H&Mの綿花調達の問題がベトナムに波及しているという。中国で起きた不買運動がベトナムに飛び火した。しかし、理由は中国と異なるようだ。
H&Mの苦悩 ベトナムへ飛び火
VIET JOによれば、H&Mのサイトの掲載された地図が、南シナ海全域が中国の領土のようにが描かれていたためだという。
アカウント名「リン・ホアン」は、「大ブランドなのに正誤の判別もできない。間違いを訂正しないのなら、どうぞベトナムから出て行って。あなたが主権を尊重できない国では商売しないでください」とコメント。
アカウント名「チャン・ポー」は、「利益が多く得られるから中国人が必要というのなら、ベトナム人は誰もH&Mブランドの製品をもう使いません」と宣言した。 (出所:VIET JO)
H&Mが政治問題に巻き込まれ、対応に苦慮しているようだ。
発端は、上海市政府はがH&Mのウェブサイトの管理者に「問題のある地図」が存在すると報告し、上海市の計画天然資源局はそれを迅速に修正するよう命じた」ことにあるようだ。
米ABCニュースによれば、H&Mのマネージャーは、規制当局との面会のために召喚された後、「できるだけ早くエラーを修正した」とソーシャルメディアアカウントで述べたという。
H&Mが標的となり、政治利用されているようだ。
ABCは、H&Mが選ばれた理由は明らかではないというが、2005年以来北京とスウェーデンの関係が緊張していることもあるのではないかと指摘する。
そのH&Mは3月末日に、「資材調達に関して次のステップに取り組んでいる」との新たな声明を出した。中国のサプライヤーを称賛したが、政府を軟化させる可能性のあるステップの兆候は示さなかったとABCはいう。
狙い撃ち ナイキは対象外か
不買運動の対象になった米ナイキは標的ではなくなったのだろうか。日経ビジネスによれば、限定モデルのスニーカーのネット予約が3月26日に始まると、35万人前後が申し込んだという。
政府が検閲を強化し、事態を鎮めようとする兆しが浮上するにつれ、SNS(交流サイト)上の抗議活動も徐々に沈静化し始めている。
怒りの矛先がH&Mに向いたのは、問題の綿花製品の輸入を禁止していない欧州当局に対する「現在の姿勢を続けるように」との警告かもしれないとABCはいう。
ユニクロのかしこい選択
中国では外国製品に対する不買運動が頻繁に起きるという。このため、ナショナリストの怒りが高まった時、外国企業の経営者は既存のマニュアルに沿って対処すると、エコノミストの記事を訳した日経ビジネスはそう指摘する。
まずは謝罪だ。そして沈黙を守る。恐らく中国文化に敬意を表しつつだ。そして怒りが鎮まるのを待つ。 (出所:日経ビジネス)
ファーストリテイリングの柳井社長が4月8日、2021年上期(2020年9月~2021年2月)の決算説明会に登壇、記者からの質疑に答えたという。
NHKによれば、問題視される綿花調達について問われたのに対して「政治的に中立な立場でやっていきたいので、政治的な質問にはノーコメントだ」と述べたという。
そのうえで柳井会長兼社長は「取引先の工場で強制労働などの問題があれば即座に取り引きを停止している。人権は非常に大事で、やるべきことはすべてやっている」と述べ、取引先の企業に問題はないとの考えを示しました。 (出所:NHK)
模範解答なのかもしれない。
現地法規に従い、コンプライアンス遵守と言えば、角が立つ。それよりは自社の調達方針に従い、やるべきことをやっている程度にとどめた発言であれば誤解は生まないのかもしれない。かしこい対応なのだろう。
人権はSDGsの根幹だが、時として、一企業で対応できることには限界がある。真実の究明からは遠ざかるのかもしれないが、今できる範囲で最大限できることをやっていくしかないのだろう。
無理は禁物、危機管理の基本なのだろう。何かが起こってからでは取り返しがつかない。