまとめられている。

誰一人取り残さない」という理念の下、環境や社会、経済などの分野における17のゴール(目標)からなる。

 「SDGs」や「脱炭素」に取り組む先駆的企業が、もういくつも存在するようになった。それは商社が取り扱う商品やサービスでも例外ではない。

 こうした事例は学びの機会になるだろうし、もしかしたら、そうした企業と協力、ビジネスを始めることもできるのかもしれない。

 商社が、ESG投資やSDGsという流れを逆手にとって、取引先を選別、包含して「実質ゼロ」やSDGsの達成を目指そうとするのであれば、2030年のSDGsの達成や、2050年の脱炭素社会の実現は不可能なことではなく、一歩も二歩も近づくのかもしれない。絵空事にしてはならないはずだ。その機能、ビジネスの範囲からして商社なら実行できることだと思う。

 

www.nikkei.com

 

 

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