Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【環境とお金】年金の投資先は? 「50年先の未来をつくる投資」

  

気候変動問題に本気で取り組む気だ

 日本経済新聞の記事を読んで、少しばかり驚いた。メディアの誇張表現はあるかもしれないが、気候変動対策に注目が集まり、企業を取り巻く環境が変化しつつある中で、企業の財務トップが資産運用会社の書簡を読んで、はじめて危機感を募らせたのだろうか。 

エーザイ最高財務責任者CFO)の柳良平氏は1月半ば、世界最大の米運用会社ブラックロックが出した書簡を見て驚いた

「2020年半ばまでに独自に銘柄を選ぶアクティブ運用で、火力発電に使う一般炭事業の売上高の多い企業を除く」「(気候変動などの)情報開示が著しく不十分な企業には反対票を投じる」と踏み込んだからだ。(出所:日本経済新聞

 

  米ブラックロックは、世界最大の資産運用会社で、約7兆ドル(約770兆円)ある資産の3分の2余りを指数連動商品で保有するという。

 ブラックロック最高経営責任者(CEO)のラリー・フィンク氏が、

「気候変動は企業の長期見通しを決定付ける要素になった」、

「意識は急速に変化している。金融の形が根本から変わる局面は、すぐそこに来ている

と宣告したとブルームバーグが伝えた。

 

フィンク氏が14日明らかにした変更には、ポートフォリオ構成やリスク管理においてサステナビリティを必須要素とすることや、サステナビリティに関して高いリスクをもたらす投資からの撤退、化石燃料を選別する新たな投資商品の開発、投資スチュワードシップにおけるサステナビリティーと透明性へのコミットメント強化が含まれる。(出所:ブルームバーグ

 

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(写真出所:World Economic Forum | Flickr

www.bloomberg.co.jp

 

 ラリー・フィンク氏も参加した世界経済フォーラ ダボス会議では、気候変動関連リスクが最大のテーマになった。

 

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 「我々がESGに真剣なのは、50年先を見据えてリターンを追求しているからだ」

政府系ファンドのノルウェー政府年金基金の運用を担う、ノルウェー銀行インベストメント・マネジメントの最高経営責任者(CEO)のイングベ・スリングスタッドの言葉を日本経済新聞は紹介する。

 

 50年先、2070年の世界はどうなっているのだろうか。

 SDGsが目指す2030年よりも先の世界では、気候変動は終息しているだろうか。もっと平和で住みよい世界になっているのだろうか。

 

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 (写真出所:World Economic Forum | Flickr

 

GPIF 年金積立金管理運用独立行政法人 ESG投資の狙い

 日本の公的年金のうち、厚生年金国民年金の積立金の管理・運用を行っている、GPIF 年金積立金管理運用独立行政法人の高橋理事長も記者懇談会で、ESG投資の狙いを強調したと日本経済新聞は伝える。

 

「GPIFは世界で5000銘柄以上を保有する超長期の投資家だ。社会全体がうまくいかないと、持続可能なリターンを得られない」 

「ESGを一時的なブームにしないためにも努力が必要だ」

(出所:日本経済新聞

 

 国内企業向けのメッセージかもしれないが、もう少し強い口調で企業に変革を求めてもよいのではなかろうか。 

 

  そのGPIFは、世界最大の年金基金でもある。 長期投資としての基本ポートフォリオを「国内債券」「国内株式」「外国債券」「外国株式」で構成する。

 

グラフ:国内債券(35%)、国内株式(25%)、外国債券(15%)、外国株式(25%)

(資料出所: 年金積立金管理運用独立行政法人

 

 日本経済新聞は、「国内のESG投資の旗振り役として、15年にPRIに署名したのを皮切りに、国内外の株式でESG指数を選定して運用額を拡大、環境債への投資など矢継ぎ早に新機軸を打ち出す」とGPIFの投資状況を伝える。

 

 GPIFは、前出「ブラックロック」でも多額の資産運用を行っている。

 

GPIFは株式を直接保有せず、外部の運用会社を通じて投資しているため、GPIFから運用を受託する金融機関にESGを考慮して投資するよう求めています。とくに運用機関が重大なESG課題だと認識する項目については、投資先企業と積極的に「建設的な対話」(エンゲージメント)を行うよう促しています(詳しくは「GPIFのスチュワードシップ活動」「スチュワードシップ活動原則」参照)

GPIFは指数会社に組入銘柄の採用基準を公開するよう要請しており、それが企業側の情報開示を促し、ひいては国内外の株式市場全体の価値向上につながるような底上げ効果を期待しています。(出所:年金積立金管理運用独立行政法人

  

www.nikkei.com

 

 

 「日本のESG投資の機運を高める絶好の場。どう盛り上げるか」

 「ニッセイアセットマネジメントの運用企画部長の海野基は、10月に日本で初めて開かれるPRI(責任投資原則)の年次総会に向けて奔走する。英ロンドンの事務局本部と頻繁にテレビ会議を開き、登壇者の推薦など準備を急ぐ」と日本経済新聞は報じる。

 

 少しばかりアクションの遅さが気になる。

 

ESG投資とは

 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉がESG。

 

  投資するために企業の価値を測る材料として、これまではキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報が主に使われてきました。それに加え、非財務情報であるESG要素を考慮する投資を「ESG投資」というとGPIFは説明する。

 

 日本経済新聞は、「企業は気候変動リスクをはじめとしたESGに関する情報開示を急ぐ必要がある。特に、従業員への対応やデータ保護、企業倫理などESG全般の情報開示をすることが求められる」と解説する。

 

(資料出所: 年金積立金管理運用独立行政法人

 

  私たちの年金を運用する巨大機関投資家でもあるGPIFが動いていることもあるからだろうか、ヘッジファンドも「ESG」を気にするようになっているようだ。

 

ESGは単なる道義的な性質のものではなくなった

フランスのヘッジファンド、CFMのディレクターの内山氏の言葉を日本経済新聞は伝える。

 

 国内企業は、「SDGs」や「ESG」を、未だ、道義的なもの、社会的責任としてとらえていないだろうか。

 

 投資の世界では、50年先の未来を創るため、企業に「気候変動」対策や解決を求めている。私たちの年金はGPIFを介して世界最大の運用会社「ブラックロック」でも運用されている。そのブラックロックは、気候変動対策やサステナビリティを重要視するという。それらに対応できない企業には、お金が回ってこなくなるということだ。

 

 日本企業の環境関連技術の中には世界に誇れるものが多数ある。それらを使って、気候変動を解決するビジネスを作ることを求められている。日本企業ならできるはずである。

 気候変動、そして、SDGsを”ジブンゴト”にすることだ。

  

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「関連文書」

www.nikkei.com

dsupplying.hatenablog.com

 

www.newsweekjapan.jp

 

「参考文書」

www.gpif.go.jp