ファーストリテイリングが決算を発表し、決算発表会見が開催されたといいます。
毎日新聞によると、岡崎健グループ上席執行役員最高財務責任者(CFO)がその会見で「原材料に至るまで自分たちが直接確認できるものを使っていくべきだというのが世の中の要請だと認識している。課題の洗い出しを改めて進めている状況だ」と述べたといいます。
中国新疆ウイグル自治区での人権問題への風当たりが国際的に強まり、今年1月、ユニクロの男性用シャツが米国ロサンゼルス港で、強制労働に関しての輸入禁止措置に違反したとして押収されたことを受けての措置ということでしょうか。
取引先の工場だけでなく、原材料の調達先でも強制労働などの人権侵害がないことを自社でより詳しく把握できる仕組みの構築を目指す。 (出所:毎日新聞)
バイデン政権になった米国は前の政権より、人権を重視する姿勢を明確にしているといいます。これを受けてのことか、企業は人権順守の対応を進めているとJETROが報告しています。
例えば、スポーツ用品大手アディダスは、新疆ウイグル自治区との綿糸取引を行わないようサプライヤーに勧告し、同自治区政府を介した人材雇用を禁止した。
ナイキも、サプライヤーに該当取引があるかの確認を実施するほか、同自治区の製糸工場を利用する衣料品ギャップは取引先と協議しつつ対策を検討。
飲料大手コカ・コーラはサプライヤーに法令順守を求め、第三者機関の監査を活用する。
MUJIブランドを展開する良品計画は、新疆ウイグル自治区に由来する綿製品の対米輸出を中止。インドやトルコ、米国から綿を調達すると米メディアの取材に回答している。 (出所:JETRO)
米税関当局は、税関手続きにおける効果的な文書提示を勧告しています。新疆ウイグル自治区からの綿・トマト(派生製品を含む)に関して、強制労働に依拠しないとの証明に必要な書類を例示しているといいます。
強制労働に関わるILO指標を参考に挙げつつ、調査の検討材料として、第三者機関による監査報告書やサプライチェーンを図示した書類、従業員の生活・労働環境を示す写真なども有効になり得ると説明している。
通商弁護士によると、書類の翻訳(英語化)や正確性(正式な文書であるとの証明)、整理(大量の文書提出の回避)も重要とのこと。(出所:JETRO)
【綿製品】
- 綿糸メーカーおよび綿花の供給源からの宣誓書(綿花の調達源を特定するもの)
- 綿糸および綿花に関する購入注文書類やインボイス、支払い証明
- 綿糸に関わる生産工程リストや生産記録〔綿(生産者)を特定する記録を含む〕
- 綿生産者から綿糸メーカーへの輸送書類
- 綿の収穫を行った従業員に関する勤務表や給与証明など、綿糸生産者に販売される綿に関わる工程報告
(出所:JETRO)
ファーストリテイリングの準備はどこまで進んだのでしょうか。
準備には途轍もなく労力を要するのだろうけれども、一度しくみができれば、それを正しく運用することは準備ほど手間ではないはずです。そうはいっても、正しく運用されている否かを定期的な監査で確認することは求められるのだろうけれども。
たとえ、中国ウイグルでの綿調達を止め、調達先を他地域に振り向けたところで、製品の最終工程が中国のままであれば、その嫌疑はいつまでも残るのかもしれません。結局、すべての綿調達において、その健全性の証明を求められることになるのかもしれません。それが、真に「トレーサビリティ」を意味することでもあるのでしょう。
2021.7.18 追記
米上院で14日、中国の新疆ウイグル自治区から全ての産品輸入を原則的に禁止する法案を全会一致で可決したといいます。ブルームバーグによると、輸入するには生産過程で強制労働が行われていないことを立証する必要があるそうです。
米税関・国境警備局(CBP)局長が例外として認めない限り、全ての産品が強制労働の下で作られていると見なす「反証を許す推定」規定も盛り込まれた。
共和党のマルコ・ルビオ上院議員は「この法案が下院を通過し、大統領が署名すれば、強制労働で生産された製品が米国のサプライチェーンに入り込むのを防ぐ手段が増えることになる」と声明でコメントした。 (出所:ブルームバーグ)
全会一致での可決ということは、下院でも可決、法案は成立することになるのでしょうか。
建前と本音があるのかもしれませんが、米国の強硬姿勢が少々気になります。
「関連文書」