不要となったモノを廃棄すればごみになる。そのごみを処分するのに、燃やしたり、埋立したり、そんなことにお金をかけることはもったいないと感じずにはいられない。もし不要となったモノにまだ利用価値があるならなおさらのことだ。
ごみが資源になれば、その残存価値があがったりするのかもしれない。
それに加えて、ごみとして処分される量が減り、新規に投入する資源量が減れば、誰にとってもありがたいことではなかろうか。そればかりでなく、自然界へのごみの漏出が減り、処分することで発生するCO2も減るなら、なおさらのはずである。
この価値とオポチュニティーを理解できなければ、それを積極的に推進しようとの動機にはならないのだろう。しかし、循環型経済が社会の流れとなれば、それに乗り遅れてしまうと、それはそれで問題になる。
今、その循環型経済サーキュラーエコノミーが、静かに動き始めているようだ。
「ガンプラリサイクルプロジェクト」をバンダイナムコが始動させた。プラモデルの循環スキーム確立をめざしているという。
「ガンプラ」とは、 ㈱BANDAI SPIRITS が生産販売するガンダムシリーズのプラモデルのこと。
バンダイナムコによれば、プラモデルを組み立て終わったあとに残るランナーを回収し、「ケミカルリサイクル」によって新たなプラモデル製品へと生まれ変わらせることを目指しているという。
プロジェクトが実現すると、世界初のケミカルリサイクルによるプラモデルの循環スキームが確立することになるそうだ。
ランナーは、全国の「namco」をはじめとする㈱バンダイナムコアミューズメントの直営アミューズメント施設約 190 店舗に専用の回収ボックスを設置し、4月1日より順次ファンの皆さんからの回収を受け付けます。
集まったランナーは、「ガンプラ」の生産工場「バンダイホビーセンター」(静岡県静岡市)から生産工程で排出されるプラスチックと合わせて、一部をケミカルリサイクルの実現に向けた実証実験用の材料として、残りをマテリアルリサイクルとサーマルリサイクルにより再活用します。 (出所:バンダイナムコホールディングス)
一般的なプラモデルには主にPS(ポリスチレン)が使用されているそうだ。このPSは、無味無臭で食品容器に適し、また、発泡性に優れることから発泡スチロールの原料にもなっている。
バンダイナムコによれば、プラモデルのランナーや廃材を熱分解し、PSの原料であるSM(スチレンモノマー)に戻す最先端の「ケミカルリサイクル」の実証実験を行うという。
実証実験は 2022 年度より開始し、プロジェクトで回収したランナーの一部をケミカルリサイクル実現のための材料として利用し、製品化を目指すという。
このケミカルリサイクルは、PSジャパンが担う。
PS ポリスチレンの用途は広く、PSP発泡ポリスチレンは食品トレーや納豆容器に利用され、HIPS(ハイインパクト)では、固いというPSが持つ特性にゴムを加えることで耐衝撃性を向上させ、様々な家電の外装に利用されている。
また、GPPS汎用ポリスチレンは、透明ということもあるので、今利用が進むいわゆる飛散防止用のアクリル板として利用されていたりするのだろう。
アクリル(PMMA)はGPPSに比べてはるかに高価なものなので。
食品トレーなど多くのPS製品が回収され、ケミカルリサイクルで、PSの原料であるスチレンモノマーに戻り再利用されていけば、ごみが資源に変り、新たに必要になる石油の量も減じていく。
ごみが資源という概念が定着すれば、循環型経済サーキュラーエコノミーの実現に一歩近づく。それは新たな産業革命の始まりでもあるのかもしれない。
ケミカルリサイクルが実用化されていくには、いかにごみという資源を効率よく回収、量を確保していくことが課題なのかもしれない。また、カーボンフットプリントの評価も必要なことであろう。