Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

好調な日経平均株価、それなのに進みそうにない実質賃金の上昇

 日経平均株価が好調のようです。3万7千円台を回復、少しずつバブル期の過去最高に近づいてきました。不祥事や不正に負けず日本株も、過去最高を更新し続ける米国株のように好調さを維持できるのでしょうか。

 新NISAも始まり多額の資金が投資信託などに流入するようになっているようです。

1月末の投信残高、「オルカン」が2兆円突破 - 日本経済新聞

 人気の投信は日本株というより、米国など海外を対象にしたものが人気上位を占めています。好調な株価を受けてもう少し日本株の人気が高まってもよさそうな気がしますが、信用されていないということなのでしょうか。

 

 

 株価好調とは裏腹に、賃上げの進行は今ひとつ力強さが欠けているのでしょうか。現金給与総額は伸びるものの、なかなか物価上昇を上回ることはなく、依然実質賃金はマイナス圏のままです。企業に対して賃上げを求めたいところですが、政府や世論が無理な賃上げを求めると、一時的には実質賃金は上昇しても、それによって企業収益は圧迫され、いずれ企業が雇用や賃金を抑制することになり、結局は実質賃金の持続的な上昇を妨げかねないといいます。

 なかなかうまくいくことはないようです。企業業績が改善し続け、株価もそれに伴って上昇を維持し、なおかつそれによって、実質賃金も上昇していくことがいいのでしょうが、そんなことはいつになったら実現するのでしょうか。

実質賃金の上昇にはインフレ率のさらなる低下が必要(12月毎月勤労統計):政府は賃上げ要請よりも持続的に実質賃金を高める成長戦略の推進を|2024年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

 持続的な実質賃金の上昇、その実現には、少子化対策労働市場改革、インバウンド戦略、大都市一極集中の是正、外国人労働力の活用などの成長戦略を進めていくことが、政府に求められると専門家は指摘します。

それらが成果をあげ、先行きの成長率見通しが高まれば、企業は設備投資を活発化し、それが労働生産性上昇率を高めるだろう。(出所: 野村総合研究所

 政府は目先の成果にこだわっているようで、足元での賃上げに力を注ぎます。しかし、それでは経済環境を好転させることはできないだろうといいます。

 

 

 ここ最近における政治の混乱が気がかりです。自民党の腐敗が深刻のようで、こんな状態では、進めるべき適切な経済対策も実行不可能なように思われます。急ぎ政治改革を断行しない限り、厳しい状況がまだまだ続くことになるということなのでしょうか。

 

 

「参考文書」

中国とバフェットが高笑いし、労働者があえぐ国ニッポン | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

結局、新NISA活用の外貨投資はいつ、どれくらい円安を進めるのか | Business Insider Japan

東証がPBR改善宣言1115社公開 投資家「経営者に同調圧力かける」:日経ビジネス電子版

悔しさにじむ退任会見、パーパス経営のSOMPO櫻田CEOの挫折

 ビッグモーターによる保険金不正請求問題をめぐって、SOMPOホールディングス桜田謙悟会長兼グループCEOが責任を取って3月末で退任することになったといいます。

なぜ俺の責任に…SOMPOのドン、追い込まれた「桜田ファミリア」:朝日新聞デジタル

「痛恨の極みであり、深く反省している」、「大きな汚点を残した可能性があることを考えれば、現実にグループの最高責任者である私が責任なしとはありえない」.....

 悔しさが滲み会見だったようです。

 

 

記者から引責辞任なのか問われると桜田氏は「皆さんの判断に任せたい」と明言を避けつつ「現時点のCEOとして私に一切の責任がないはずはなく、反論するつもりはない」と話した。(出所:日本経済新聞

「売り上げ重視の企業文化。顧客をないがしろにする風土を刷新できなければ、失墜した信頼は取り戻せない」、業務改善命令を出した金融庁はそう指摘し、顧客の利益よりも収益を重視する企業文化の是正を求めたそうです。

売り上げ重視、顧客ないがしろ トップ引責―SOMPO・損保ジャパン:時事ドットコム

「グループ経営に重大な影響を及ぼし、お客さまの信頼を失う危機的な事案に発展する可能性があるとの認識を持てなかった」と、櫻田氏は会見で釈明したそうです。

「グループ全体に欠陥があったとは思いたくない」、トップとしての在任が長くなり、物言いづらい企業風土、雰囲気があったのではないかと問われた桜田氏は金融庁の改善命令で「あなたがいたからだと言われてビックリしたが、僕がいなくなることで物言える文化となるならそれに越したことはない」、「言いづらかったと言われれば、不徳のいたすところ」と述べたともいいます。

 会見の様子は「改革派」として損害保険業界のみならず、経済界に名をはせてきた櫻田氏のイメージと大きくかけ離れたものだったといいます。

SOMPO桜田CEO、在任13年に幕引き パーパスだけで企業文化変えられず:日経ビジネス電子版

2010年7月に旧損保ジャパンの社長に就任。「損保3メガ体制の中で勝ち組になる」との目標を掲げ、次々と手を打った。旧日本興亜損保との合併を主導し、14年に実現させた。人口減で市場が縮む国内損保ビジネスを補うため、海外事業も強化。介護にも参入するなど多角化を進めた....(中略)....先進的な企業統治を採り入れ、企業が存在する目的である「パーパス」の追求でも、SOMPOは知られるようになる。(出所:朝日新聞

 桜田氏は、強いリーダーシップと経営手腕で、損保ジャパンを中核とするSOMPOグループを大きく成長させてきたそうです。

 

 

「パーパス経営」、どんなに優れた最新の手法であっても、結局、それは目的に対する手段に過ぎず、どんな時、どんな場合でも、ほんとうに求められているのは経営トップの正しい哲理、そして組織を貫く共通理解なのでしょう。どんなに経営者が高い意欲で推し進めようにも、それに呼応する企業文化が育まれたいなければ、改革が期待通りに進むことはないのでしょう。そこでは、常に人間の存在を無視できず、結局、人間的考察が求められることになるはずです。

 櫻田氏の後任CEOには、奥村COOが昇格し、損保ジャパンの白川社長の後任に石川副社長が昇格するそうです。「不退転の覚悟で企業風土の改革に取り組んでいく」と奥村氏は語り、石川氏は人事や評価制度を改め、「営業を優先する企業風土やカルチャーをすべて変えたい」と、企業文化の変革を担う専門の部署を設ける意向を明らかにしたそうです。

 さて新たな経営体制で進むことになるSOMPOではどんな企業文化が形成されていくのでしょうか。

 卓越した顧客サービス、社会的責任、株主価値、誠実さ、チームワーク、優秀さ、そんな要素が含まれていればいいのかもしれません。

 

「参考文書」

損保ジャパン親会社 経営陣刷新を発表 ビッグモーター問題で | NHK | 金融

SOMPO、桜田CEO退任発表「監督・執行に関与しない」 - 日本経済新聞

 

政治腐敗、企業不正、揺らぐ経済大国

 GDP 国内総生産がドイツに抜かれるのがほぼ確実になったそうです。3位から4位へ。このままでは、インドにも抜かれるのも時間の問題で、ランキングは5位へと下落が続きそうだといいます。

日独逆転、GDP4位に転落 「経済大国=豊か」という幻想の先へ:朝日新聞デジタル

 先進国の窓際、衰退途上国、かすむ経済大国、そんな言葉を聞くようになりました。企業は不正を繰り返し、腐敗政治が改まらないのですから、当然のことのようにも思えます。そんな中、かろうじて株価は改革期待で好調のようですが、改革を進めることができなければ、そのしっぺ返しが心配になります。

 

 

「日本を、取り戻す。」安倍自民党が掲げた掛け声、キャッチフレーズだったといいます。情感のあるキャッチフレーズです。

 GDPで中国に追い抜かれ、2位から転落したショックの反動で国民受けしたのではないかといわれます。それなりに説得力があったのかもしれません。

 その後、安倍政権が誕生しアベノミクスが始まることになります。株価は上昇し、キャッチフレーズがさらに信認を得ることになったのかもしれません。政府政策を無批判に信奉し、同質性が強化され、経済大国復権との夢へと邁進していったのかもしれません。多くの人々が経済を口に出し、活気ある経済、経済を回すためには消費、そんな言葉が語られるようになっていったと感じます。

 しかし、現実は残酷なものです。結果は出ないまま、逆にランキングを落とすことになりました。その上、膨れ上がった政府債務など弊害が増えることになります。政治は一強多弱となって、まるで一党支配のようになり、陰では政治腐敗が進んでいたようです。

 

 

 停滞した賃上げ、これもその弊害のひとつなのでしょう。その「賃上げ」が国是になっています。政府、労働界、経済界代表による「政労使会議」が首相官邸で開催され、首相は「昨年を上回る水準の賃上げ」と掛け声をかけ、達成のカギを握る中小企業の賃上げについて、労務費の価格転嫁対策に「全力で取り組む」と表明したそうです。

政労使、持続的賃上げ確認 岸田首相「昨年上回る水準を」―春闘前、中小波及へ異例開催:時事ドットコム

 懲りずにまた国が掛け声をかけて、主導的な立場で進めようとするのでしょうか。また同じことの繰り返しになりそうです。国に頼るばかりでは、同質性から解放されずに、主体的な改革が実行できようはずもありません。気合いで賃上げしたところで、持続的なものにならず、疲弊していくことになりかねません。

 国は政治改革を進め、企業とのもたれ合い構造を壊していく。企業は企業で改革を進める。専門家が様々に、賃上げへの処方箋を提言しています。どれがもっとも効果的かは不明ですが、その中でもっと適合しそうなもの参考に、目標を定めて改革を進めなければならないはずです。

 

賃上げの研究 ~どうすれば実質賃金を上げられるか~ | 熊野 英生 | 第一生命経済研究所

 

「参考文書」

日本企業に蔓延る忖度・調整・決まらぬ会議 JTCを大解剖 - 日本経済新聞

「会計責任者が勝手に」政治家の釈明、専門家は「あり得ない」と指摘:朝日新聞デジタル

春闘に先立ち政労使が意見交換、賃上げ機運醸成へ | ロイター

 

 

資産運用する自分、働く自分、その2つの接合点

 連騰していた日経平均株価が反落したようです。過熱感から反動で利益確定売りが優勢となったといいます。ただ下値は押し目買いも入り、下落幅は限定的だったといいます。月末には製造業を中心に決算発表が始まるので、再び上昇基調になりやすいそうです。また、東京証券取引所が、資本効率を改善するための事業計画を策定した企業のリストを発表し、この改革の進行次第では株価の持続的な上昇につながる可能性もあるといいます。

 外部からの圧力でPBR(株価純資産倍率)の改善が促され、それで株価が上がるのは如何なものなのかと感じます。企業が「愛される企業」にみずから改革できれば、おのずと株価はあがるように思えます。

 

 

「株主かステークホルダーか」という二元論がいまだに存在しているそうです。「愛される企業」が、より優れた財務実績を達成しているにも関わらずといいます。「愛される企業」は、すべてのステークホルダーにとっての価値創造を意識的に行なおうとするそうです。これこそが株主価値を長期的に生み出す最善の方法ではないかといいます。

 数字だけ見て企業を判断する金融アナリストたちは、「投資家の利益を奪う取るに足りない従業員を甘やかして給与を払い過ぎるようになるはけしからん」と考えたりするそうです。

 こうした視点で、 例えば「コストコ」を分析すれば、福利厚生は手厚すぎ、未公開会社のような経営をしている企業となるといいます。そして、公開会社は株主のことを第一に考える必要があると主張するそうです。

コストコの高利益率を生み出す、従業員への「手厚すぎる待遇」:日経ビジネス電子版

コストコは同業他社と比べて給与水準がかなり高く、しかも福利厚生なども充実している。直接競合する企業よりかなり多く支払っていながら、従業員ひとりあたりの売上も利益もかなり大きい。まるで錬金術のようだが、圧倒的な効率のよさと、非常に低い離職率のおかげなのだ。より高い賃金でより満足して働いているから、モチベーションも生産性も高い。さらに、一般的な小売業とくらべて愛社精神も強いため、生産性をさらに高める新たなアイデアを従業員が次々と提案しているにちがいない。(出所:日経ビジネス

 他の愛される企業もコストコ同様に、従業員の給与が高く、投資家をしっかり儲けさせ、顧客とサプライヤーを十分満足させ、また地域コミュニティからも歓迎されることが多く、それが特長になっているといいます。

 

 

 日本の企業も、「二元論」に陥ることなく、コストコのような企業となっていけばいいのでしょう。賃上げが国是となり、また一方で投資が国によって推奨されているのだから。ましてウェルビーイングや人的資本経営、ESG経営、そんな文言も流行りとなっています。

デイトレーダーその他の解約率の高い投機家は考慮に入れていない。一時的な価値を「奪いとる」だけで、長期的な価値創造には投資していないからだ。実際、短期投資というのは矛盾した表現であり、真の投資はすべて長期的なものなのだ。ステークホルダー関係管理の経済エコシステム[生態系]においては、長期的価値を生み出すステークホルダーだけが、長期的な意味をなす。(出所:日経ビジネス

 ちょっと考えさせられる文言です。短期的な利益を求めて資産運用、投資するのか、それとも長期投資で持続的な利益を求めていくのか。資産運用する自分と働く自分を上手に接合できると、思わぬ効用がどちらにおいても出てきそうな気もします。

 

「参考文書」

午前の日経平均は反落、6連騰の反動で利益確定 下値は堅い | ロイター

PBRの改革策開示4割に 企業経営、株価重視へ転換 - 日本経済新聞

 

連騰する日経平均株価、現実社会とのギャップ

 日経平均株価が連日の高騰し、好調さを維持しているようです。能登半島地震の影響で、日銀が大規模緩和策を継続せざるを得ず、円安傾向が続き、それによって企業の業績改善が見込めるためといいます。

 支援が十分に行き届かずに被災地では多くの人が厳しい状況下に置かれています。それが故、金融政策の修正を躊躇する。その結果、株価は好調..... 理解はできますが、良心の呵責にも苛まれそうです。義援金などによる支援しかないのでしょうか。

 

 

疑惑

 こんなときに、テレビやネットが明るい話題を提供できればよいのでしょうが、なかなかそうならないようです。松本人志さんを巡る疑惑は、大きな混乱を招く事態に発展していきそうです。

松本さん番組スポンサー表示やめ アサヒビールとサントリー | 共同通信

 これまで見て見ぬふりできたことも、今ではそうできず、スポンサー企業もアクションせざるを得なくなっているようです。テレビ局もその意向は無視できません。

英国でも冤罪事件

 英国では富士通が問題が起こした問題が再燃し、議会証言を求められることになりそうだといいます。

富士通は賠償負担する必要、郵便局えん罪事件で責任判明なら-英政府 - Bloomberg

 富士通は、勘定系システム「ホライゾン」を2000年前後から英ポストオフィスに提供しはじめ、このシステムの欠陥により、「サブポストマスター(民間受託郵便局長)」と呼ばれる英郵便局管理職が窃盗の罪を着せられ、数百人が破産したり収監されたりし、何人かは自ら命を絶つ冤罪事件があったそうです。このスキャンダルの公的な調査によって責任が認められた場合、富士通は補償を行う必要があるといいます。

 ショッキングなことであると同時に、やはり富士通なのかとの印象もあります。

 高い品質で名をはせたメイド・イン・ジャパンの神話ももう遠い過去のことになったのだとつくづく感じます。

 

 

 多方面において立て直さなければならないことが多そうです。どれだけ問題の本質に近づいて改善を進められるのか、それが求められていそうです。しかし、本質を見ずして、表面だけの改善が横行するから、何も変化しないまま終わってしまうのでしょう。それがさらなる遅れとなって、衰退を加速させていくのでしょう。

【Web特別寄稿】日本が「高賃金化」を達成するために必要な4つの仕掛け | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

今のコンサルタントには、自分が持っている薬を売る薬剤師タイプが多い。ですが、本当の意味でのコンサルタントは医師タイプだと。いきなり薬を処方するのではなく、患者の話をよく聞いた上で病根を探り、治療法を考えていく。(出所: Executive Foresight Online:日立

 これはコンサルに限った話でないような気がします。色々便利に使える道具は増えたけど、問題の本質を見ずに道具ばかりを使うから、おかしなことになって、いつまでも問題は解決されず、いつまでも同じような問題が繰り返してしまうのでしょう。いつになったら負の連鎖が止まることになるのやら。

 

 

「参考文書」

英郵便局スキャンダル、被害者救済に新展開 富士通は下院で証言へ - BBCニュース

『会社という迷宮』石井光太郎氏と語る、経営の本質―その2 主観の回復。 - Executive Foresight Online:日立

 

新NISAへの追い風か、期待先行で好調な日経平均株価、気にしたい下落リスク

 日経平均株価が好調のようです。右肩上がりの株価だけを見ていれば、衰退途上国と揶揄され、ダメな国であったはずの日本の復活もあるのではないかと錯覚しそうです。

 足元では米国株の好調さが影響しての上昇と言われ、リスクの高い資産への投資を増やす投資家の買いが日本株に拡大しているともいいます。また新NISAが始まり、個人マネー流入の期待も意識されているそうです。

日経平均株価、バブル後高値更新の原動力は? - 日本経済新聞

企業の稼ぐ力やガバナンスの向上、デフレ脱却に向けた日本経済の好転を期待した買いがけん引役だ。投資家は賃上げなど経済の好循環を24年以降に保てるか注視している。(出所:日本経済新聞

 期待先行の株高のようです。このまま持続的な株価の上昇は続くのでしょうか。

 

 

生産性向上

 期待に応えるために企業がやるべきことが多々ありそうです。やる気を失った労働者がごまんといそうですし、生産性向上もやる気も改善しなければならないようです。

「やる気が無い社員が7割」という日本の現実を見据える1冊:日経ビジネス電子版

 大企業には、中途半端なホワイトカラーがごまんといて、日本全体の賃金水準低下に影響を与えているそうです。彼らの生産性は低く、会議や社内調整ばかりに時間を費やしているからと経営共創基盤の冨山和彦氏が指摘します。

冨山和彦氏「会議と社内調整だけのホワイトカラーが賃金下げている」:日経ビジネス電子版

 役立たずでムダな仕事を増やすホワイトカラーは淘汰されなければならないのかもしれません。それよりは、エッセンシャルワーカーを中間層並みに稼げる仕事にすべきと冨山氏はいいます。そんな構造改革が進むことはあるのでしょうか。

低下続く実質賃金

 実質賃金が20カ月連続で減少しているといいます。昨年11月の実績は7カ月ぶりの大幅な減少率となったそうです。

実質賃金は7カ月ぶり減少率、日銀正常化観測後退の新たな材料に - Bloomberg

インフレ率は鈍化傾向にあるものの、名目賃金の伸び悩みで実質賃金に改善が見られず、日本銀行が掲げる賃金と物価の好循環実現にはなお至っていないとの見方が出ている。(出所:ブルームバーグ

 現実はなかなか厳しいようです。

 

 

リスク

 この春の賃上げに期待なのでしょうが、どうなるのでしょうか。「官製春闘」との揶揄もあるようです。

デフレ完全脱却「最大の課題」 「官製春闘」に反論も―経団連指針最終案:時事ドットコム

 混乱する政治がリスクとなりそうな気もします。政権与党が自ら不安定化を招き、失策が続けば経済を冷やしかねません。

 他にもリスクはあるようです。2024版の「十大リスク」のトップに、米国大統領選を巡る政治的な混乱が挙がり、「中東情勢の緊迫化」や「ウクライナ分割」など地政学的なリスクが続いているそうです。

「米大統領選」がトップ 24年の十大リスク―米調査会社:時事ドットコム

 トランプ前大統領が共和党候補になれば、政治的な分断が悪化する可能性があり、「世界での米国の信頼を損なうことになる」といいます。

 年初、出だし好調で、新NISAにおいても追い風になりそうな株高ですが、リスクも気になります。やってくるであろう下落に翻弄されることなく、気長に長期保有する勇気を試されることになるのかもしれません。

 

「参考文書」

稼ぐ力映す株高 日経平均33年ぶり高値、好循環課題に - 日本経済新聞

「未来予測して終わり」やめよう VUCA時代の経営戦略 - 日本経済新聞

逆風下の岸田予算・税制改正 支持率低迷や政治とカネ - 日本経済新聞

「アベノミクス」修正は予断許さず 岸田首相も積極財政 - 日本経済新聞

経済大国、転落止めよう - 日本経済新聞

「安いニッポン」脱し成長へ 付加価値作る覚悟問う - 日本経済新聞

 

国が目指す資産運用立国、始まった新NISA、学校でも金融教育

 国があっちこっちに首を突っ込み、あれをやれ、これをやれとやかましい時代になったと感じます。

「マイナカード」に「リスキリング」、それに続いて「賃上げ」、「投資」を推奨して始まった「新NISA」。企業に任せておけばよさそうなものですが、諸外国からの遅れが深刻で、その挽回に必死ということでしょうか。

 

 

金融教育

 学校教育では、「金融」も教材になっているそうです。社会科の必修科目「公共」で扱われ、「家庭科」にも加わっているといいます。

 ただ現場においては多少混乱もあるようです。教科書の執筆に参加している人も疑問を感じているようです。

 子どもたちに「生きていくために、お金という道具をどう使い、どう向き合うか」を教えたい教師と、「お金の増やし方」がせめぎ合っているそうです。今の金融教育では、本質が忘れられ、いかに投資で資産を増やすかという話が中心になっているといいます。

「教育の本来の目的は、それぞれの人生を豊かにすることです」、「お金を増やすこと」を公教育で教えること自体が、ナンセンスとこの人は指摘します。そもそも、「お金を増やすこと」は全員で達成することができないことだといいます。

新NISA

 新NISAが始まり、米企業への投資が人気だといいます。それなりに理にかなっているような気もします。ただそれでは国が目指す「資産運用立国」とはちょっと趣きが異なることになるのかもしれません。

[社説]企業は富の創造へ市場と向き合え - 日本経済新聞

2000兆円に達する個人金融資産が自分たちの国の企業に流れないのは残念だ。個人マネーが国内に流れるようにするには、企業が収益力を高め投資を引きつける必要がある。(出所:日本経済新聞

 

 

 賃金が上昇し、物価もそこそこに上昇、こうした情勢が金利によってコントロールされるようになって日本の経済が正常化していくといいます。そのためには企業こそが牽引役であるべきといいます。そうなって、日本人のお金が日本企業に広く投資されることになり、その果実を私たちひとりひとりが受け取ることになるといいます。

 さて企業の変革が進んで、そんな理想を実現することはあるのでしょうか。

投資では、まず社会に存在している課題を発見し、それを解決したいと考える人たちがいるのが前提です。彼らが「投資」という形でお金を融通してもらうことによって、問題を解決したり便利なものを作ったりできるようになり、社会に価値が生み出されていくのです。(引用:NEWSPICKS)

  まだ解決されていない社会課題にチャレンジする人が増えればいいのかもしれません。やる気が根気強い人が「投資してもらう側」に回って新しい会社を作れば、投資対象が増えていきそうな気がします。その中からGAFAに引けを取らない会社が生まれればいいのでしょう。

「金融」とは、文字通り「お金の融通」によって新たな経済活動を生み出すことを指します。お金の融通によって、社会の、もしくは人がそれぞれ抱えている問題を支え合いながら解決してみんなが幸せになっていくことが目的です。お金は、そのための道具にすぎません。(引用:NEWSPICKS)

 案外こうしたことを投資が集まるGAMAのようなビッグテックは熟知しているのかもしれません。彼らは情報格差という社会課題を解決のために上手なお金の使い方をしたのかもしれません。それが故、今なおそこに投資が集まるのかもしれません。