Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

自治体電力が目指していくべき「地域マイクログリッド」とその活用

 

 「気候変動」の緩和を考えると、地球温暖化の主要因のひとつであるCO2を大量に排出してきた化石燃料系企業の動向が気になる。今ある逆風下で、こうした企業が存続できるのかと考えたりする。一方で、足元では彼らがエネルギー供給をしてくれないと私たちの生活は成り立たない。矛盾を感じることなだけに、どうしても気になってしまう。

 

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東京ガスが始めた分散型エネルギーシステム

 東京ガスがまた新たな取り組みを始めたようだ。栃木県内の工業団地で、工場などの事業所間連携によって、大幅な省エネの実現を目指す「清原工業団地スマエネ事業」を開始したと発表した。

 高効率ガスコージェネレーションシステム(CGS)と太陽光発電システムで発電し、その電力を自営線で送電する。発電時の廃熱は蒸気や温水に変換して熱導管で供給、共同利用する。この分散型のエネルギーシステムを、清原工業団地内のカルビーキヤノン久光製薬の3社が共同で利用、エネルギーを地産地消するという。

 このシステム導入で、約20%のCO2の排出量削減と省エネを実現、原油換算で約▲11,400kL/年、CO2削減量約▲23,000t/年になるという。

電力と熱(蒸気・温水)の供給概要図

 

分散型電源の歴史 はじまりはエジソンの直流送電システム

 100年以上前、エジソンが白熱灯を実用化させたことで、電気の利用が始まった。エジソンの偉大な業績と言われるのは、白熱灯自体ではなく、発送電システムを作ったことにあると言われる。

 この時、エジソンが作ったシステムは分散型の直流送電システムであった。ただ、この当時では問題も多く、やがて現在の発送電システムである、大規模に発電し大規模に交流で送電するシステムにとって代わっていく。経済性、効率性を追求した結果である。

 エジソンは商才に長け過ぎていたのかもしれない。分散型であれば、発電機を大量に売ることもできるという野心が強過ぎたのかもしれない。

 発電方法が、まだ火力と水力しかない時代のこと、効率性を重視すれば、分散型電源が姿を消していったのはしかたがなかったのかもしれない。

 自然エネルギーを使用する太陽光発電が登場したことで、再び分散型電源に注目が集まるようになった。燃料無しで発電ができる簡便さと設置しやすさが理由であろう。

 

 

 

国が支援する分散型電源とその課題  

 国も分散型電源の活用に注力するようになってきている。分散型電源「地域マイクログリッド」への支援制度を設けるまでになってきた。

 

 資源エネルギー庁は、『再生可能エネルギーの導入によって、大手電力会社による「大規模電源」と需要地を系統でつなぐ従来の電力システムから「分散型電源を柔軟に活用する新たな電力システム」へと生まれ変わりつつある』という。

 

 再生可能エネルギーでの発電価格が低下し、卒FIT電源など低価格に調達できる再生可能エネルギーの存在するようになったことで、需要と供給が一体となったモデルなどが成立しやすくなったことも背景にあるのであろうか。
  一方で、課題指摘もする。『単に小さい電源を増やしていけば良いわけではなく、系統の活用も含めたシステム全体の効率性の追求と、地域経済・産業の活性化や災害時・緊急時における近隣地域でのエネルギー供給の確保(レジリエンス)をバランスさせる必要がある』という。

 

地域分散型電源活用モデルの確立に向けた支援制度について(資源エネルギー庁)

 

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これからの自治体電力

  2016年の電力自由化により、多数の新電力や自治体電力が立ち上がった。これによって、低額な電気料金を選べることになったメリットはあるものの、今ある「気候変動」という課題を前にすれば、多少整理が必要になってきているのかもしれない。

 

 

 

 その中にあって、自治体電力には、気候変動に対する「緩和」と「適応」が求められているのではなかろうか。

 立ち上がった当初は、地域での雇用創出や安価電力による企業誘致などを目的にするのが自治体電力であったなのかもしれない。その後の新電力を取り巻く環境の変化からすれば、自治体電力に求められる役割が変わってきたのではなかろうか。

 気候変動の「緩和」につなげる地域の特色を活かした再生可能エネルギーの普及、「適応」策としての、公共施設や避難指定場所の再エネ接続と非常用バックアップ電源となる蓄電池の整備、災害時の断水防止となる上水道の非常用電源などなど。

 太陽光発電風力発電ばかりでなく、マイクロ水力やバイオマス発電など再生可能エネルギーの発電方法も多様化、設備開発が進んだおかげ、地域の特色に合わせての選択も可能になってきている。

 これに加え、東京ガスの事例のようなマイクログリッドも存在し始めている。

 売電契約方法が多様化し、需要と供給を一致させるインバランス管理方法の発達、VPP(バーチャル・パワー・プラント)で、点在する小規模な発電設備と蓄電池を一括して制御することも可能になってきた。

 

 従来の大手電力メーカが一括で供給管理する大規模電源から脱却する環境が整いつつあるようにもみえる。こうした環境を考えれば、電力の活用は国策から地方へ権限移譲されてもよいのではとも考えたりする。また、そうすることで、より安価な再生可能エネルギーを地域住民に提供することはできないであろうか。

 

 地域で再生可能エネルギーを中心にした電力グリッドが形成でき、拡大すれば、既存の大型石炭火力を止めることもできるのではないであろうか。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

power-shift.orgwww.nikkan.co.jp

www.nikkei.com

  

「参考文書」

www.tokyo-gas.co.jp