サーマルリサイクル施設や廃家電リサイクル施設を運営していた1999年設立の京都の産廃処理業者が倒産したという。
食品廃棄物や紙くずなどの固形有機物をメタン発酵によりバイオガス化するバイオリサイクル施設を2001年に稼働させ、鳥インフルエンザによる鶏卵の焼却処分などもあり、一時は売上を伸ばしていたというが、その後、サーマルリサイクル施設から法定基準を超えるダイオキシン類を排出、行政指導を受け、一時操業停止に追い込まれたという。その後、廃棄物の受け入れ量が伸び悩み、今回の倒産に至ったという。
循環型経済への歩み
「捨てない」循環経済、サーキュラー・エコノミーへの転換が急務になっているといわれる。
(5)資源 「捨てない」経済、循環に成長の芽: 日本経済新聞
廃棄物の量とその処理費用はアジアを中心に膨張していく。
日本経済新聞によると、その費用は30年までの10年間で世界全体で1660兆円になるという。世界上場企業の利益の3倍になると指摘する。
日本には法はあるが実行力で劣る。税などコスト意識が課題だ。温暖化ガス排出量に応じて課税する炭素税は本格導入していない。廃プラスチックのリサイクル率は国際基準だと2割台。EU平均の3割台を下回る。(出所:日本経済新聞)
こうした流れが本流となっていくとするのであれば、京都のサーマルリサイクルを主体した会社が整理されるのもうなづける。
C2Xプロジェクト
この京都の会社に出資していた東証一部に上場する大手プラント関連企業の「タクマ」が、循環型で持続可能な脱炭素社会の実現に向けたオープンイノベーションプラットフォーム「C2X(Carbon to X)」プロジェクトに参画している。
2050年カーボンニュートラルの実現に向け「C2Xプロジェクト」に参画します|2021年度|ニュース|タクマ
「C2X」とは、カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に向け、異業種連携、複数社のコラボレーションによって、革新的な技術(脱炭素技術、CCUS技術等)を事業化することに重点をおいたプロジェクト活動だそうだ。カーボンリサイクルを主としているのだろうか。
ごみ処理施設や焼却炉などを手がけるタクマは、次世代の清掃工場を自治体などと構想、検討していくという。
このプロジェクトには、タクマの他にも、産業廃棄物処理・廃プラスチックの燃料化と発電事業など静脈産業も手がけるサニックス、河川湖沼の浄化、水産、農業、工場排水処理などを行う大栄THA、産業廃棄物の運搬・処理やリサイクルなどの事業展開する三光などの静脈産業関連企業が参加しているようだ。
循環型経済と静脈産業
壮大な構想にも見えてしまうが、こうしたプロジェクトがなければ、サーキュラー・エコノミー、循環型経済を支える静脈産業が育たないということなのだろうか。
「静脈産業」とは、廃棄物の処理、処分、再資源化を担う産業を指す。
経済活動を人体の血液循環になぞらえ、生産財や消費財がメーカーから小売りや卸を経て消費者へ流れを「動脈経済」といい、この担い手を「動脈産業」とよぶ。これに対し、消費された廃棄物をふたたびメーカーへ運ぶ担い手を「静脈産業」という。
コトバンクによると、静脈産業を政策的に後押しするには、廃棄物の排出抑制や効率回収につながる規制強化が必要といわれる。また、静脈産業をビジネスとして育成するには、動脈産業側の変化も求められる。
循環型経済に向け、コンソーシアムやアライアンス、こうしたプロジェクトなど、多様な共創が始まっているようだ。もしかしたら、成功するモデルはごく一部なのかもしれない。それでも前に進めなければ、いつまでもごみの資源化は進まず、廃棄物はいつまでたってもなくならないのだろう。