Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【プラごみの現在地】あのワタミが始めた弁当容器の「ケミカルリサイクル」

 

90万トン、膨大な量の廃プラがまだ輸出されている。

昨年日本から輸出された廃プラの量をJETRO日本貿易振興会が公表した。2014年以降減少を続け、2004年以来100万トンを切ったというが、アメリカの廃プラ輸出量が減ったことで、世界最大の廃プラ輸出国になっている。

中国の輸入規制後は、マレーシアがその受け入れ先となった。その量は26万トンあまり。2018年比で19%増加している。

 

滞る国内の廃プラ処理

国内では、自治体や産業廃棄物処理業者で保管する廃プラの量が高止まりしているという。

「プラスチックごみの輸出先を新たに探すという視点では対応が難しくなりつつある。排出量の削減や代替品の開発などプラスチックへの発想を抜本的に変える必要がある」

JETROの指摘をNHKが紹介する。

 

東京都環境公社は、都内の廃プラ処理業者の情報をもとに廃プラ市場の現状をまとめている。 

 

  • 中国の輸入規制後、中国に輸出するためにペレット化する国内企業が増えている。当社も従来ペレット化せずに廃プラを輸出していたと思われる国内企業からペレット化について相談を受けたことがある。
  • 国内の廃プラ問題改善には、ある程度品質が悪いリサイクル品も市場で取引されること、もしく はサーマルリサイクルへの利用量を増加させることが可能性として残るのではないか。
  • 廃プラを購入し、ペレット化して再生樹脂として販売しているが、購入・販売ともに価格については中国輸入規制の影響の実感はない。業界においては取り合いが起こっていることは認識している

(出所:東京都環境公社

 

処理業者の声に、廃プラリサイクルの現状や課題が見える。

「廃プラ処理の問い合わせは依然として来ている。 現在も、廃プラ処理の状況はタイトである。この時期は予算がある排出事業者からの引き合いが多い」

という 破砕・選別処理(マテリアルリサイクル)を行う業者の声もあり、やはり輸出減の影響があるようだ。

 「再生材のみ使用した品目よりも、同価格であればバージン材のみ利用した品目を優先的に購入するのではないか」と消費者の理解を求める声や、飲料メーカーなど容器包装リサイクル法上の特定事業者が、ペットボトルやびん・かん以外の廃プラをきっちり再商品化するためにコストをかけず、対応していないことを指摘する業者もある。

 

 容リ法特定事業者が、まずはリサイクル品使用を促していくべきであろう。私たち消費者にリサイクル品利用を理解してもらうための積極的な広報行動も求められるのだろう。

 

 

 

ワタミ 弁当の宅配で容器回収してリサイクル

あのワタミも環境活動に熱心に取り組み、ビジネスの中でリサイクル展開を進める。

高齢者向け日替わり夕食宅配を行う「ワタミの宅食」で使われる弁当容器を、バイオマス素材を含んだプラスチック製容器に変更したのに加え、容器を回収してリサイクルするしくみを作り、全国展開を進めている。

ワタミによれば、これまでに毎日約51,000食分の容器を回収し、2022年3月までに全国展開することを目標にしているという。これにより、年間約6,100万食、約1,830tバイオマスプラスチック容器のリサイクルを見込んでいるという。 

 

この容器回収のしくみには、環境配慮型容器の製造、供給で伊藤忠プラスチックス福助工業、弁当空容器の回収にはムロオ、空容器の回収と圧縮でミツヤ工業、ケミカルリサイクルに日本製鉄などが参加、今まで廃棄されていた弁当容器を資源化、ケミカルリサイクルしている。

 

「ワタミの宅食」容器のリサイクルループ拡大
ケミカルリサイクルを中四国に展開、プラごみ削減と再資源化へ (ワタミ株式会社)

 

ケミカルリサイクルとは

 ケミカルリサイクル(化学的リサイクル)とは、廃プラスチック類を熱などを利用して化学的に分解し、石油原料等を得て製品原料として再利用する。熱分解油、 高炉還元剤としての利用、コークス炉化学原料、合成ガスなどがこれにあたる。

 

 現在は国内ではあまりケミカルリサイクルの利用は進んでいないというが、日本製鉄はケミカルリサイクルを推進する企業のひとつ。

 廃プラをコークス炉の原料のひとつとして、その工程によって生じるガスや炭化水素油、コークスをグループ内で資源として再循環させている。

 

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(資料出所:日本製鉄Webページ「日本製鉄の環境に対する取り組み」

 

 ケミカルリサイクルは黎明期に、原料となる廃プラの安定調達や確保、採算性の問題により多くの企業が撤退したが、国内に滞留する廃プラの現状を考えれば、利用促進していくべきリサイクル方法なのかもしれない。

 ケミカルリサイクルは、利用できる廃プラの許容範囲が広く、日本製鉄の事例からしてもわかるように、生成される再生材は色々な用途に利用できる。

 

 ワタミのつくったリサイクルループの事例をベストプラクティスとして、早急に横展開して必要があるのかもしれない。

 

 

 

ワタミの食品残渣を使った食品リサイクル

 ワタミは弁当容器の「ケミカルリサイクル」の他にも、食品残渣を利用した「食品リサイクル・ループ」も構築している。

 

ワタミ宅食」の弁当・惣菜を製造する「ワタミ手づくり厨房」中京センターで生じた調理残渣や野菜くずを飼料化し、養鶏生産者がこの飼料を餌として与え育てた鶏の卵からマヨネーズを作り、再び「ワタミ手づくり厨房」中京センターで弁当・惣菜に使用するようにしている。

 

効率的にリサイクルを進めていくために

ワタミの事例からも明らかのように、リサイクルを回していくためには回収業者や中間処理業者が重要な機能になっている。また、容器を利用し、商品の一部として販売するワタミ(業者)の積極的な関与があって初めて、リサイクルの仕組みが完成する。

 

ワタミは機能別に分かれる業界を串刺しリサイクルのしくみを作った。

この仕組みをベースにして、同業他社の廃プラ処理に関与、連携、事業化はできないのだろうか。仕組み構築に手間取る他社の手助けにもなるであろうし、廃プラの適正処理も加速していくのではなかろうか。

 

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