使い捨て、ワンウェイプラスチックスの削減を目指す環境省は、「プラスチック資源循環戦略」を策定、基本原則を「3R+Renewable」とし、それぞれの削減のためのマイルストーンを設定する。
リデュースについていえば、2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制するという。また、リユース・リサイクルは、2035年までに使用済プラスチックを100%リユース・リサイクル等により、有効利用するとの目標を設定する。
(資料:環境省)
この戦略実現のため、環境省と経済産業省が20日、プラスチック資源循環に関する合同会議を開催した。
使い捨てプラスチックス削減に向けて
NHKによれば、20日に開催された合同会議では、メーカーや販売業者が使用済みの製品の回収やリサイクルに積極的に貢献することが必要だとして、環境省などは、新たな法律を制定することも視野に、今回、取りまとめた施策を実現するための制度設計を急ぐという。
小売業やサービス業に対しては、プラスチック製のストローやスプーンなどを提供する際、客に、必要かどうかの確認を徹底するなどして、過剰に提供することがないよう求めていくことにしています。 (出所:NHK)
この他、プラスチックスを原料にして製品をつくるメーカーなどに対し、製品の軽量化や、植物を原料とするプラスチックなど、代替素材への転換を促すという。
食品トレー ケミカルリサイクルの挑戦はじまる
食品トレーなどプラスチックス製食品包装容器などの製造・販売を行う㈱エフピコが発砲ポリスチレン(PS)製の食品トレーの完全循環型リサイクルの実現を目指し、プラ素材メーカのDIC㈱との協業の検討を始めたという。
エフピコによれば、同社は現在、使用済みの発泡PS食品容器をスーパーマーケット店頭など約9,600拠点で回収し、マテリアルリサイクルによって再利用しているという。白色のトレーは再び食品トレーに再生し、色柄ものはハンガーなど日用雑貨品へリサイクルしているとそうだ。ケミカルリサイクルを利用すれば、これら色柄ものを含めて素材であるPSに再生され、再びトレーとして利用することが可能となるという。
(資料:DIC)
DICによれば、PSは制御された加熱条件下で容易にモノマー還元(ポリスチレンの原料であるスチレンモノマーにもどる)される性質があり、ケミカルリサイクルに適しているという。ケミカルリサイクルで得られるスチレンを用いて生産されるPSは、石油原料から生産されるPSと同等の性能を有し、安全性も遜色がなく、用途を限定せずに幅広く利用できるという。つまり、食品トレー以外のPS用途への利用が可能ということであろうか。
政府が設定する目標がなくても、それぞれの業界内で競い合い、リサイクル率が向上したり、代替物への転換が進むのが理想なのだろうけれども、なかなかそうは進まない。
SDGsが真に定着していれば、必然、そうした方向に進むはずだ。そうした視点からも企業への動機付けが必要なのかもしれない。
セブン&アイがペットボトルリサイクルを強化
セブン&アイが、年間約2.5万トンのリサイクルPET樹脂製造能力を有するPETボトルリサイクル工場を西日本に新設するという。
この工場は、総合商社の三井物産と世界10拠点でPETボトルのリサイクル工場を運営するヴェオリアの日本法人との合弁事業で、2022年の工場稼働を目指しているという。
三井物産によれば、ヴェオリアはPETボトルリサイクル事業を中核事業の一つとする世界的な環境サービス企業大手だという。
(写真:三井物産 リサイクル樹脂)
バーバル条約によって、来年から廃プラスチック輸出入規制が強化されることで、国内に低グレード廃PETボトルの滞留が予想されるが、ヴェオリアの技術を活用することで、こうした問題の解決に役立つのかもしれない。
セブン&アイは、コカ・コーラとコラボし、店頭でペットボトルを回収、ボトルtoボトルのリサイクルを進めている。今回はもう一歩踏み込み、低グレードの廃ペットを扱う。新設されるPETボトルリサイクル工場ができることで、セブンプレミアムなどのオリジナル商品の容器にリサイクルPET素材を使用することができるようになるという。
セブンイレブン 2050年までにCO2排出量を実質ゼロへ
これに加え、セブン&アイ・ホールディングスは、セブンイレブンなど日米約3万店で二酸化炭素排出量を2050年までに実質ゼロにするという。
共同通信によれば、セブン&アイはグループで年間220万トンのCO2を排出しているという。これまでは、50年に13年度比で80%以上削減する目標を掲げていたが、新たに設定し直し、米国にも範囲を広げるという。このために、21年度から5年間で1000億円を投じるという。
他の地域のセブンイレブンの店舗は対象とならないのだろうか。
東南アジアの国々からは多くのプラスチックスが海洋に流出しているとも聞く。ペットボトルリサイクルも国内ばかりでなく、積極的に東南アジアで展開すべきではないであろうか。環境省も、「途上国における実効性のある対策支援」を指標の一つに挙げているのだから。こうした活動を起点として、それがすでに流出し、存在する海洋プラの回収にもつながっていく、それが理想なのかもしれない。
生活に身近なところで変化が起きれば、今までの常識も少しずつ変化していくのかもしれない。ゴミというと、どことなく汚いものとイメージが付きまとい、不要になると早めに処分したいような気が起きる。しかし、「ごみ」も別の使い道が見つかれば、それはゴミではなく資源になる。そんなことが常識になれば、ごみとして処分される量も減ることになるのだろう。最終処分されるはずのごみが有効活用されれば、それだけインプットする資源の量も減ずる。そしたことが二酸化炭素の排出の削減にも役立つのかもしれない。
変化は急激に起きないかもしれないが、それでも着実に動き始めているようにも見える。追従者が増えれば、変化のスピードも加速される。出遅れないよう早めに変化の波に乗った方がいいのかもしれない。