Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

海洋ごみのリサイクルに挑む 「オーシャンクリーンアップ」河川にも広がるプラごみ回収

 

 2019年、The Ocean Cleanup (オーシャンクリーンアップ)が立ち上がり、太平洋で海洋プラスチックスの回収を始めた。この組織を率いるのはBoyan Slat(ボイヤン・スラット)氏。その活動領域が拡がりを見せているようだ。

 

theoceancleanup.com

 

 

 

 

 

  

蛇口を閉める。河川でプラスチックス回収を進める

 彼らが海洋ごみの回収活動をはじめて1年あまり、その活動は河川にも広がる。

「大量のプラスチックスを流出させる最悪の河川に焦点を当てれば、水道の蛇口を閉じて、プラスチックスが海に到達するのを防ぎ、最も速くて費用効果の高い方法であると信じている」とスラット氏はCNNのインタビューで答える。

 

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(写真:The Ocean Cleanup

 

 オーシャンクリーンアップは、「インターセプター」と呼ばれるフローティングごみ収集作業船を開発した。この太陽光発電の自律システムは、川の流れを利用してゴミをコンベヤーベルトに導き、ゴミを収集する。

 

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(写真:The Ocean Cleanup

 

 最初のインターセプターは、インドネシアジャカルタで稼働し、チェンカレン排水路と呼ばれる水路からプラスチックスを回収した。2番目のインターセプターは、マレーシアのクアラルンプール クラン川を流れるゴミを収集しているという。4番目のインターセプターはドミニカ共和国で稼働する。

 

 

 

 

海洋ごみを止める。世界各地の汚染された河川へ

「川のプラスチックスを止めることで、地球規模の大きなプラスチックス汚染問題に取り組むだけでなく、これらの問題のある川の近くに住む人々の生活をより良くするのに本当に役立つことを望んでいる」とスラット氏は話す。

 オーシャンクリーンアップの目標は、5年以内に世界の最も汚染された1000の河川で取り組みを始めることだという。インターセプターは、間もなく米国ロサンゼルス、ベトナム、タイ、ジャマイカにも向かうとスラット氏は語る。

 

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(写真:The Ocean Cleanup

 

海洋ごみをリサイクル 再生プラスチックスレジンから最初の製品へ

 オーシャンクリーンアップは、太平洋で回収した海洋ごみを原料にし製品を作るという。彼らは、それを「Full Circle」と呼び、「Trash into Treasure(ガラクタから宝へ)」という。その製品は10月24日にリリースとなるようだ。

 

 

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(写真:The Ocean Cleanup

 

 オーシャンクリーンアップの活動を見ると、不可能なことは何もないと感じる。

 短期間に、世界のあちらこちらの河川でクリーンアップ活動が始まっている。そして、回収された海洋ごみは彼らの手でリサイクルされ、何か新しい製品に変わっていく。

 ただ、懸念もある。回収したプラごみすべてを処理することはできるのであろうか。もっと大がかりな処理も必要ではなかろうか。どんなことがあろうとも、回収したごみが埋立地に行くことだけは避けなければならない。また再び流出の恐れもある。

 

 

 

 プラント建設会社もケミカルリサイクルに動き出す

 プラスチックスメーカでもある宇部興産が、ケミカルリサイクルについて、日揮とEUP(Ebara Ube Process)ライセンスの実施許諾権契約を締結したと発表した。(このEUPは荏原環境プラントが共同ライセンサーになっている。)

 日揮ホールディングスによれば、EUPに関する技術供与を受け、この技術を使ったケミカルリサイクルで先行する昭和電工から量産化技術の供与と運転支援も受けながら、廃プラスチックスのリサイクルを推進していくという。このリサイクル推進は以下3つの施策で進めるそうだ。

 

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  1. 廃プラスチックのガス化設備、ならびにガス化設備から製造される合成ガスを用いた化学品製造設備の提案
  2. 廃プラスチックを原料とする水素製造装置の提案
  3. 廃プラスチックリサイクルを実現するためのバリューチェーン構築

 (出所:日揮ホールディングス)

 

www.jgc.com

 

EUPプロセスの優位性と実績

すでにこのEUPの技術を活用し、昭和電工がケミカルリサイクルを行ない、廃プラスチックの年間処理量が約7万トンあるという。また、この昭和電工のガス化ケミカルリサイクル設備は世界で唯一長期商業運転を継続しているそうだ。

 サーキュラーエコノミーがさらに加速していくことが予測され中、廃プラスチック問題が世界的な社会課題となっていると言われ、このガス化ケミカルリサイクルに注目があつまるという。

 他のリサイクルでは困難であるといわれる異種素材や不純物を含むプラスチックスを分子レベルに分解しアンモニアメタノール、オレフィン等、様々な化学品に再生し、プラスチックやゴム、化学繊維の原料として活用できることがこの技術の特徴だ。

 例えば、ペットボトルであれば、キャップやラベルなどを分けずにリサイクルが可能となる。

 こうしたケミカルリサイクルの普及で、廃プラスチックリサイクル率の大幅な向上していく可能性がある。 

  

まとめ

 プラント建設会社がケミカルリサイクル設備に動き出したことで、ケミカルリサイクル定着への準備が整いはじめたといってもいいのではなかろうか。

 すでにオーシャンクリーンアップが海洋ごみを無くすことを目指し活動し、多くのプラごみが収集されている。こうした集められた異種のプラごみも、ケミカルリサイクルで一括処理できればいいのかもしれない。

 オーシャンクリーンアップとの連携はないのであろうか。うまいビジネススキームを作ることはできないのであろうか。彼らが活動する地域にケミカルリサイクルプラントがあっても良さそうな気がする。 

 

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 (写真:The Ocean Cleanup

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 

「参考文書」

edition.cnn.com

 

chemical-news.com