Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

進む円安、これを機に脱石油は進まないのだろうか

 

 また円安が進み始めたようです。136円のラインを超えました。輸入物価の上昇の悪影響が心配になるだけです。政府・日銀は相変わらずです。国債を刷っての物価対策がいいことなのでしょうか。選挙戦に入り、急激な政策変更もなさそうです。

 政策が変わらないのであれば、円安のメリットを活かす道を探さなければならないのでしょうか。改めて「脱化石燃料」を意識します。また、国内回帰もキーワードになるのでしょうか。

  最大限に再生可能エネルギーを活用し、乗用車やトラックのEV化を速やかに進め、脱プラに徹するべきということでしょうか。

 

 

進む食材の国産化

 一方で、小売りや外食、食品メーカーで、食材調達や加工を国内に切り替える動きが相次いでいるそうです。

 日本経済新聞によると、シャトレーゼは菓子に使うバターなどで国産品への切り替えを進め、セブン―イレブン・ジャパンも弁当などの鶏肉の一部をタイ産から国産に替えたそうです。

食材、国産へ切り替え相次ぐ セブンイレブンは鶏肉: 日本経済新聞

 為替の円安で輸入品の調達コストが高騰していることに加え、燃料高の影響を受けている物流費を考慮すると大きな差にはならないとの声もあるといいます。

 実際、シャトレーゼの場合、国産への切り替えで年1億~2億円ほどの調達コストの改善につながる見通しといいます。価格は据え置き、原料を見直すことで製造コストを抑えるそうです。

遅れる石油代替

 石油から精製される燃料やプラスチックスや繊維も厳しいのでしょうか。代替物がないわけではありませんが、すぐにそれに切り替えるのが難しそうです。

 航空ジェット燃料の代替となるSAF「持続可能な航空燃料」はいまだ供給能力が整わず、トラック輸送の軽油代替、バイオディーゼル燃料もしかりです。乗用車のEV化も進まず、船舶においても同じ状況ではないでしょうか。

 

 

厳しさ増すアパレル、プラ包装材

 ユニクロも値上げを発表しました。素材となる石油由来の合成繊維が軒並みに値上がりしていることが理由のようです。アパレル業界にとっても厳しい状況なのでしょう。

 原油が高騰すれば、繊維やプラスチックスの原料価格も高騰します。これに加えて、流行りになったリサイクル繊維の価格も上昇しているそうです。

 繊維ばかりでなく、同じ工程を踏んで製造される多くの商品の包装に使われるプラスチックスも同様です。

再生プラスチックス

 しかし、リサイクル原料の供給が改善すれば、状況は変わっていくのでしょうか。850万tも排出される日本国内の廃プラを原料に有効に使えるようになっていけばいいのかもしれません。

新法で増える需要のない再プラ、消費者の巻き込みがリサイクルの鍵に | 日経クロステック(xTECH)

 ただ日経XTECHは「一体誰が、何に使うのか」と指摘します。いまだリサイクル、再生プラスチックスに対し、品質が悪い、コストが高いというイメージがあるのでしょうか。記事は、ケミカルリサイクルに否定的のようです。

プラスチックの原料(モノマー)として使えるほどきれいな化学原料を得るには、廃プラを単一の材質ごとに分別する手間がかかる。その上、プラスチックの分解に必要なエネルギーも多くコストも高いため、現状、ケミカルリサイクルの活用は限定的だ。(出所:日経XTECH)

 しかし、現実には、日本製鉄の製造工程では、自治体で回収された廃プラ約20万トンがコークス炉で熱分解処理されて「再生油」に生まれ変わっています。

 この再生油から、軽質油と重油がとれ、軽質油からナフサを経て、各種プラスチックス原料が作られています。ケミカルリサイクルは、どの状態まで戻すかによって、その性質が大きく異なります。

 ただ製鉄では大量の二酸化炭素が排出され、その工程を利用し得られる「再生油」のCO2排出量をどう扱うかは議論の余地があるのでしょう。

 

 

コンビナートで作る再生石油

 ENEOS三菱ケミカル、鹿島臨海工業地帯に拠点を持つ石油と化学の業界の両雄がタッグを組み、ケミカルリサイクルの一種の「廃プラスチックの油化」を進めているといいます。

ENEOS・三菱ケミカル、脱炭素でコンビナート復権へ: 日本経済新聞

 こちらでは、英ムラテクノロジーの超臨界水技術を用い、高温高圧の超臨界水で外部調達した廃プラを分解し、再生油を作るといいます。いわば廃プラを原料にして石油に戻すといっていいのでしょう。

 こうして得られた再生油から石油同様にナフサ(粗製ガソリン)が精製され、それを三菱ケミカルの既存のナフサクラッカーを通すことで、プラスチックスや繊維の原料となる基礎化学品を得ることができます。日本経済新聞によると、2023年度から事業を始め、油化の処理能力は年間2万トンになるといいます。

 遠い異国の地で掘った石油を海上輸送してくるのか、国内で回収した廃プラを原料にして石油コンビナートで再生油を作る、そのどちらがいいのかと言えば、価格やCO2の排出、消費するエネルギーでいえば、まだ輸入に分があるのかもしれません。

 ただ国際情勢が変化した現在においては、こうした「再生油」という選択肢をもっていることに意味があるのではないでしょうか。

 

「参考文書」

東レ、合成繊維を値上げ 5月出荷分から1~2割: 日本経済新聞

真の循環社会確立に向けた化学産業界の取り組み(経済産業省)

ナフサ分解工場|石油化学工業協会