ファッション産業にとっては、受難なときが続くということであろうか。大量廃棄が問題視され、コロナで多くのアパレルが売上を落とした。今度は、「新疆綿」が問題視され、それを端にして中国ではH&Mやナイキの不買運動が始まる。
ブルームバーグによれば、地図アプリでH&Mの店舗が表示されなくなったという。
中国では、H&Мの商品が24日夕時点でアリババグループの通販サイト「淘宝(タオバオ)」において購入できなくなった。25日のストックホルム市場でH&M株は一時4.6%安と続落した。
対照的に、中国本土のブランドで「新疆綿」の支持を表明したスポーツウェアブランドの李寧(LI-NING)の株価は26日の取引で一時9%高と続伸した。 (出所:ブルームバーグ)
良品計画の株価も先週末に大きく値を落としたという。H&Mと異なり、タオバオのサイト上では無印良品の「新疆綿」関連製品が購入できる状態にあるという。
ただ、この先、無印良品もユニクロの不買運動の対象になりかねないとブルームバーグは指摘する。
人権問題に懸念を表明し、それに対処すれば、中国での不買運動につながり、株価が下落する。至極当たり前なことなのかもしれないが、不条理のようなものを感じる。
一方、中国や台湾の芸能人たちは「新疆綿」支持の態度を明確にし、中国で非難されるブランドとの契約終了を発表しているそうだ。
結局は様子見に徹するしかないというのが実情なのだろうか。良品計画はブルームバーグの取材に対して、「当社の行動規範に沿って生産した商品を販売している」と書面で回答、その上で「製造委託先工場が強制労働など深刻な人権侵害に加担していると判明し、良品計画が影響力を行使しても是正が期待できない場合には取引関係の解消も選択肢として検討する」としたという。
一方、化繊でもややこしい問題が起きているようだ。
石油業界ロビー団体がThe North Faceを「素晴らしい顧客賞」で表彰、その背景には、The North Faceが、原油・ガス採掘技術会社の社員向けクリスマスプレゼントとして自社ロゴ入りジャケットの製作を拒否したことから始まったとGIZMODOが伝える。
この業界団体は動画を製作、公開しているという。それには石油たっぷりのプラスチックをたくさん仕入れてくれてありがとう! と皮肉が込められているという。
世界の衣服の60%は石油が原料ですが、The North Face製品の場合その割合は90%以上になると推定されます。
たしかに、軽いのに丈夫で伸縮性があり、防水、防寒、しかも安価…などなど、化学繊維だからできることがたくさんあり、アウトドア服はその特性を最大限活用しています。 (出所:GIZMODO)
サスティナビリティにとことんこだわったブランドもあろうけれども、衣服には石油由来の化繊がたっぷり使われているのは事実なのであろう。逆に言えば、それだけ安価で便利なものを発明したということもできるのだろうけれども。
ファッション産業が今あるこうした苦難から向け出るにはやらなければならないことがたくさんあるのだろう。そして、ファッション産業の脱石油を進めるには、石化メーカやプラスチックス素材メーカの力なくして解決がないのかもしれない。
何事も対立よりも、協調すべきということでもある。
サステナブルな洋服になるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。
「参考文書」