コロナ渦で、「お金」、投資の流れが変化しているようだ。
世界各地で経済活動が滞っている。そんな状況下では、投資マネーが従来型の経済活動から違う世界に移っても不思議ではないのかもしれない。
世界は良い方向に動きだしたのだろうか。
「SDGsへの貢献度が高い企業には資金が流れやすい仕組みが整ってきた」
環境や社会に配慮するESG投資とSDGsがより強固に結びつく新たな段階に入った。
機関投資家がSDGsに貢献しているかどうかで、企業を選別する動きを強めていると日本経済新聞はいう。
日本経済新聞によれば、オランダの運用会社APGが、企業のSDGs実現に対する貢献度を評価する枠組み「持続可能な開発投資(SDI)アセットオーナープラットフォーム」を作ったという。この枠組みに、各国の資産運用会社や年金基金などの機関投資家が参加、運用資産が1兆ドル(約110兆円)にのぼるという。
SDGsという世界共通の目標を活用すれば、実社会への投資の効果を確認しやすい。見せかけだけで中身を伴わないESG投資を除外する効果も期待できる。 (出所:日本経済新聞)
その背景には投資家の焦りがあるという。環境や社会問題の解決に資するとESG投資を推進してきたにもかかわらず、気候変動問題はさらに深刻になるばかり、成果があらわれていない....と日本経済新聞は説明する。
「iシェアーズ MSCI グローバルインパクト上場投資信託(ETF)」というETFは、SDGsに貢献する製品やサービスの売上高が全体の5割以上を占める企業に投資するという。米指数会社MSCIのSDGs関連指数への連動を目指していると日経新聞は説明する。
同ETFの組み入れトップは、米電気自動車(EV)メーカーのテスラ。走行中に排ガスを出さないEVはSDGsが掲げる気候変動対策につながる。
日本企業ではJR東日本が9位に入る。鉄道は自動車や飛行機よりもCO2排出量が少ないうえ、運営するオフィスが省エネルギーの認定を受けている。このほか、JR東海、日本ハム、TOTOなど18の企業や不動産投資信託(REIT)が投資対象になっている。 (出所:日本経済新聞)
野村 米ブラックロックのサーキュラー・エコノミー・ファンドの投信開始
野村アセットマネジメントは、「野村ブラックロック循環経済関連株投信」という投資信託の運用を8月24日から始めるという。
投資先ファンドは、米ブラックロックが、循環経済を推進する英エレン・マッカーサー財団と提携して19年10月に立ち上げた初の循環経済(サーキュラー・エコノミー)ファンド。
入銘柄上位10位内には、プラスチック代替のアルミ製容器を製造する米ボール・コーポレーション、飲料容器の自動回収機などを製造するノルウェーのトムラ・システムズ、商品パッケージの設計・製造の米グラフィック・パッケージング・ホールディングなどのほか、米マイクロソフトやスイスのネスレなどが見られる。 (出所:モーニングスター)
野村が、米ブラックロックのサーキュラー・エコノミーのファンドに投資する投資信託を設定したことに驚く。成長と利益の期待があるということであろうか。
ブラックロックのサーキュラー・エコノミー・ファンドの中味
このファンドは、循環経済の恩恵や発展への貢献が見込まれる企業の株式に投資し、具体的には、
「事業活動において循環経済に適応する企業(変化に適応する企業)」、
「非効率の解決に向けて革新的なソリューションを提供する企業(変化を促進する企業)」、
「再利用可能な代替素材を提供する企業(変化の恩恵を受ける企業)」、
「革新的なビジネスモデルを有する企業」
の4つの観点に着目して投資対象を選定する。 (出所:モーニングスター)
ブラックロックは、この「サーキュラー・エコノミー」のファンドで、ありとあらゆる業種から企業を選択しているようだ。 ただ投資先の多くは欧米の企業になっている。
(資料出所:BlackRock サーキュラー・エコノミー戦略(ブラックロック・ジャパン株式会社
このファンドの組入銘柄上位10位内に、飲料容器の自動回収機などを製造するノルウェーのトムラがある。
日本経済新聞によれば、トムラはセンサー技術を活用して、飲料容器や古紙の自動回収機のほか、廃棄物や混合金属からリサイクル材料を選別する機械などを手掛けているという。SDGsでも高い評価を得ているという。
(資料出所:BlackRock サーキュラー・エコノミー戦略(ブラックロック・ジャパン株式会社)
「サーキュラー・エコノミー」は、SDGsの4つの目標と関連があると、ブラックロックは説明する。
(資料出所:BlackRock サーキュラー・エコノミー戦略(ブラックロック・ジャパン株式会社)
投資の世界でのこうした動きからすれば、グローバル企業が挙って、サーキュラーエコノミーや気候変動対策に熱心になることが理解できる。
動き出すケミカルリサイクル 大規模な廃プラ処理
国内でも、今まで消極的と思われていた化石燃料に頼ってきた企業たちが変心し、サーキュラーエコノミーに積極的になってきている。廃プラを資源に、ケミカルリサイクルを拡大させる日本製鉄や出光興産のアクションを日本経済新聞が伝える。
出光興産は廃プラの再利用事業に参入する。
原油を分解する装置を使って廃プラからエチレンなど化学製品の原料を取り出す技術を開発する。現在は原油から生産しているが、安価な廃プラを使ってコストを下げる。
廃プラの処理量は年1万トンを見込む。国内で試験を始めており、2022年度の事業化を目指す。
化学大手でも、旭化成はシャンプーなどの容器を、三井化学は食品包装用フィルムの再利用の実用化を目指す。 (出所:日本経済新聞)
コロナ禍で経済活動が停滞し、雑貨向けなどの原料としての(廃プラ)需要が大きく減少、海外からの引き合いの回復は今後も見込みにくく、国内で安定的に再利用できる仕組みを整えることが急務になっていると日本経済新聞は指摘する。
こうしたことが背景かもしれないが、それだけで企業が積極的に投資する動機になるのだろうか。そこに何か焦りのようなものを感じる。
日本製鉄は石炭を蒸し焼きにして作る鉄鋼原料のコークスを生産する炉を活用して廃プラを処理している。廃プラをコークスの原料の一部にするとともに、油を取り出して樹脂などに再利用して販売している。
炉に入れる前の廃プラを圧縮する工程で出る摩擦熱の温度をコントロールすることで、現在よりも処理量が2割増える新技術を開発する。2年以内にコークス炉がある国内5カ所の製鉄所の設備を改修して、処理能力を年24万トン規模に引き上げる。 (出所:日本経済新聞)
国の施策の影響もあってのことだろうが、投資の世界の影響もまた大きいのではないであろうか。
「SDGsへの貢献度が高い企業には資金が流れやすい仕組みが整ってきた」
日本経済新聞によれば、18年に国内で発生した廃プラ891万トンのうち焼却や埋め立てでごみとして処分された廃プラは142万トンあったという。こうした大手企業が動くことで、多くの廃プラがケミカルリサイクルで処理が可能となる。
それでも処理できる数量には限りがある。
「脱プラ」、プラスチックスの消費が減らない限り、地球環境上にプラスチックスが増え続けることになる。
SDGsは企業の力だけでは達成できないということでもある。
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