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【SDGsと人権】求められるトレーサビリティ 無印の「新疆綿」の裏側

 

 SDGsが世界の共通語になっても、解決できない問題が多数ある。そのひとつに人権問題がある。中国の西の外れ、新疆ウイグル自治区での人権問題を欧米諸国が問題視している。

 米議会の中国人権状況を監視する超党派委員会が、2019年版の報告書をまとめたという。「広範囲にわたり人権状況と法の支配の悪化が続き、先端技術を用いて中国当局が「国民を制御し、抑圧している」と非難。新疆ウイグル自治区でのウイグル族弾圧に関わった人物への制裁強化などを米政府に提言した」と1月9日付けの日本経済新聞は報じた。 

 その新疆ウイグル自治区の主要産業のひとつが綿花。その綿花は「新疆綿」と呼ばれ、エジプト綿(ギザ綿)、スーピマ綿と並んで世界三大高級コットンのひとつといわれる。繊維が長く、光沢があることが特徴で、日米欧に輸出され高級シャツ、高級シーツなどに利用される。(参考:Wikipedia) 

 英BBCは、昨年、新疆ウイグル地区で生産する綿花が、強制労働と関わりがあることを指摘した。無印良品ユニクロは、その地区で生産される「新疆綿」を素材として使用している。無印良品ユニクロの他、H&M、Espritなど世界の大手の対応をBBCは伝えている。 

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そもそも新疆綿とは?

 BBCによれば、新疆ウイグル自治区は中国の綿花生産の中心地だという。中国は世界の綿供給の約22%を占め、昨年の中国綿の84%が新疆産だったそうだ。

 

新疆ウイグル自治区

 中国の西端にある1955年に設立された自治区で、首府はウルムチWikipediaによれば、民族構成はウイグル人のほか、漢族、カザフ族、キルギス族、モンゴル族などさまざまな民族が居住していて、自治州、自治県など、様々なレベルの民族自治区画が置かれているという。

 小麦、綿花、テンサイ、ブドウ、ハミウリ、ヒツジ、イリ馬などが主要な生産物で、新疆綿は日米欧のアパレル産業で高級コットンとして扱われる。 

(写真出所:Wikipedia Chen Zhao - originally posted to Flickr as 到达大本营 / arrived at base camp)

 

 ウイグル問題

 昨年、中国のウイグルに関する公文書が流出したという。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した公文書には、収容施設に入れられた人々が監禁、教化、懲罰の対象となっている模様が記されているとBBCが報道した。

「新疆における人権状況と、中国政府の弾圧強化を深く憂慮している。とくに、100万人以上のイスラム教徒のウイグル人や他の少数民族の人々を、法にのっとらずに拘束していることを懸念している」と英外務省の報道官が表明した(出所:BBC)

 

 米国議会下院でもウイグル人権法案を可決決したとロイターが報じた。

 それによると、ウイグル人権法案はトランプ氏に対し、イスラム教徒への弾圧を非難し、新疆ウイグル自治区の北西部にある大規模な収容施設の閉鎖を呼び掛けるよう求めたという。

法案はさらに、ポンペオ国務長官に対し、自治区の再教育・強制労働施設に収容されている人数を推計するなど、弾圧の実態を報告するよう要求。顔・声認証技術など、個人の監視に利用可能な製品の中国への輸出も事実上禁止している。(出所:ロイター) 

jp.reuters.com

 

「新疆綿」 アパレル各社の対応

 BBCによれば、H&MEspritアディダスには、新疆綿を排除する動きがあるといい、アパレル各社の対応状況を伝えている。 

 アディダスは、BBCへの声明の中で、「Huafu Fashion Co.との契約関係はないが、この事業体または子会社を含め調査している」と報告、「材料サプライヤーに、調査が完了するまでHuafuに注文しないようにアドバイスした」という。

 Espritは新疆綿を直接調達していないとしたが、調査を行った結果、「Huafu工場から非常に少量の綿がEspritの商品に使用されていた」と好評した。また、同社はすべてのサプライヤーに対し、Huafu製製品の調達をしないよう指示したという。

 H&Mは、「直接的または間接的なビジネス関係」はないとしながらも、Huafu製品が使用されているとし、調査の結果、強制労働の証拠は見つからなかったと公表した。 

dsupplying.hatenablog.com

 ユニクロは、広告から「新疆綿」を削除したという。また、新疆ウイグル自治区に生産パートナーはないとし、さらに、ユニクロの生産パートナーは当社の厳格な企業行動規範を遵守する必要があると強調したとBBCは伝える。

 その後、夕刊フジの取材に、ユニクロは「商品に使用されるコットンは、米国、オーストラリア、中国など複数の地域から調達されている。当社の生地サプライヤーの一部が、新疆地区から原料となるコットンを調達していることは事実」と答え、「個別のサプライヤーに対し、強制労働の有無などについて照会を進めているが、現在までのところ問題は発見されていない」とした。「当社として取りうる対応についてさらに検討を進めている。サプライチェーンの人権問題に関しては、今後も継続的に取り組みを進める」との意向を示したそうだ。 

 無印良品は、「新疆綿」をセールスポイントとしたコレクションを立ち上げている。また、「新疆綿」の調達に関してオープンだとBBCは指摘する。

 無印良品は、その後、「インド、トルコ、アメリカ、中国など、世界中の多くの場所から良質な綿を調達している」とした上で、「これら全ての綿花および糸は、第三者機関によって確認がなされた、国際労働機関(ILO)が定める、強制労働を含む労働条件の順守を条件とするオーガニック国際認証を取得したものだ」と説明したと夕刊フジは伝えた。

www.bbc.com

 

まとめ

 グルーバル企業はこうした問題に機敏に反応する。対応を間違えれば、顧客の信用が失墜する。特に、エシカルサステナブルにかかわることであれば、なおさらだ。

 トレーサビリティの重要性が増している。糸一本の調達ソースをおさえておく必要に迫られる。 

 米国では、リチウムイオン電池に使用されているコバルトが児童労働に関わっているとし、アップルなど大手企業5社が提訴された。アップルはこの問題に積極的に関与、調査などを行っていたが、提訴された。

 まだ、多くの人権問題が存在する。企業もそうした問題への対処を常に求められる。

 無印良品が、「新疆綿」を前面に出した販売しているが、それはいいことのだろうか。「国際認証」された素材を使用していれば、問題はないのだろうか。少しばかり疑問がわいた。

www.muji.com

 

 

=2021.2.23追記=

ブルームバーグによれば、「良品計画は「新疆綿」を商品名の一部に使用した商品を同社のウェブサイト上で販売していたが、これらは共同の調査後に削除された」という。

確かに、無印の添付のURLから「新疆綿」は検索できなくなっている。

www.bloomberg.co.jp

 

=2021.4.15追記=

  良品計画が、 いわゆる「新疆綿」について、「無印良品の綿とサプライチェーンについて」との公式な声明を出した。 

ryohin-keikaku.jp

 ..... 新疆地区は新聞等で報道されている通り、中国産の綿の8~9割を占める広大な産地です。

無印良品の綿を栽培する新疆地区の約5,000ヘクタールの農場等については、畑や作業者のプロフィール、人員計画を把握し、栽培スケジュールに合わせて第三者機関を現地に派遣し、昨年も監査を行っていますこれまでの監査において、法令または弊社の行動規範に対する重大な違反は確認しておりません。 (出所:良品計画

一方、4月14日のテレビ東京 WBSは「新疆綿」で問題を提起する。

先ほど無印良品の店舗で買ってきた、同じ半袖シャツなのですが、タグをよくみると、違いがあるんです。

一方には、「新疆綿」と書かれ、もう一方には、その記載が外されています。グローバルでビジネスを展開する衣料品ブランドに、いったい、何が起きているのでしょうか。 (出所:テレビ東京

 現場を確認すれば、そこにある事実を知ることができる。良品計画も現地に社員を派遣しているという。商品開発者が実際に産地に足を運び、種まきや収穫体験を通じて農家の方々と交流してきたという。

 ただそれは現地で営まれる日々の一部でしかしない。そこに暮らす人々の毎日の中に現実がある。それを第三者が確認することで「真実」が生まれ伝わる。

 現地の人々一人ひとりはどんな感情を抱き、その現実を受け入れているのだろうか。

 良品計画は、オーガニックコットンという定義に人権問題を含めているようだ。現場確認で知り得た真実で判断する。それはそれで正しいことだというしかないのだろう。

 このまま調達を未来永劫続けていくのだろうか。もしかしたら、徐々に、ゆっくりゆっくりとその量を減らしていくのかもしれない、そう感じる。

 

 「関連文書」 
dsupplying.hatenablog.com

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www.zakzak.co.jp

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「参考文書」

www.nikkei.com