「紙コップから野菜へ」、三菱ケミカルが、生分解性プラスチック「BioPBS™」を使用した紙コップを起点とするコンポストによる循環型システム実現に向けた実証試験を行うと発表しました。実際に、野菜を栽培し、販売する計画のようです。
「BioPBS™」、三菱ケミカルによれば、自然界の土中の微生物の力で水と二酸化炭素に自然に分解される生分解性プラスチックだといいます。PBSとは、ポリブチレンサクシネートのこと、植物由来のコハク酸と1,4ブタンジオールからバイオPBSは生産されるといいます。
この実証実験には多くの企業が参加し、それぞれがそれぞれの強みを活かしているようです。
<<参加企業>> 株式会社ギラヴァンツ北九州、株式会社サンマーク、福岡県立行橋高等学校、行橋市役所、サッポロビール株式会社、NTT ビジネスソリューションズ株式会社、株式会社ウエルクリエイト、日本マタイ株式会社、株式会社東和プロセス、東洋アルミエコープロダクツ株式会社、株式会社日本 HP、一般財団法人グリーンスポーツアライアンス、株式会社電通グループ、株式会社電通
三菱ケミカルが販売する「BioPBS™」を用い、レンゴーグループの日本マタイが、紙ラミネート品を作り、その素材を利用して、東洋アルミエコープロダクツ(中国子会社の蘇州東洋鋁愛科日用品製造有限公司)が紙コップ6,500個に加工し、さらに、日本HPのHPエレクトロインキで印刷することによって紙コップが完成するといいます。
HPによれば、今回使用された「HP Indigoエレクトロインキ」とMichelmanのプライマーは、欧州の堆肥化試験規格EN 13432に準拠したコンポスト化ラベルおよび軟包装用印刷インキが使用され、TÜV Austria社によって認定されたものといいます。
大規模イベント会場などにおいて大量に発生する食品残渣は、微生物による生分解ができないコップや包装容器が混ざった状態で回収されると、堆肥などへリサイクルして活用することができない。
本共同実証実験では、ギラヴァンツ北九州が開催するサッカーイベント「ギラヴァンツサマーフェスティバル2021」において、三菱ケミカルが開発した生分解性樹脂BioPBS™を用いた紙コップによりコールド飲料を提供します。
そして、イベント会場において廃棄された紙コップを他の食品残渣とともにNTTビジネスソリューションズとウエルクリエイトが提供する「地域食品資源循環ソリューション」により堆肥へリサイクルします。さらに、リサイクルされた堆肥の一部を地元の高校で野菜栽培に活用し、収穫された野菜をスタジアムで販売する循環型システムの実現をめざします。 (出所:NTTビジネスソリューションズ)
紙コップひとつを堆肥化処理できるようにするために、これだけの企業が協力し、バリューチェーンを構築することで初めて利用することができるようになります。また、その途中には物流があってサプライチェーンをつなぐことで実現されています。
この生分解性プラスチック「BioPBS™」は、米スターバックスやマクドナルド他にて設立された「NextGen Consortium」で表彰されていましたが、なかなか実用化に至らなかったのですが、こうした長大なバリューチェーンの構築が足かせになっていたのでしょうか。
今回の実証実験が一つの例になり、イベント会場はもちろんのこと、紙コップなどを提供するコーヒーチェーンや飲食店でも活用され、コンポスト化、堆肥化が進めばいいのかもしれません。そうしてはじめて生分解性プラスチックスの利用価値が高まるのでしょう。
三菱ケミカルは、この他にも「ケミカルリサイクル」の動きを加速させているようです。国内最大規模となる年間2万トンの処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設し、2023年度に廃プラスチックスの油化を開始することを目指しているといいます。
廃プラスチックスを超臨界水技術を導入した新設備で化学的に液化し、油化処理するといいます。製造されたリサイクル生成油は、石油精製装置とナフサクラッカーで原料として使用され、石油製品や各種プラスチックスへと再製品化されるそうです。
収集される廃プラスチックスは、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)をはじめ、ポリスチレン(PS)、PET 樹脂等の様々な種類になるといいます。
生分解性プラによる堆肥化、ケミカルリサイクル、ようやく循環経済 サーキュラーエコノミーの入り口が見えはじめてきたということでしょうか。