若手農家の離農が増加しているということが、農業版の国勢調査「農林業センサス」で明らかになったという。意外だった。手厚い農業政策で就農人口が増えているのかと思っていたが、真逆だった。
実家近くの畑のいくつかは耕作しなくなった。農林業センサスが指摘するように高齢化の影響もありそうだ。耕作放棄地に見なされれば税金が高くなる、定期的に耕しては草ぼうぼうにならないようにしているが、風が強い日には土埃が舞い上がる。
農地の有効活用をもう少し考えたほうがいいのかもしれない。
農地への炭素貯留の事業を推進するため、住友商事と米国のアグリテック系ユニコーン企業の「Indigo Agriculture」が協業を始めるそうだ。
そのIndigoは、自然の力を利用する「持続可能な農業」の実現をミッションとしているという。「環境保全型農業」を導入し、それによって増加した炭素の貯留量を、「第三者認証付きの排出権」として買い取り、企業などへ販売する仕組みを構築、農家のコスト負担を軽減し持続可能な農業へのシフトを可能にしたという。
「環境保全型農業」とは、土壌の炭素貯留量拡大に資する農法の総称で、同じ農地で同一の作物を栽培し続けるのではなく、複数の作物を順番に栽培する輪作や栽培した植物を収穫せず、田畑に入れて肥料とする緑肥、堆肥の使用などのことを指すという。
手間がかかり、経費出費が多そうな農業にあって、「排出権取引」などで収入が保証されれば、インセンティブになり、就農人口が増えたりするのだろうか。
農業は、増加する人口に食料を供給するだけでなく、最大の気候ソリューションになりうるというのはTechCrunch。その「環境再生型農業」を巡っては熱狂が起こり、それによって気候変動の影響を大規模に軽減できる可能性と結びついているという。
土壌炭素隔離によって年間2億5000万トンの二酸化炭素を除去できる可能性があると推計しており、これは米国の排出量の5%に相当する。 (出所:TechCrunch)
住友商事が「Indigo」に投資する理由もそういうところにあるのだろうか。
一方、農林水産省は、脱炭素社会実現に向けた農林水産分野の取組として、「みどりの食料システム戦略」を掲げ、2050年までの農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現を目指す。
2050年までに、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量の30%低減を目指し、オーガニック、有機農業については、2040年までに主要な品目について農業者の多くが取り組むことができるよう次世代有機農業に関する技術を確立、2050年までには、オーガニック市場を拡大させ、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25% (100万ha)に拡大することを目指すという。
化学農薬については、2040年までに、ネオニコチノイド系農薬を含む従来の殺虫剤を使用しなくてもすむような新規農薬等を開発し、2050年までに、化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減を目指すという。
「農林業センサス」で示された就農状況と、これからの農業の可能性との間にギャップがあるように感じる。NHKによれば、農林水産省は、5月中旬にも検討会を設け、若い世代を中心に新たに農業を始める人を増やし、定着させるための対策について集中的に議論を行うという。
国が示す脱炭素施策は、もしかして現状の農家の収穫量とコンフリクトしないだろうか。もちろんオーガニックがベターであることは理解するし、消費者にとっても手軽にオーガニックの食品が手に入るのであればありがたいことではるあるけれども。
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父が遺した大きな家庭菜園のとなりは老夫婦の畑だった。その働きぶりを見ていると農業のたいへんさを少しばかり知る。
努力に見合った報酬と感じなければ、それを維持するのは厳しいのかもしれない。続けていくためには、インセンティブは多い方がいいのだろう。
この先、どれだけ就農する人が増えるのだろうか。環境再生型農業に挑戦する人は増えていくのだろうか。