Up Cycle Circular’s diary

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【ペットボトルとアルミ缶】無印がペットボトルからアルミ缶へ、追従するメーカはあるのか

 

ペットボトルからアルミ缶へ」。 無印良品が、「ドリンクのパッケージをペットボトルから循環型原料であるアルミ缶へ切り替え、新たに発売」と発表した。

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(写真:良品計画

無印がペットボトル全廃、アルミ缶へ

 無印良品のドリンク全12種をペットボトルからアルミ缶に容器を変更し、今日2021年4月23日(金)から販売を始めるそうだ。

ryohin-keikaku.jp

「環境問題は、『これだけですべて解決する』というものではない」。

ペットボトルだからダメ、というわけではなくて(アルミが)現在選択すべき素材なんだろうということで、切り替えを決定した (出所:Business Insider)

 良品計画の食品部長が記者会見でそう語ったという。Business Insiderによれば、無印良品が苦悩しながら「プラスチック飲料全撤廃」を決定した様子が、そこかしこで伝わる会見だったという。

 今まで500mlであった容量が370mlに減少、価格が100円から90円(税込み)と下がったが、消費者にとってみれば実質的な値上げとなると指摘する。

www.businessinsider.jp

ペットボトルからアルミ缶への転換はあるのか

 無印良品の決断が、他の飲料メーカにも波及していくことにあるのだろうか

 

 

予想を覆した無印のアルミ缶

 国内最大手のアルミ缶メーカ昭和電工がアルミ缶事業を米投資ファンドに売却すると今年初めに発表があった。「アルコール飲料を除いたアルミ缶の需要はペットボトル普及で減少している」ことが判断の理由のひとつであったとSankeiBizが報じていた。

 アルミ缶リサイクル協会によれば、昨年のアルミ缶の需要は、ボトル缶は101%と微増するが、その他は横這いで、輸出入を加味した総需要量はほぼ横ばいの217.7億缶(前年比100%)と予想されていた。

 アルミ缶への転換はまだ先のことかと思っている中で、無印良品の発表は意外だった。いくらアルミが「循環型原料」だといっても、価格は高く、パッケージに使用する原料比率が高まることになったりはしないのだろうか。

[アルミ缶のリサイクルの特長]
・高いリサイクル率(国内)・・・97.9%(うち、水平リサイクル率66.9%)
省エネルギー効果・・・再生アルミはバージン素材からアルミにするのに比較して97%のエネルギー削減 (※データ出典:アルミ缶リサイクル協会2019年度)

(出所:良品計画

 

上昇するアルミ地金 = LME

 アルミ地金価格はここ最近上昇を続けているという。ブルームバーグによれば、4月13日のLME(ロンドン金属取引所)のアルミニウム相場では、約3年ぶり高値に上昇したという。その日の終値は前日比1.4%高の1mt=2293ドルだったという。中国の貿易統計が需要見通しを押し上げたそうだ。

www.bloomberg.co.jp

 水平リサイクル比率が高いことにより、地金の価格上昇の影響をさほど受けないのだろうか。

 一方、ペットボトルの原料になるエチレンは、北東アジアの市場では静かな展開になっているという。エチレンの原料であるナフサとのスプレッド(価格差)が維持され、横ばい状態ということであろうか。ペットボトル原料を安定的に調達できていれば、アルミ缶に転換しようとのモチベーションは起きそうにないのかもしれない。

 

 

米国、アルミ缶需要が上昇 転換加速か

 MIRUによれば、米缶製造研究所(CMI)が、アルミニウム缶の需要が世界的にピークを迎えていると声明を出したという。ペットボトル等からアルミ缶へのシフトが顕著であることが理由のようだ。

環境に配慮したアルミ容器は、かつてないほどの需要が見られている

いくつかのクラフトビール醸造所と清涼飲料大手では、自社製品のアルミ缶の調達が難しいと報告していると付け加えた。 (出所:MIRU)

 米国では、缶の製造工場が3つ新たに建設中で、拡大する需要を満たすために、既存のプラントに新しいラインを追加しているメーカーもあるという。

www.iru-miru.com

 国内では、最大手のアルミ圧延メーカーのUACJが、「海洋プラスチック問題に伴う、アルミ缶材への回帰」を期待し増産投資を行ない、販売量が増加、長期契約更新による数量確保し価格を改定し収益を改善させているという。

 ただこれ以降増産の計画はないようで、2022年までの販売は2020年と同じ数量にとどまるようだ。

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(資料:UACJ「構造改革の実行」

 UACJは、米国アルコア社とノベリス社に次ぎ、アルミ圧延品の生産能力は年間100万トンを超え世界3位。米国でもアルミ缶材を製造しているメーカ。

 

 

まとめ

 アルミ缶のサプライチェーンを調べてみれば、国内ではあまりペットボトルからアルミ缶への転換に関心を示していないように見受けられる。そうした中での無印良品の決断は苦渋の選択だったのかもしれない。缶材をリーズナブル価格で安定的に調達できなければ、長続きはしない。無印はサプライチェーンを構築できたのだろうか。

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(画像:良品計画

 国内製缶メーカ大手の東洋製罐茨城県の石岡工場で4月から増産を始めたようだ。低アルコール飲料の需要増が背景にあるようだが、詳細を明らかにしていないという。

 他社の追従はあるのだろうか。米国の事例からすれば、無印の決断を機に、サプライチェーンに変化が起きてよさそうだが、まだ飲料メーカはペットボトルの水平リサイクルのほうに関心があるのだろうか。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

「参考文書」

www.sankeibiz.jp

www.alumi-can.or.jp