災いがあると社会が変わることがあるという。
気候変動やSGDsの大きなうねり、コロナ渦というこの難しいときに、ユニクロが大きく飛躍している。昔ながらのアパレルは度重なるリストラを繰り返すが、飛躍のきっかけをつかめずにいるようだ。小手先の構造改革ではなかなか成果が上がらないのかもしれない。
「緑のユニクロ」、「RE:UNIQLO」など新たなサステナブルな施策を次々と打ち出すユニクロ。トレンドを読み解き準備を怠らないから、こういう苦しい時に実りがあるのだろうか。
ユニクロほどの派手さはないが、リサイクルポリエステルというサステナブルな素材「RENU(レニュー)」で作られた商品がじわじわと増えているようだ。
既に、「H&M」「GU」、「デサント」などで採用され、「ハンティングワールド」のリバーシブルトートバッグにも採用されたという。
この「RENU」が目指すのは、廃棄物を生み出さない経済循環、「サーキュラーエコノミー」。
「原料→紡績→織布・編立→縫製→マーケット」という一方通行であった商流がひとつの円として結ばれれば、循環型経済サーキュラーエコノミーとなり、廃棄物を出さない経済循環のしくみができあがる。
WWD Japanによれば、中国の協力工場で回収した端切れや残たんに加えて使用済衣服で、年間約3万トンの衣料品生地を回収しているそうだ。
これらを不用品を資源にして、「ケミカルリサイクル」で元の原料に戻し、新しい繊維に再生していく。そうして出来上がるリサイクルポリエステルは、バージンポリエステルと何ら変わりなく同じ品質と安定した染色性を備えるという。
このプロジェクトを進めるのは、祖業が繊維だった伊藤忠商事。その強みは、繊維産業のバリューチェーン全体で運営ができること。
そして、このプロジェクトは横のつながりを作るための一つのツールとしても機能するだろうと伊藤忠商事の下田原料課長がWWD Japanのインタビューで話す。
renu-project.com
このプロジェクトが英エレンマッカーサー財団が運営する「CE100」のように機能すればいいのかもしれない。ベストプラクティスを探求し、新たなビジネスが生まれれば、循環型社会への移行も早まっていきそうだ。
「NuLAND」というランドセルにも、この「RENU」が採用され、軽量なランドセルが出来上がったという。
再配達をなくす置き配バッグ(TM)『OKIPPA(オキッパ)』も、このリサイクルポリエステル「RENU」で作られ、置き配バック利用によるカーボンニュートラルの実現に貢献できるという。
こうした企業ごとの開発に加えて、この先は消費者の文化レベルにも変化が生まれれば、不用品が資源になり、そこから循環型社会が実現していくのかもしれない。
そのためには、衣料品の回収を定着させる必要があると伊藤忠の下田課長はいう。
以前イタリアに住んでいた時には家の近所に衣料回収ボックスが常設してあり、生活に溶け込んでいた。モノを捨てて焼却するのが当たり前になっている日本では、新しい制度や仕組み作りから取り組むべきだろう。 (出所:WWD Japan)
「回収して繊維に戻す工程をわれわれとしてもさらに注力していきたい」と下田課長は述べ、「まだ完全にクローズドループは実現できていない」、「究極の目標は、世界各地でこのプロジェクトを地産地消できるまでに拡大していくことだ」という。
ファッション業界がほんとうに温室効果ガス削減への取り組もうと思うようになれば、こうしたリサイクル素材の活用が増えていくのだろう。そのために衣服の回収を進め、さらに技術革新が進めば、様々なリサイクル素材がこの先登場してくるのかもしれない。
「ケミカルリサイクルはさまざまな技術開発が現在ラボレベルで行われている。それらをどのように商業化していくかが、この5年での課題となるだろう」と下田課長はいう。
5年後、どれだけサステナブルな服が増えているのだろうか。