Up Cycle Circular’s diary

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リチウムイオン電池に逆風? コンゴでの児童労働問題 新たなバッテリーの動きも

 

 ノーベル化学賞に吉野彰さんが表彰され、注目が集まるリチウムイオン電池に関わるショッキングなニュースが報じられた。

コバルト鉱山の児童労働にアップルらがリチウムイオン電池で関与? 

 米国の人権保護団体IRAが、アフリカ コンゴのコバルト鉱山で、違法な児童労働を支援したとして米国の大手企業5社を提訴した。提訴されたのはアップル、アルファベット、デル、マイクロソフト、テスラの5社。問題の対象はリチウムイオン電池だ。

IRAはこの件を米国で提訴した理由を、コンゴの司法システムは腐敗しており、原告らが法的権利を行使することが不可能であると判断したためだとしている。

提訴の対象には、中国最大のコバルト精錬事業者のZhejiang Huayou Cobaltや、スイスの資源大手グレンコア、ベルギー本拠のユミコアなどが含まれている。(出所:Forbes) 

forbesjapan.com

アムネスティ報告書 「命を削って掘る鉱石」

 2016年にアムネスティがこの問題を指摘、コンゴのコバルトに関わるサプライチェーンを調べ、大手メーカー16社に照会し、各メーカにおける対応状況を報じていた。

これらの企業の中でアップル社が最初に、コバルトを調達している企業名を公表した。アムネスティが把握している限り、現時点でアップル社は、コバルトの調達で説明責任を果たす企業として、業界をリードする存在だ。2016年以来、同社は積極的に華友コバルト社と連携して、サプライチェーンを調査し、児童労働に対処してきた。

デル社とHP社も、前向きな姿勢を見せている。両社は、自社のサプライチェーンと華友コバルト社との関わりを調査し始め、またコバルトの採掘現場での人権侵害と過酷な労働を突き止めるために、より厳格な方針を打ち出している。(出所:アムネスティ日本) 

www.amnesty.or.jp

 

 アムネスティは、この問題について以下報告書を発行している。

 「命を削って掘る鉱石」コンゴ民主共和国における人権侵害とコバルトの国際取引(報告書概要部翻訳)

 

リチウムイオン電池希少金属 そのサプライチェーン

 リチウムイオン電池が、ノーベル化学賞を受賞した理由は、「現在のIT社会の実現に大きな貢献をした」ということと、「環境・エネルギー問題の解決に向けて大きな可能性を秘めている」ということであった。(参考:サイエンスポータル)

 すでにメガソーラーや自動車、多くの電子機器に組み込まれ利用されるようになったリチウムイオン電池だが、その製造のもとで、このような人権侵害が起きている。

 現在のリチウムイオン電池希少金属を使うことで性能を飛躍的に向上させることができる。その希少金属の調達を含めたサプライチェーンは長大なものとなり、アップル、デル、テスラのようなハードウェアメーカだけで管理していくことはかなりの労力が必要になる。人権団体IRAの提訴が間違っていると気はまったくないが、電機メーカで働き、調達の仕事を経験した身からすると、その難しさが分かる。提訴された各社の今後どんな対応を図っていくのだろうか。

 

 

「Trade In」 アップルの希少金属のリサイクルプログラム

 アップルは現在Trade Inプラグロムで、使い終わった機器から希少金属の回収も行っている。こうした希少金属のリサイクルも問題解決に役立たないだろうか。

あなたが使っていたApple製品は、あなたの新しいApple製品の一部になるかもしれません。

下取りに出されるデバイスが多いほど、私たちが新しいデバイスに組み込める素材も多くなります。例えば、iPhoneから回収されたアルミニウムのほとんどは、MacBook Airの100%再生アルミニウム製の筐体に使われています。使用済みiPhoneのバッテリーから回収されたコバルトは、新しいバッテリーを作るために使われています。新しいApple製品で可能な限り多くのリサイクル素材を使えるように、私たちはApple社外のリサイクル資源も活用しています。再利用される資源が増えれば増えるほど、地球からの採掘量が減るからです。(出所:Apple) 

www.apple.com

 

 

www.apple.com

 

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IBM コバルト使わないバッテリーを開発

 一方で、IBMがコバルトを使わない新たなバッテリーを開発したとロイターが伝える。

米IBMは18日、海水から抽出した原料を利用し、コバルトを必要としない新たなバッテリー技術を開発したと発表した。

IBMは、ドイツ自動車大手ダイムラー傘下メルセデス・ベンツの研究開発部門、ガラス大手のセントラル硝子、伊電池メーカーのシドゥスと手を組み、この新しいバッテリーの商用開発を行っていると述べた。(出所:ロイター) 

 

jp.reuters.com

 

 この新しいバッテリーは、既存のリチウムイオン電池を上回る能力を示しているとIBMの公式ブログで明らかにしている。

次のような特定の利点の範囲で最適化することもできます。

低コスト: 正極活物質は、コバルト、ニッケル、その他の重金属を含まないため、コストが低くなる傾向があります。これらの資料は、通常、ソースに対して非常にリソース集約型であり、その持続可能性に対する懸念も提起しています。
より高速な充電:特定の放電容量を損なうことなく、80%の充電状態に達するのに必要な時間は5分未満です。
高出力密度:10,000 W / L以上。(リチウムイオン電池技術が達成できる電力レベルを超える)。
高エネルギー密度:800 Wh / L以上、最先端のリチウムイオン電池に匹敵します。
優れたエネルギー効率: 90%以上(バッテリーを充電するエネルギーに対するバッテリーを放電するエネルギーの比率から計算)。
電解質の低い可燃性 (出所:IBM公式ブログ)

www.ibm.com

 ロイターはこの新しいバッテリーが、IBMの手で商品化されるかは不明とも伝えている。

目標は1年ほどで(バッテリーの)最初の実用レベルの試作品を作ることになるだろう」と説明した。同氏は、IBMが最終的に、この新たな設計を利用した商品を必ずしも生産するとは限らないと付け加えた。(出所:ロイター)

 

 共同研究するダイムラーで、商用利用されることはあるのだろうか。

 

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「参考文書」

www.businessinsider.jp

jp.reuters.com