Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

サブスクなのになぜ、トヨタ初の量産型EV「bZ4X」は苦戦か

 

 この先のサスティナブルな社会を思えば、使い終わったものはそのまま廃棄するのではなく、リユースしたり、アップサイクルする。以前のようにモノを所有するのでなくなっていく。その代わりに、シェアしたり、サブスク利用したりする、そんな方向へ徐々に変化していく。今そうした過渡期にあるのでしょうか。

 こうした基盤が整い、社会が変わっていけば、持続可能な社会に近づいていきそうです。

 トヨタが初の量産型EV 電気自動車「bZ4X」の販売を始め、個人向けにはサブスクのみで販売したことも、そうしたことの現れなのかもしれません。

トヨタのサブスクはリースの一種で毎月定額を支払う。顧客は車両を所有できないが、所有に伴うリスクを負わずに済む。

トヨタにとっても利点がある。契約終了後にEVを回収できれば、希少金属にコストがかさむ電池の再利用もできる。納車後に最新機能を更新するサービスなども提供するため、顧客との接点を維持する意味でも売り切らないほうが都合が良い。(出所:ロイター)

 

 

 ただまだ期待したほどの反応ではなかったといいます。

トヨタ「bZ4X」とスバル「ソルテラ」、気になる売れ行きは? | 日経クロステック(xTECH)

当初は爆発的に売れて5月12日の予約開始直後には3000台の枠が埋まるとの予測もあったが、「それほど甘くはなかった。ユーザーと話をする中で、EVに対する不安がまだまだあると感じた」(同担当者)という。(出所:日経XTECH)

 また、サブスク契約したユーザーの多くは中高年で、圧倒的に50~70代の方が多いといいます。少々意外だったりしますが、理由はその価格だったりするのでしょうか。

 個人で契約する場合、申込金77万円(税込)が必要となり、最初の4年間に国の補助金を適用した月額利用料は8万8220円といいます。その後利用料は毎年段階的に下がっていくといいます。利用料には、自動車保険自動車税、車検代、メンテナンス代、電池性能保証などの諸費用が含まれているといいますが、高いと印象があるのでしょうか。

なぜトヨタは新型EVをサブスクで売るのか 鍵を握るZ世代の開拓:日経クロストレンド

 トヨタのサブスクサービス「KINTO」のこれまでの累計申込件数は22年1月末時点で、約3万2000件に達したそうです。この内訳は、20代、30代が4割超占めているといいます。EV「bZ4X」が若年層にも響き、起爆剤となって欲しかったということが本音だったのでしょうか。

 

 

「KINTO」は事前に「わりかんKINTO」というサービスも始めていたといいます。日経Xトレンドによれば、KINTO契約者とその家族や仲間同士で月額利用料の割り勘をサポートするアプリで、共同使用する人を10人まで招待できるそうです。仲間内限定の個人間カーシェアといいます。

アプリでは、集まった人同士でKINTO契約者が負担している利用料を均等分割する、あるいは利用時間や走行距離に応じて負担額を配分するなどの設定が可能。クルマの予約や、走行データ、運転スコアといった利用実績の管理、チャットもアプリでできる。(出所:日経Xトレンド)

 緻密に計画されても、期待通りの成果を得るのはやはり難しいということでしょうか。「サスティナブル」が遅々と進まない理由がこうしたところにあるのでしょうか。

 

 

 カワサキモータースが、電動3輪ビークル「noslisu(ノスリス)」シリーズの新モデル「noslisu電動アシスト自転車カーゴ仕様」を発表しました。2023年春に新発売するそうです。

【お知らせ】 「noslisu 電動アシスト自転車カーゴ仕様」について | noslisu | ノスリス

 今年7月からまずは、日本郵便株式会社に貸与し、郵便業務での活用の可能性について実証実験を行うそうです。ただ、業務用途に限定せずに一般向けにも販売を計画しているといいます。

(写真:川崎重工業

  目新しいモノが登場すると、こんな使い方ができるのかと、ワクワクしたりします。こうした新しいモノで、製造や販売も含めて「サスティナブル」が体現できるといいのかもしれません。

 これからは、単なるコト消費にとどまるのではなく、かつてセブン&アイ・ホールディングス鈴木敏文氏がいっていたように「モノをとおして、お客様に満足していただけるようなコトを提供する」サービスが求められているのではないでしょうか。

「bZ4X」、脱炭素への貢献、EV電気自動車の理念は理解できても、使う喜びの発見にはまだ至っていないということかもしれまん。

 

「参考文書」

焦点:トヨタがサブスクで勝負、EV巻き返しなるか 試される戦略 | ロイター

電動3輪ビークル「noslisu(ノスリス)」シリーズで「noslisu 電動アシスト自転車カーゴ仕様」を新発売(カワサキモータース) | プレスリリース | 川崎重工業株式会社

新型BEV、bZ4XのKINTO月額利用料を決定 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

いまの当たり前は、昔の当たり前ではない…セブン-イレブンの1号店に「おにぎり」がなかったワケ 家で作るもので、買って食べるものではなかった | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

求められている新規事業にDX、どうすれば実現できるのだろうか

 

 24年ぶりの円安。「日本売り」と言われ、ショックです。しかし、賃上げもできない、景気も回復できないのであれば、そう言われてもやむなしなのかもしれません。

 日銀の金融政策や国の施策の影響を受けるのでしょうが、企業がその気になって実行しなければ、改善することはないのですから、最後はやはり企業頼みということなのでしょうか。

 それにしても、その施策がデジタル化頼りであれば、心もとないような気がします。それだけは力不足と感じるからでしょうか、その後にトランスフォーメーションをくっつけ、「変革」が伴えば、それなりに聞こえます。ただそれで、ほんとうに賃金はあがり、景気は回復するのでしょうか。

 

 

「新規事業が求められている」と、日経XTECHはいいます。

 国内の既存市場における事業展開のみでは成長戦略を描くことできず、日本企業が生き抜くためには、グローバル展開による外需の取り込みか、新規事業に挑戦して新たな市場や顧客を創出するかの、2つの道しかないといいます。

なぜいま新規事業が必要なのか、日本企業に残されたチャンスをつかめ | 日経クロステック(xTECH)

特にコロナショックの影響で海外から観光客が流入するインバウンド需要、また越境を伴う商取引自体が停滞したり、リアル・対面での価値提供や顧客対応を前提としていた巨大産業や伝統産業が破滅的な打撃を受ける中で、大きな変革やDX(デジタル・トランスフォーメーション)を迫られています。(出所:日経XTECH)

 こうした現状からすれば、革新をもたらす新規事業やイノベーション創出の重要性がますます高まっているといいます。そして、課題先進国の日本には、解決すべき課題がこのほかにも多々あるといいます。

 新規事業に取り組む動機としては、それで十分なのかもしれません。しかし、課題を理解できても、それを解決に導く手段が見つけなければ、それを事業化できません。

 R&D 研究開発や知見の蓄積があって、その解決法を得ることができるのではないでしょうか。

 

 

 影響力が大きな学術論文の国別ランキングで、日本は過去最低の10位に後退したそうです。「このような状況は深刻に受け止めるべきだ」と国は危機感を示しているといいます。

論文数、日本は過去最低10位に 「状況は深刻」科学技術白書 | 毎日新聞

「科学技術立国の実現」、政府はそれを成長戦略の柱の一つとして、10兆円規模の大学ファンドを設け推進していくそうです。それは、産業の基幹となるはずの、研究が衰退していたということでしょうか。そうであれば、今日の苦境はあって当然のことなのかもしれません。

 大学ばかりでなく、企業での研究開発がおろそかになっていたなら、ついつい小手先の対応に頼ることになるのかもしれません。それが今日までの日本だったのではないでしょうか。

 戦略は、実現可能なところまで検討されるものといいます。戦略の対象が研究となれば、成果が出るまでには時間がかかるのでしょう。成長戦略として適当なのでしょうか。戦略を検討するもと、材料として、「研究」があるべきのようにも感じます。

 

 

 ホンダ発のスタートアップが、1人乗りの電動三輪マイクロモビリティ「Striemo(ストリーモ)」を発表しました。

ホンダ系、立ち乗り三輪参入 法改正で車大手が商機狙う: 日本経済新聞

 日本経済新聞によると、価格は26万円で、一般消費者向けに13日から300台限定でオンライン受注を始めたといいます。国内向けは22年内には納車され、23年には欧州市場への投入も目指すといいます。

(写真:ホンダ)

 今さらとの感が否めませんが、事業化しようとの意志がなければ、新規事業はもちろんのこと、それが市場として育つことはありません。

 ボストン・コンサルティング・グループによれば、これまで600億円程度だった電動キックボードの市場がこの先、サブスクリプションなどで年率30%以上成長するとみているといいます。

 こうした市場予測も、誰かが諦めずに推進、それを普及させることで、実現していくものです。

 

 

 日本経済新聞によると、これまでホンダは社内で生まれたアイデアについて、自社の事業との親和性を見極めた上で、事業化を検討してきたといいます。こうしたことが新規事業が生まれにくかった理由なのかもしれません。

 ホンダはそれに気づいたのでしょうか。全従業員を対象に新規事業の提案を募り、審査を通過した案件については、新会社の立ち上げも含めて支援する制度を始めたといいます。

 事業化とは、アイデアを具現化し、それを普及させていくことのはずです。そのために、基礎研究があり、必要な要素技術を開発し、テクノロジーやサービス開発があったりするのではないでしょうか。どんなことであれ、たゆまぬ研究と開発が求められているのでしょう。

 

「参考文書」

Honda | 新事業創出プログラム「IGNITION」発のベンチャー企業「ストリーモ」設立

日立、デジタルM&Aに5000億円 アジア進出など投資枠: 日本経済新聞

 

円安、それでもサイゼリヤは値上げしないのか

 

「世の中が困っているいま、値上げはするべきではない。安くて美味しいものを提供できれば、きっと多くの人が幸せになるから」、それが、サイゼリヤのシンプルな経営哲学だそうです。

 NEWSPICKSによると、サイゼリヤの創業者 正垣泰彦会長が、値上げラッシュが続く中、「絶対に値上げをしない」と断言したそうです。

「安くて美味しいものを食べると人間ってどうなるか、知ってる」?

人間は満たされるとそうやって自己反省し、これまでの行いを口に出して謝ろうとするもの。そう考えると、サイゼリヤが安くて美味しい料理を出す理由は、苦しみから解放して幸せになってもらうため、とも言える。それを、世界中の人たちに届けたい。(出所:NEWSPICKS

 

 

「値上げ」、円安が定着し、輸入物価が高止まりする中、コスト上昇分を価格に転嫁することが当たり前になりつつあります。 

 コスト上昇分を値上げし、コスト構造を適正化して、賃上げにつなげていく。そんな道筋が語られますが、実現にはまだ至っていないのでしょうか。それなら一層のこと、サイゼリヤのように値上げはせずに、賃上げにチャレンジする企業があってもいいのではないでしょうか。

 従業員とともにとことん生産性を追求し、その改善効果を賃上げに回すことを徹底すればいいだけのことではないでしょうか。改善もピンキリで、瑣末なことから手間はかかるが大きな効果が期待できるものまで様々です。企業が成長できるのも従業員のこうした日々の小さな改善の努力があって叶うものです。

 それを正当に評価して報酬とし還元する、あって当たり前のことが為されればいいだけのことなのかもしれません。

 インバウンドが再開しました。こうしたことが何かのきっかけにならないでしょうか。コロナ渦前のインバウンド特需では、訪日外国人のためにヴィーガン店が多数開業したとの話も聞きます。きっかけをつかむことができれば、改善のアイディアに気づくのかもしれません。困らなければ知恵は生まれません。

 

 

 レストランのメニューにCO2 二酸化炭素の排出量表示を加えると、来客の注文が環境負荷の少ないメニューに変化することが明らかになったといいます。

飲食店メニューでの「CO2排出量」表示は温暖化防止になる?気になる研究結果は | ヘルスデーニュース | ダイヤモンド・オンライン

価格とともにCO2排出量がラベル付けされたメニューが提示された場合、人々の選択するメニューのCO2排出量が310g減少することが明らかになった。また、1皿当たりのCO2排出量が平均200gほど少ないメニューが選択される傾向が認められた。(出所:ダイヤモンドオンライン)

 何か良いことを実行に移せば、何らかの効果が現れるものです(時にマイナス効果もありえますが)。それを様々な見地から分析すれば、改善の道筋が明らかになるものです。何かをよくしていこうと思えば、現状を正しく分析して理解することから始まります。当て推量ばかりでは、効果は得られず混乱・失敗のもとになってしまいます。

 日銀の黒田総裁が「急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスであり、望ましくない」と述べたといいます。これまでの発言内容から変化があったようです。

 ようやく現状を正しく把握できたのでしょうか。世の中がよくならないのがわかるような気がします。

 

「参考文書」

【サイゼリヤ創業者】それでも我々は「値上げ」をしない

サイゼリヤ&ガスト、激安ランチバトルはどっちに軍配? 価格値上げで勢力図に変化か | ENCOUNT - (5)

円相場 1ドル=135円台前半に値下がり 約24年ぶりの円安水準 | NHK | 株価・為替

 

進まない社会課題の解決に、変わる就職意識

 

 東大生の就職に対する意識が変化しているといいます。世の中が変わり、大企業の位置づけや、東大生にとっての官庁の魅力が変わっているそうです。

 かつては法学部の卒業生は官庁に入り、工学部は優れたエンジニアを輩出してきましたが、社会環境が変わり、新しい産業を興すことが求められるようになったため、学生が意識してそっちに向いているようだといいます。

東大・各務茂夫教授 「優秀な東大生は意識してスタートアップに行く」|東大生と起業|朝日新聞EduA

 身近な東大生がスタートアップの世界にチャレンジするようになり、学生たちの周りにそうした事例が増えたことで、スタートアップとかベンチャーに対し、学生はそれも当たり前のことになってきているといいます。

 

 

機能不全に陥る国際機関

 WTO 世界貿易機関の閣僚会合が始まったといいます。ただWTOが機能不全に陥っているといわれているようで、解決すべき問題が次々と山積みになっていくだけなのかもしれません。

「機能不全」のWTO、問われる存在意義 閣僚会合、12日に開幕 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル

冷戦終結後の1995年に発足したWTOは貿易の自由化の促進や紛争解決を担うためにつくられた。ただ、意思決定は加盟国の全会一致が原則。先進国と途上国などの間で意見が激しく対立することが繰り返され、多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は挫折。デジタルや環境分野のルールづくりは遅れている。(出所:朝日新聞

 ウクライナ情勢に、米中対立、分断化されつつある国際社会の今を映し出しているということなのでしょうか。

募る危機感、求められる課題解決

 業務スーパーの創業者の沼田昭二さんがこうした状況に危惧を抱き、新会社「町おこしエネルギー」を立ち上げて日本全国を奔走しているといいます。

業務スーパー創業者が「地熱発電」に挑戦 世界3位の眠れる資源活用「やりとげる」|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト

今足元でロシアとウクライナの問題がありますよね....

こういう地政学的なリスクは常に感じています。日本が将来高齢化、少子化となって、貿易黒字が貿易赤字になっていく、一番大きな赤字は化石燃料の輸入なんですね。これはできるだけ早い時期に止めないといけないんです。(出所:テレ朝NEWS)

 

 

 将来を悲観すべきではないのでしょうが、そのためには課題を希望に変えていかなければならないということなのかもしれません。そうであれば、沼田氏のように社会課題にチャレンジする人をもっと増やしていかなければならないのでしょう。

ビジネスで国際貢献

 一方、国内の課題でなく、国際貢献にチャレンジする人もいます。

 アフリカの未電化地域で、現地の小売店キオスクを介して、太陽光充電式のLEDランタンを、所得の安定しない一般消費者に貸し出すというサービスをスタートアップの「WASSHA」が進めています。

(写真:WASSHA

 WASSHAが2015年に始めた事業は順調に拡大し、提携キオスク数は2022年5月には5,100店舗を突破し、ランタンが1日約10万回レンタルされるようになったといいます。

 東アフリカから始まったサービスを今後西アフリカにも展開していくそうです。こうしたビジネスで国際貢献が拡がり、国際協調に良き影響を及ぼしてくのが理想なのかもしれません。インバウンドも再開しました。目を外に向けてもいいのではないでしょうか。

 ビジネスを通じた社会課題の解決が求められているそうです。国が抱える問題を把握し、その解決も求められているのではないでしょうか。

 

「参考文書」

WASSHA、シリーズCラウンド総額約11億円となる資金調達を完了|WASSHA株式会社のプレスリリース

 

なぜ「人的資本」が重要視されるのか、企業はもっと人に投資するようになるのだろうか

 

「人的資本」というワードに注目が集まるようになっているのでしょうか。脱炭素化やデジタル化、コロナ禍など経営環境の変化が顕在化し、これによって生じた人々の意識の変化が背景にあるようです。

 経済産業省は以下のような事例を示しています。

✓ デジタルスキルの習得が間に合わず、新たなツールに順応できない主に 50代の社員と、若手の社員の間で、コミュニケーションの齟齬と価値観の相違が生じている。

✓ 脱炭素化の進展で、化石燃料を使用する分野に従事する社員が、自分のスキルが陳腐化することに不安を覚えるものの、他のスキルの獲得や、他の部門への異動には踏み出せないでいる。

✓ 長引くリモートワークにより、各部署の目標や、個々人の役割分担について認識を共有しづらくなり、組織全体の管理コストが上がっている。

出所:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~ 人材版伊藤レポート2.0~

 実際にありがちな事例なのでしょうか。しかし、こうしたことが、経営戦略と人材戦略の連動を難しくいているといいます。

 

 

 海外では以前から、「人的資本情報」の開示に向けた機運が高まっていたそうです。また、それが非財務情報の中核に位置するようになり、単なる情報開示ではなく、実際の経営課題としても重みが増しているといいます。

 経済産業省が公表した報告書( 人材版伊藤レポート2.0)では、この人的資本経営を本当の意味で実現するためには、「経営戦略と人材戦略を連動させるための取組」が重要とします。

 公表した報告書は、そのための人的資本経営という変革を、どう具体化し、実践に移していくかに主眼を置いているといいます。また、こうした変革を通じて、日本社会で働く個人の能力が十二分に発揮されるようになることも期待しているそうです。

それはとりもなおさず、今でも社会の一部に根強く残る、画一的な雇用システムから個人が解放され、社会全体として、個人のキャリアがますます多様化することでもある。

出所:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~ 人材版伊藤レポート2.0~

 そうした社会では、リスキルや学び直しの価値が社会全体としても評価され、多様な人材がそれぞれの持ち場で活躍でき、失敗してもまたやり直せる社会へと転換していくと報告書はいいます。

 そして、その結果として、企業の付加価値につながる変革やイノベーションが起こっていくともいいます。

 

 

 企業は経営不振に陥れば、リストラ 構造改革を実行し、事業の取捨選択を行い、人員適正規模に整理します。しかし、改革がそれで終わってしまったなら、経営不振が再び起きかねません。経営不振も突き詰めれば、人を起因として起こるものではないでしょうか。卓越した企業文化や人事システムがあれば、それを避けることはできるのかもしれませんが、それらが錆びつくことで、やがて組織が硬直し、経営不振になっていくのかもしれません。

.....しかし、世界は変化する。いずれ、ルールや指針た慣習が、組織本来の任務との関連性を失っていくのは避けられない......(引用:巨象も踊る ルイス・ガースナー

 企業文化や人事システムが、正しく人によってメンテされていなければならないのでしょう。

 企業文化とは、「卓越した顧客サービス」、「優秀さ」、「チームワーク」、「株主価値」、「社会的責任」、「誠実」といい、そして、経営そのものもと、IBMの元CEO ルイス・ガースナーはいいます。

成功している組織はすべて、その組織の偉大さをもたらす要因を強化する文化を確立している。(引用:巨象も踊る ルイス・ガースナー

「組織はそれを構成する人々が全体とし、どこまでの価値を生み出せるかで決まる」ともいいます。

 

 

 ルイス・ガースナーIBMのCEOを務め、改革を実行したとき、「完全性の追求」「最善の顧客サービス」「個人の尊重」を基本信条にしたそうです。

できるのは企業文化が変わる条件を作ることだけだ。

動機付けを与えることならできる。市場の現実を示し、目標を設定することはできる。しかし、その後は信頼するしかない。結局のところ、経営陣が文化を変えるわけではないのだ。経営陣は社員に、自ら文化を変えるよう招待するだけである。(引用:巨象も踊る ルイス・ガースナー

 IBMの改革では、初期には戦略が練られ、ビジネスモデルが転換され、そして、改革後半には企業文化を変え、その定着に時間が費やされていきます。企業文化なくして持続的な成長は叶わないということなのでしょうか。

 経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」でも、「自社が社会・環境にどのようなインパクトをもたらすべきか、という観点から、企業理念や企業の存在意義を再考する。
また、自社事業の成功につながる社員の行動や姿勢を企業文化として定義し、浸透を図ることで、企業の競争力向上に貢献する」と指摘し、企業文化の重要性を説いています。

経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~ 人材版伊藤レポート2.0~

 DX デジタルトランスフォーメーション、GX グリーントランスフォーメーション、様々なトランスフォーメーション、変革が求められるようになってます。こうした変革を遂行していくにもまた、卓越した企業文化と、報酬・給与体系、目標・モチベーション管理などの優れた人事システムが必要不可欠なのかもしれません。

 結局、変革は人によってなされるものなのですから。

 

「参考文書」

「人材版伊藤レポート2.0」を取りまとめました (METI/経済産業省)

人的資本開示で経営刷新: 日本経済新聞

人を大事にしない企業が丸分かりに? 「人材版伊藤レポート 2.0」が示す成長可能な企業のポイント:編集部コラム - ITmedia エンタープライズ

 

社会課題は解決されてゆくものか、脱炭素ビジネスの社会実装

 

スマートホーム・コミュニティ」、さいたま市が推進する新たな街づくりで、街区全体で脱炭素化と強靭性を備えるといいます。この街では、51の住宅各戸の屋根に太陽光パネルが設置され、発電した電力は街区中央にある蓄電池などが設置されたチャージエリアに集約、各戸でシェアするなど、需給両面で再生可能エネルギーの利用率を最大限に高めるといいます。この事例では、街区で必要とする電力の60%を賄う計画といいます。

 こうしたコミュニティ内で再エネで発電した電気を融通し合う分散型電力システムは、災害時に系統電力から独立し自立運転することが可能で、停電に強く、またエネルギーを地産地消できるモデルといわれます。

 

 

 さいたま市の「スマートホーム・コミュニティ」の再エネ電力システムを支えているのは、新電力「Looop」の「エネプラザ」という分散型エネルギーマネジメントシステムです。

(資料:Looop

 CNET JAPANによれば、この街区における電気料金は基本料金2500円で、1kWhあたり20〜30円のダイナミックプライシングを採用しているそうです。

Looop、浦和美園で始める電気の地産地消--コミュニティ単位で再エネ活用 - CNET Japan

 各家庭にはデバイスを貸与することで、翌日の従量料金単価を前日の19時を目処に知らせ、食洗機や洗濯乾燥機など予約機能がついている電気製品を中心に、電気の使用時間における行動変容を促すといいます。

 また、街区のチャージエリアにはEV 電気自動車2台が設置され、平日は太陽光で発電した電気をためる蓄電池として機能する一方で、週末はシェアリングカーとして利用できるといいます。

 数年前まではこうした分散型システムの普及するとは想像も出来ませんでした。国の政策転換の影響もあってのことかもしれませんが、今まで以上に「社会のために」という意識が高まったきたということなのでしょうか。こうした事例が増えることで、普及に弾みがつき、また、関連する産業にも好影響を及ぼしていくのでしょうか。

 

 

 九州では、たびたび発生したメガソーラーなどにおける出力制御を低減させるため、系統用蓄電池の検討が始まったといいます。

系統用蓄電池を活用した太陽光発電の出力制御量低減に向けた共同事業の検討開始について (NTT アノードエナジー)

 この蓄電池は、 NTT アノードエナジーによって福岡県田川郡に2023 年 2 月に設置される予定といいます。4.2MWh級のリチウムイオン電池に電力変換装置など蓄電池制御システムからなり、いずれも国産メーカーが採用されるといいます。

 太陽光発電の出力制御が日本全国各地に発生するようになっています。折角の発電した自然エネルギーを無駄にしないためにも、早期の蓄電池の設置や他への転用が求められているのでしょう。また、こうしたことで国内の関連産業が活性化、雇用拡大、待遇改善につなげていくべきなのでしょう。

 

 

 シャープが、化合物3接合型の太陽電池モジュールで、世界最高の変換効率32.65%を達成したといいます。

実用サイズの軽量かつフレキシブルな太陽電池モジュールで世界最高の変換効率32.65%を達成|ニュースリリース:シャープ

 試作した太陽電池モジュールは、フィルムで太陽電池セルを挟んだ構造のため、軽量かつフレキシブルな特長を兼ね備えているといいます。高効率化と軽量化が求められるEVなどさまざまな移動体への搭載が期待できるといいます。

(写真:シャープ)

 パリ協定にもとづいた気候変動対策が求められています。脱炭素ビジネスの早期の実用化が求められ、また、その普及も進めていかなければなりません。さかんに指摘される、生産性向上、効率化、賃上げ、デジタル化、サプライチェーンの経済安全保障など様々な社会課題が、こうした新たなビジネスの創出とともに改善されるようにもしていかなければならないのでしょう。

 

「参考文書」

エネプラザが「新エネ大賞」で新エネルギー財団会長賞を受賞|株式会社Looopのプレスリリース

さいたま市/(令和3年3月26日記者発表)スマートホーム・コミュニティ街区(第3期)の整備を開始しました

新電力のループ、再生エネを街区全体で融通 停電に強く:日経ビジネス電子版

 

活況の半導体産業、エンジニア不足で賃上げは進むのか、見直されるべき調達業務

 

 世界的な半導体不足を受けて、国内の半導体産業が活況を取り戻しているようです。産経新聞によれば、半導体エンジニアの獲得競争が一段と激しくなっているといいます。背景には、国内工場の生産能力増強が計画され、人材確保を急いでいるためといいます。

半導体増強 エンジニア争奪過熱続く 各社、即戦力求め 9年で求人10倍超に - 産経ニュース

 記事によれば、令和3年度の求人数は前年度に比べ70%%以上増加しており、こうした状況は今後も続くと予想されているそうです。

 

 

 九州でもエンジニアの争奪戦の始まっているといいます。熊本に、台湾の半導体ファウンドTSMC 台湾積体電路製造が進出し、TSMCが新卒採用で好待遇を提示しているといいます。

TSMCが好待遇で新卒採用、九州で勃発する「人材争奪戦」の行方|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

 2023年4月入社見込みの理系学部卒の給与は28万円、修士卒で同32万円、博士卒で同36万円。九州7県の新規大卒者の平均給与が20万8000円で、地域平均より7万円以上高いといいます。熊本県内だけでも同業の半導体メーカーは多く、三菱電機ルネサスエレクトロニクスも大卒の給与がそれぞれ21万7000円であり、TSMCの新工場の好待遇が際立つそうです。処遇改善は業界として歓迎すべきこととしながら、労務コスト増は同業他社の経営を圧迫しかねないとニュースイッチはいいます。

 しかし、国内の賃上げが進まないといわれるなかで、まずは好調な業界から待遇を改善し、それが他の業界にも波及していくことが望ましいのではないでしょうか。

 

 

モーター最大手の日本電産が、モータなどに使用する半導体の安定調達に向けた戦略を説明したといいます。

日本電産の半導体戦略は、半導体メーカーに「作りたい」と思わせること:車載半導体(1/2 ページ) - MONOist

 MONOistによれば、新たに設立された半導体ソリューションセンターを通じて、半導体の購買を技術面でサポートし、あらゆるリスクに対応できる半導体サプライチェーンを確立、製品の安定した生産と供給を実現する。

 その要が、 「集中購買」と「インテリジェントモーター」用半導体のRFQ 見積依頼のようです。

「現在はなかなか集中購買ができていないが、日本電産グループの売り上げは客観的に見ても順調に伸びており、伸び方も速い。シェアも大きく伸ばしている。この数字の大きさは集中購買で重要になる」(出所:MONOist)

 日本電産のCTO大村氏はRFQを「半導体の調達といっても、何を使うかのセレクション(選定)も重要になる。その中でいかに最適なパートナーを確保できるかがRFQ」と説明しています。

RFQには、モジュールの構造やチップサイズ、基板、製造方法、開発環境、評価環境などを含めた技術要求仕様の他、年度別、数量別の価格などが含まれる。半導体メーカーに情報提供を要求するだけでなく、日本電産側からもさまざまな見通しを示す必要がある。(出所:MONOist)

 RFQの難しさについて、「RFQは経験者にしかできない。5~10年先をみて、世の中がどう変わるか、見通しを持つ必要がある」と大村氏は説明しているそうです。ただRFQができる人は少ないといいます。できる人材を新設の半導体ソリューションセンターに集め、プロフェッショナル集団にしていくと語ったといいます。

 モーターの最大手の日本電産にしては、少々意外と感じます。これまで調達という仕事が重要視されていなかったのでしょうか。

 

 

 日本に比べ海外では、調達は重要な仕事とされています。アップルのティムクック氏がCEOになる前は調達関係の仕事をしていたことからも、それが理解できます。

「Procurmenet Engineer」なる職も海外にはあります。開発購買とでもいうのでしょうか。こうした人たちが常に最新技術を調査し、関連する業界の動向も調査します。その範囲は川上の原材料から川下の物流まで。そうして常に最適な調達網、サプライチェーンを検討します。また自社においては必要となる技術のRFQなどを取りまとめ、調査結果から候補取引先を選び、交渉などを行います。調達のプロフェッショナルです。

 半導体が起点となって、エンジニアばかりでなく、様々な職種が見直され、その専門技能が向上し、なおかつ賃金が見直されていけばいいのかもしれません。そうしたことで生産性の向上にもつながっていくのではないでしょうか。

 

「参考文書」

日本電産の半導体戦略が明らかに、「自社の設計開発力高めサプライヤーと対等に議論」(2ページ目) | 日経クロステック(xTECH)

日本電産、半導体を集中購買・製造委託へ 経済安保 - 産経ニュース