10年近く前のことだが、アップルのiPhoneなどを生産するフォックスコンの深圳工場で自殺者が続発したり、その後、煙台工場では児童労働があったと問題になったことがあった。iPhoneが急激に売れはじめていた頃、そればかり目が奪われいた。そんな時のこうした問題はショッキングな出来事だった。当時はまだ人権問題としてあまり語られることはなかった。
何か問題が生じれば、その問題の対策が求められる。注目される企業であれば、なおさらだ。問題をなおざりにはできない。それでも、この種の問題はなくならない。
リチウムイオン電池に使われるコバルトが児童労働によって採掘されていると、アップルが提訴されることもおきた。そうした背景も理由になったのだろうか、アップルは自分たちでリサイクルの研究開発を始め、それを実用化していった。
アップルは主要な取引先だった。アップルで問題が起きれば、それは自分たちの問題とみておいたほうがいい。何時その対策を求められるかわからない。
フォックスコン深圳工場での問題の直後、トップダウンで、その工場である商品を生産することが決まった。アップル向けの製品ではなかったが、あまりいい感じはしなかった。生産が始める前、その工場に打ち合わせに行くことになった。ニュースを聞くとどんな劣悪な環境なのだろうかと想像してしまう。現地を行ってみれば、想像に反して、全くもって普通の工場だった。環境が悪い工場ならいくらでもある。ただ工員たちが暮らす寮を見る機会はなかった。何か対策があったのだろう。その後、同じようことが再発することはなかった。
当時の幹部はこうしたことに無関心、無頓着で、業績ばかりが気にしていた。そのプロジェクトはあまり長続きしなかった。
経済産業省と外務省が連名で、上場企業など約2700社を対象に人権問題への対応状況を把握する調査を始めたという。
ビジネスと人権~責任あるバリューチェーンに向けて~ (METI/経済産業省)
JIJI.COMによれば、強制労働が国際問題化しており、対応が不十分と見なされれば日本製は海外市場から締め出され企業の競争力低下が避けられないという。
強制労働などを排除し、供給網での人権侵害リスクを予防するため、対策実施と情報開示を義務付ける「人権デューデリジェンス法」を制定する動きが欧米を中心に広がっている。
日本は先進7カ国(G7)で法規制の準備が進んでいない唯一の国で、取引や投資などで支障が生じる恐れがある。企業側には「法整備を求める声がある」(経産省幹部)という。 (出所:JIJI.COM)
「人権デューデリジェンス」、事業活動における人権侵害リスクを把握し、その予防策を講じること。サプライチェーン上での強制労働や児童労働の排除も含まれる。
企業活動における人権尊重は、「ESG投資」Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)のうち、「社会」に区分される重要な要素の一つとされるようになっている。
もう10年以上前のことだが、勤務地が変わり、たまたま入ったスタバの雰囲気がとてもよくて通うにようになった。バリスタたちが明るく楽しそうに働いているところに魅了されたのかもしれない。
2年くらいしてからまた勤務地が変わった。車通勤になった。街道沿いのスタバを見つけ、毎朝立ち寄ることになった。その店もとても雰囲気がよかった。その前に通った店と同じように、バリスタが楽しそうに働いていた。
あるとき、バリスタから1冊の本を進められた。当時CEOだったハワード・シュルツ著作の「スターバックス再生物語」。スタバ誕生の話など興味をもって読んだ。
この本で、ハワードの従業員やバイトに対する姿勢を知り、それがお店の雰囲気になっていることがわかった。また、スタバのフェアトレード、倫理的な調達の取り組みについても知ることができた。
本がきっかけでバリスタたちとも気軽にそのことについても話するようになった。マイボトルを勧められ、使い捨てカップを使わなくなった。そのときは環境とか脱プラではなく、限りある資源を大切にしようとの気持ちが強かった。思い起こせば、それら10年以上もの時間が経過している。
なぜ、もっと早く動くことができないのだろうか。海外ばかりではない、国内にも外国人技能実習制度や入管問題など、人権にかかわるような問題がなおざりにされている。