「流行りのSDGs」、企業説明会に参加した就活生が、担当社員のその発言に疑問を感じるという。
教育現場では、学習指導要領が変わり「持続可能な社会の創り手の育成」が明記され、教科書でも「SDGs」が取りあげられているという。サスティナビリティ活動をする学生が増えているというのだから、彼らにとってはもはや常識であって、流行り廃りのものではないのかもしれない。
企業がSGDsに取り組む動機と学生たちが考えるSDGsには温度差があるのだろうか。
動画配信サービス世界最大手の米NETFLIX(ネットフリックス)は、「2022年末までに温室効果ガスの実質的な排出量をゼロにする」と発表した。
そのプロジェクトは「ネットゼロ + 自然」と呼ばれる計画で、3つのステップで実現させるという。
ステップ1: 排出量の削減
Science-Based Targetsのガイダンスに基づき、スコープ1 (自社からの直接排出))とスコープ2 (エネルギー起源の間接排出))の排出量を2030年までに45%削減。
ステップ2: 既存の吸収源の保全
スコープ3(その他の間接排出)については、大気中から二酸化炭素を吸収する働きのある資源を保全するプロジェクトに投資を行い、2021年末までに完全に相殺することを目指す。まずは、世界的な気候変動目標を達成するうえで重要視される熱帯雨林のように危機に瀕する自然環境の保全に取り組む。
ステップ3: 大気中の二酸化炭素の除去
2022年末までに危機的状況にある自然生態系の再生への投資を拡大し、ネットゼロ達成を目指す。草地やマングローブ、健全な土壌を回復させるプロジェクトは、二酸化炭素を吸収することにつながるほか、私たちの生活にさまざまな恩恵をもたらす。 (参考:NETFLIX)
意外だった。脱炭素「カーボンニュートラル」は工業界の絶対的責務であって、エンタメ産業までが宣言するのは、どこか「ウォッシュ」的なところがあるのではないか、しかし、そうした考えは偏見だったかもしれない。
もはや「カーボンニュートラル」は、あたり前とか、CSR社会的責務(Responsibility)とか、そういうことではなくて、絶対的な責務(Obligation)になっているのではないか、今回のNetflixの発表を読んでそんなことを感じた。
天然資源や土地、様々な地球上のリソースを使用する以上、そこに地球環境を保全する義務があると考えるほうがスマートなのかもしれない。
Netflixによれば、事業活動による二酸化炭素の排出量のおよそ半分 (50%) は、オリジナル作品の制作過程で排出され、残りの45%は企業活動(リースしたオフィスなど) や購入した商品 (マーケティング関連の支出など) によって生じ、サービス提供で使用するAWSアマゾンウェブサービスなどクラウドプロバイダーで残りの5%を発生するという。
Netflixは、映画やテレビ番組制作における排出を削減することに投資してきたという。それらには、制作チームのスタッフは、移動に伴う排出を抑えるため、撮影される現地の人たちを採用したり、電気自動車に切り替えたり、セット上ではより多くのLED照明を使用し、使用されるディーゼル発電機の削減を推進しているという。
Netflixは昨年2020年、二酸化炭素の量は113万mtを排出したという。前年の131万mtからわずかに減少した。
こうした活動は、排出量の削減ばかりでなく、経費削減や制作の効率化にも役立ったのだろうか。
環境のみならず、ネットフリックスはダイバーシティ & インクルージョンにも力を入れると、サステナブル・ブランドジャパンはいう。
背景には、「世界中の会員を楽しませるには、多様なクリエイターと仕事をしていくこと、従業員の多様性が必要」「優れた作品は、楽しませるだけでなく、偏見と闘い、共感と理解を深めるもの」との考えがある。 (出所:サステナブル・ブランドジャパン)
地球に暮らす様々な人々と仕事したり、そして、そのサービスを提供していくということにおいては、SDGsの根幹をなす「ダイバーシティ & インクルージョン」の思想はもはやすべての人が負うべき資質であるとのNetflixのメッセージを感じる。
「有料会員数が2億人を超え、多大な影響力を持つネットフリックスがはじめた取り組みは、世界が一つとなり、喫緊の社会的課題の解決に向かい、真に持続可能な社会をつくっていく上で不可欠な役割を果たそうとするものだ」とサステナブル・ブランドジャパンはいう。
サステナビリティの活動に取り組んでいる学生たちは、就職活動の面接時に自分の活動について「うまく話せていない」ということがあるとサステナブル・ブランドジャパンは指摘する。
理由は、SDGsなどについて企業の担当者の理解が不十分で企業側と「話がうまくかみ合っていない」と感じるからだ。
自分なりの志や思いをもって時間をかけて活動しているにも関わらず、就活で社会的な活動をアピールできないことは非常に残念であり、企業としても優秀な人材を見逃してしまうというリスクがある。 (出所:サステナブル・ブランドジャパン)
「流行りのSDGs」、「あたり前のSDGs」、そんな言葉は避けた方がいいと気づかされる。
義務というと少しばかり重いが、社会的責務では少しばかりきれいごと過ぎるような気がする。地球に暮らし、そこで仕事する以上、SDGsが絶対的な条件になっているのだろう。それは避け得ることのできない責任ということなのかもしれない。