Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

ファイナンシャル・インクルージョン: 利他を求める社会、されど企業は利己的なまま 

 

 クラファンCampfireが、融資型クラウドファンディングサービス Campfire Ownersを始めたと聞き、非常に興味をもった。CAMPFIRE代表取締役の家入氏はこの新しいサービスを始めるにあたりForbesでこう語っていた。

 

クラウドファンディングを通じて金融サービスへのアクセスを容易にして、金融包摂、フィナンシャル・インクルージョン(貧困者や小規模事業者などでも手軽に金融サービスを利用できるようにすること)を実現していきたい。これからの日本のことを考えると、民間でも、もっといろんなお金の動かし方を考えないといけないと考えている (出所:Forbes) 

 

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 Campfire Ownersから以下報道があった。

 

Owners 4つの初号案件(実施ファンド)がすべて成立

株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITALが2019年9月下旬より以下4件を初号案件として募集または私募(「募集等」)の取扱いを開始し、全ての申込みが満額(計2,400万円)で成立いたしました。尚、ファンド営業者はいずれも株式会社CAMPFIREとなり、投資家から集めた資金を元に、各借入人に対して貸付を行います。 (出所:PR Times

 

今後の展開 金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン

一般的に従来の金融機関・金融サービスでは取扱いが難しいといわれる、社会性・公共性が高い資金需要にも応えながら、国内のベンチャー企業や上場企業の事業支援、海外新興国カンボジアインドネシアベトナムなど)の経済成長支援を資金使途としたファンドを揃えていく予定です。 (出所:PR Times

 

 

 

コスメブランド「OSAJI(オサジ)」

 今回初号案件のひとつに「コスメブランド研究開発ファンド」がある。対象は日東電化工業株式会社のOSAJIというコスメブランド。開発責任者の茂田正和氏は以下のようにコメントする。

 

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皮膚疾患は原因が環境依存でもあり、現代病のひとつといえます。それを緩和するための化粧行動は、社会的意義のあるものだと私たちは考えています。

国内ではなかなか広がっていないESG投資ですが、多様性の時代を迎え、旧来の社会構造を変える舵をいよいよ切らなければならない今、それが大きなエネルギーとして広がるかどうかは、やはりファイナンス次第だと思います。

このファンドのような取り組みに参加させてもらうにあたり、次の時代のための「生きたお金」を私たちはちゃんとお預かりし、より良い社会のために経営努力をすることで循環をしっかりまわしていけたらと思います。 (出所:キャンプーファイヤーオーナーズ)

 

owners.camp-fire.jp

   

 日本企業の内部留保が500兆円を超えたという報道があった。本来、利益は将来の成長のために投資すべきであると言われるが、将来のリスクに備えて蓄財しているとの見方が大方だ。

 

「利他的な行動、高次な欲求」

『米国の心理学者、A・マズロー氏は人間の欲求を5段階に分けたことで有名だ。まずは食欲などの生きていくための生理的欲求に始まり身の安全、社会的組織に属するものや、他人から認められたい承認、そして自己実現へと高まっていくことを明示した。晩年のマズロー氏はさらに高次の欲求があると研究を進めていた。そのテーマは哲学的、倫理的なものだったとされる。底流にあるのは利他的な行動への欲求だ寄付行為などは成熟した社会基盤があってこそ成り立つ。日本は無意識のうちに空気を吸うようにエシカル消費が広がる時代になりつつある。  (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 クラウドファンディングのようなサービスが出現、寄付の選択肢が増え容易に行えるようになった。寄付を行う人も増え、クラファンの成立案件も増える。それだけ社会が社会が成熟しているのだろう。

 一方で、企業は、リスクといって、まだ身の安全のことしか考えられないようだ。利己的な保身ということなのだろうか。

 

 日本財団会長・笹川陽平氏は、『内部留保をどう使うか、最終的な判断は企業の決断に委ねられるが、CSR活動への積極的な取り組みは間違いなく企業に対する国民のイメージを好転させ、企業・経済界の発展、ひいては景気の上昇にもつながる。』とSankeiBizで語たる。

 

インドは利益のCSR2%義務付け

 実際、インドでは利益の2%をCSR活動に費やすよう義務化されているという。 

インドでは、13年に改正された新会社法で、「純資産が50億ルピー以上」「総売上高が100億ルピー以上」「純利益が5000万ルピー以上」の3要件のうち1つ以上を満たす会社に上場、非上場を問わず過去3年の平均純利益の2%以上をCSR活動に費やすよう義務付けている。

 「飢餓および貧困の根絶」「子供の死亡率減少」などCSR活動の具体的内容も定められ、現地日系企業も含め16年時点で約1500社が計約830億ルピーを医療や衛生など幅広い分野に費やしている

 

www.sankeibiz.jp

 

 切実な社会課題を解決に導いていこうということなのだろうか。

 企業活動そのものが、こうした課題に向き合えば、解決できることも増えていく。本来、ビジネスとはそうあるべきなのかもしれない。

 

CSRに変わる「Shared Value」という考え方

 経営学者のマイケル・ポーターは、CSRに代わる新たな経営の考え方「Creating Shared Value」を説いている。

「Shared Valueとは、生み出された利益をどうやって分けるか(share するか)ではなく、企業の競争力を強化しつつその企業が操業する地域社会の経済と社会的な状況を発展させ、経済的・社会的利益を生み出し成長させるのかという方法論である。

具体的にはその地域社会のニーズと経済の関係性を認識して発展させることから生まれる。地域の環境を保護する商品や、途上国に安定した雇用と安全衛生サービスを生み出す工場など、本当に社会発展に資する製品やサービスを提供することで、企業は新たなイノベーションを生み出し、自社の競争力を強化し、そして社会の発展に寄与する。

(出所:お金の規律を考える ~利己から利他へ~大和総研調査季報 2012 年 新春号 Vol.5

 

世界はCSVが主流に

 目を世界に転じてみれば、アップル、スタバ、ネスレユニリーバ、ダノンなど、世界をリードするグローバル企業はCSVを経営に取り入れている。大きくとらえればアマゾンもCSVを意識しているであろう。先日、国連の地球大賞を受賞したアウトドア企業のパタゴニアは最たる例だ。

 地球大賞の受賞式で、国連環境計画事務局長インガー・アンダーセン氏は、こうコメントする。

「今日の最も緊急性の高い環境問題に対するパタゴニアサステナビリティと環境活動を通して、パタゴニアは気候変動、生物多様性の消失、その他の人類と地球の健全性への脅威に対するたたかいにどのように民間企業が参加できるかのとても良い事例を提供してくれている。

パタゴニアサステナビリティへの取り組みが経済的にも成り立ち、そして、そのビジネスの成功が気候変動や環境悪化に対して企業が先進的な取り組みをすることを消費者も望んでいることを明らかにしてくれている。

パタゴニアはそれができることを示してくれているし、しかもそれを高いレベルで実現している。」(出所:PR Tomes)

 

 内部留保をため込んだ日本企業も、深刻な地球温暖化や気候変動の問題の解決に積極的に投資すべきではないであろうか。何もすべて自分で解決することはない。こうした問題に取り組もうとする人々を支援する方法もあるはずだ。

 

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