タイムラインには多くのニュースが流れる。ブルームバーグの「 BP、2050年までに二酸化炭素排出ゼロへ-新CEOが環境対策発表」というニュースに目がとまった。
「ついに、石油メジャーがCO2排出ゼロに”コミット”したのか」と思った。
公約と呼ぶべきものであろうか。欧米企業は適宜、こうした類の発表を行なう。話題性があり、ニュースになりやすく、広報政策の一環なのか。それとも、公約を出すことが企業の責務になっているのであろうか。
日本経済新聞は 「英BP、温暖化ガス「50年までに実質ゼロ」 新CEO宣言」と伝えた。
BPとは、ブリティッシュ・ペトロリアム( British Petroleum )の略で、世界屈指の石油メジャー。石油や天然ガスの探鉱から採掘、輸送(パイプライン含む)、石油精製、小売まで一括で行う。天然ガスの生産とそれを利用した発電事業、再生可能エネルギーとしての太陽光発電・風力発電、石油化学製品の製造・販売も手がけている(参考:Wikipedia)。
日本経済新聞にはBPのCEOに就任したバーナード・ルーニー氏のコメントがある。
「石油・ガス生産は徐々に減っていく」との見通しを示し、低炭素のエネルギー会社につくり直すと宣言した。
この宣言は本気なのか、それが気になった。
単なる意見表明なのか、それとも責任をともなった公表なのか。
ブルームバーグの英語版を確認してみた。
BP Sets Bold Agenda for Big Oil With Plan to Eliminate CO2(Bloomberg)
『Pledges net-zero carbon from its own operations and production』
Pledgeということであれば、責任をともなった発言、本気で「石油を減らしていく」とみていいのであろう。
「サスティナビリティ」が世界のメガトレンドになったとは言え、石油を牛耳ってきた石油メジャーがこうした公約、誓約を出すことに驚く。
「我々はエネルギー会社であり続けるが、全く違った形になる」
単なる石油メジャーからエネルギー会社へ。自ら存在意義を定義し直すということであろうか。エネルギーは誰もが必要するものであり、時代に合わせ必要な最適なエネルギーを届けるということであれば、誰もが受け入れは可能になる。
BPはCO2換算で年4億1500万トンという膨大な量の温室効果ガスを排出しているという。温室効果ガス算出の国際基準スコープ3では、供給網全体が対象になる。BPはこの算出基準で、販売する全製品の排出量を半減させる目標を掲げ、2050年までには「実質ゼロ」にするという。
ロイターは、「排出量削減目標をどのように達成するかについて、具体的な計画は明らかにしていない」と伝え、「考えられる選択肢は 超過達成したメーカーから排出枠(クレジット)を購入することや、CO2回収・貯留技術への投資だ」と報じる。
欧州石油メジャーのひとつ、ロイヤル・ダッチ・シェルも同様な基準で、温室効果ガスの排出量を50年までに半減させる目標を掲げているが、BPはそれより一歩先んじたことになる。
「投資家の厳しい視線に押され、欧州の石油大手は気候変動対策の目標を次々打ち出している」と日本経済新聞が伝えるが、社会や投資家からの厳しい圧力にさらされている欧州の石油メジャーはその圧力を受け入れての行動との印象を受ける。
「BPと世界が直面する大きな課題は気候変動だ」と語った。企業としての長期的な存続を危ぶむ見方には「非常に大きな機会だとみている」と反論し、低炭素エネルギー分野への積極的な投資で事業構造を転換していく構えを強調した。(出所:日本経済新聞)
世界が変わり始めていると、この報道から感じる。米系石油メジャーの動きは鈍いが、化石燃料の時代が終焉に向かい始めたということなのであろうか。そうであれば、経済構造も確実に変化していくかもしれない。他の産業への影響も甚大になる。
アパレルもその影響を免れることはできないだろう。ポリエステルやナイロンなどの合成繊維は石油から作られているのだから。
ユニクロの「サスティナビリティ」の動きをWWD Japanが伝える。
ユニクロは、温室効果ガス排出量削減目標SBT(Science-Based Targets)を2年以内に策定しようとしているという。他の産業に比べ、その取り組みは遅い。
スコープ1、スコープ2といわれるオフィスや店舗など、直接的にオペレーションするところの省エネルギー化は着々と推進している。中国・深センの店舗を皮切りに再生可能エネルギーを利用する店舗の開発も進んでいる。
ただ、アパレルの場合、スコープ3の原材料工場や物流などのサプライチェーンの部分で温室効果ガスの排出が多い。野心的なストラテジーが必要になるが、実態調査を進め、グローバル企業としてふさわしく社会に貢献できるような計画をまとめようとしている。再生エネルギーの導入や、バージン素材よりも地球環境負荷やCO2排出量が少ないリサイクル素材による循環型の商品開発などにも取り組んでいく。(出所:WWD Japan)
これから益々、環境負荷の高い産業への投資家圧力は強まっていくのだろう。
温室効果ガス削減のアクションも必要なことではあるが、脱石油素材の模索も早急に必要になってくるということでもあろう。
環境保護団体グリーンピースの石油アドバイザー、チャーリー・クロニック氏は、BPが目標を達成できるかについて懐疑的な見方を示し、「使うこともない新たな石油・ガスの採掘に多額の資金を浪費するのをいつやめるのか」と疑問を呈した。(出所:ロイター)
BPは9月には詳細な計画を公表するという。
国内石炭産業との違いがきわ立つ。分断、対立を助長するような言動ではなく、説明責任が問われている。曖昧な態度が許されないということでもあろう。
「参考文書」