新米の季節になりましたが、期待されていたように価格が下がらないようです。このまま今年もコメ価格は下がらないのでしょうか。
【気になるデータ】お米の値段 スーパーでのコメの平均価格 2025年:時事ドットコム
「2025年産米の品質は改善傾向」という朗報もありますが、価格の軟化にはつながっていないようで、歴史的な高値圏で「高止まり」しています 短期間での大幅な価格下落は期待しづらい状況のようです。
農林水産省は2025年産米について、増産努力の結果、収穫量が前年比で大幅に増加し、需給が緩和されるとの見通しを発表しました。
今年のコメ収穫予想「近年で最大の水準」も…価格下がらず? 背景にJA・集荷業者間の激しい“競争”か | TBS CROSS DIG with Bloomberg
コメ不足への懸念を払拭し、価格安定につなげていきたい考えのようですが、再びコメ不足に陥るのではないかという流通関係者の懸念は解消されておらず、集荷競争が続いているといいます。
なぜ、私たちの食卓から「安いコメ」が消えたのか
高止まりの背景には、単一ではなく複数の要因が複合的に絡み合ってるといわれています。「減反政策による慢性化したコメ不足」と「需要の回復・増加」、「生産コストの急騰」、「JAの概算金高騰」、「流通の非効率性」などがあげられています。
歴史的な円安水準にあり、肥料、燃料、資材費などが上昇しているそうです。人件費も上昇、価格高騰は農家のコスト増を反映した側面もあるといわれています。JAが農家の離反を防ぐため、また、卸売業者や小売店との集荷競争に勝つために、概算金(買取価格)を大幅に引き上げたことが、小売価格を押し上げる主要因の一つとなっているともいわれています。

東京新聞らのアンケートによれば、スーパーなど店頭でのコメ5キロの「適正価格」について、消費者の側からは2000円台とする回答が5割を占めていました。一方で、コメ生産者は3000円台が「適正」とする回答が4割となっていました。両者の認識に一定の開きがあったものの、いずれも直近の店頭価格4000円超を大幅に下回っています。
コメの「適正価格」って? 消費者と生産者の声を見てみると… 19紙合同アンケート<ニュースあなた発>:東京新聞デジタル
この開きを解消するため、価格の適正化と農家収入の安定を実現するため、コメ業界の構造そのものの変革が求められていそうです。
業界変革の動きと必要な再編
コメ業界全体の生産性が向上し、価格が適正化されて、農家の収入が安定に向かうのではないでしょうか。そのためには、農家の生産性向上ばかりでなく、サプライチェーン、流通を再編し、流通経路を短縮、多重構造を解消させる必要性もありそうです。サプライチェーンが簡素化され、ムダが排除されれば、中間マージンも自ずとミニマイズ最小化されていきます。そうなれば業界の生産性向上に大きく貢献します。
すでにスーパーや飲食チェーンが直接契約を始めたり、農業法人を設立し生産に参入するケースも出てきています。安定供給の確保、コスト抑制、トレーサビリティによる品質管理が目的とされています。JAや卸・精米業などの旧来の流通もこれを傍観するのではなく、果敢に整理、統合、物流を含めて再編していくことが求められます。
また、農家支援においては、スマート農業技術を積極的に推進、生産性向上を進めなければなりません。すでの多くのデジタルサービスも開発されているようです。いかに導入し、普及させていくか、それが問われています。農家の収益改善に資するソーラーシェアリングやカーボンクレジットなどの推進もあってもよさそうです。
政府支援も欠かせないのでしょう。農家は増産には懸念を持ち、円安によって生ずる肥料・燃料などの生産コストの高騰に耐えているのですから。
しかし、現状は現場での成果がまだ見えず、スピード感に欠けているようです。これらの改善がスピードアップし、構造的なコストダウンと効率化が進んで、コメ価格が適正化され、農家の収入も安定するのではないでしょうか。
引き続きスマート農業の現状、サプライチェーン再編の動きをウォッチし、コメ問題の行方を追っていきたいと思います。
「参考文書」
1等米比率、66.5% 8月末、前年上回る―農水省:時事ドットコム
「米騒動」回避へ1割増産 農水省、需要拡大踏まえ皮算用見直し - 日本経済新聞
コメ増産へ道筋を 農家支援制度を整備、海外市場の開拓欠かせず - 日本経済新聞
「令和のコメ騒動」原因はどこに? 需給見通しに誤算、尾を引く - 日本経済新聞


