流行色の話を少しばかり。
とある商品の外装に使われるプラスチックスに新色を採用しようとの話になった。
色見本として、パントーンやDICがあることは知っていたが、その色見本にない新色を作ろうとすると極めて難しい作業だった。
色をデザインする人から、どんな色にしたいか説明してくれと言われた。形容詞とかででたっぷり修飾して説明しなければならないが、とてもじゃないができないと思った。
例えば、黒、ピアノブラックみたい黒との表現では全くダメで、「宇宙... 神秘的で....○○な黒」。
そんなセンスはないので、色の専門家と話をして、新色を提案頂くことにした。依頼したのは、染料から始まった商社の色の専門部署、分厚い提案書を頂き、その中からいくつかを選び、試作して実際の色を確認して商品化した。
その時はじめて流行色を考える機関があることを知った。
一般社団法人日本流行色協会のページを確認すると、トレンドカラーをセットするプロセスの説明がある。
2020年の春夏の流行色情報も公開されている。レディスウェアカラーのトレンドは、「“Future Esthesia” フューチャー・エセーシア(未来の感覚)」で、5つのカラーグループが提案されている。
“Future Esthesia” フューチャー・エセーシア(未来の感覚)
雄大な自然をベースに、これらの美しさや心地よさを表現
全体テーマ名は、「フューチャー・エセーシア」。これは未来の感覚という意味である。今までも、これからも、私たちと共にある雄大な自然をイメージベースに、これからの美しい色、心地よさを表現した。未来へ向けて発展するテクノロジーをうまく活用し、次世代に渡す理想を考えていきたい。今シーズンは色に注目し、各グループで色相を意識した選定をしている。 (出所:一般社団法人日本流行色協会)
そのうちのひとつに、「Upcycle アップサイクル(リサイクルによって創られる新しい価値)」というのがある。実際の色は、JAFCA(一般社団法人日本流行色協会)のページで確認できます。
リサイクルは大きな問題である。また、原料としてリサイクルするだけではなく、違った形で活用したり、新しい価値をもたせたりといった使い方をアップサイクルという。色褪せたプラスチックの色、再生素材でつくる鮮やかさと鈍さをあわせ持つ色、質感と暖かみがあるホワイト(出所:一般社団法人日本流行色協会)
世相も取り込んで、流行色は考え出されていく。しかし、最終的に選ぶの消費者、何が最終的なトレンドになったかは消費者の選択できまっていく。
日本製とエシカルにこだわるバッグブランド「FUMIKODA」が、「エシカルファッションとSDGs」に関する意識調査を実施し、調査結果を公表した。対象は20歳以上の男女全国956人。
【調査結果サマリー】
・「エシカル」「スローファッション」「サステナブル」の認知度は20%前後と低め。
・多少のプライスアップでも環境に配慮した商品であれば購入する68.5%。
・50.6%がファッションアイテムを購入する際は、エシカルな商品を選ぶ傾向にある。
・「SDGs」の認知度は15.7%。
・世界を変える17の目標の中での日本の課題トップ3は、「3.すべての人に健康と福祉を」「8.働きがいも経済成長も」「1.貧困をなくそう」。(出所:PR Times「FUMIKODA」)
マーケティングの世界では、イノベーション理論というのがあるらしい。社会学者のエヴェリット・ロジャースが『Diffusion of Innovation』で提唱したことがもとになっている。
(画像出所:Wikipedia)
「FUMIKODA」の調査結果からすると、「アーリーアドプター」と「アーリーマジョリティ」の中間あたりということであろうか。このまま、認知は進むのだろうか。
「アパレルの余剰在庫はどうして生まれるの?」という記事が気になった。
ファッション業界にある人も、問題視される「衣料品の大量廃棄」について考え、意見を発信する。
最適解は何なのか?
現状、最適解は無いと考えています。産業構造の問題なので、生産量を抑えたところで生地や資材、糸は余ります。暫定的には、アパレル各社は規模を追わず利益率重視に徐々にシフトし、作った物をしっかり売り切るという当たり前の事が最重要課題でしょう。(出所:スタイルイット)
筆者はエシカル・サステナビリティを推進する人間ではありません。
ユーザーが低単価の商品を求めるのは止められるものではありませんし、プレタポルテ(既製服)という概念が生まれた時から、大量生産に向かうのは既定路線だとも思っています。ただ、間違った認識のまま自己満足の正義を振りかざしたところで、誰の幸せにも繋がらないのは一業界人として見たくはありません。声の大きい人が問題提起する事は、多くの人が考えるきっかけになる良い機会です。ですが、「きっかけ」と「煽動」は全く違うものです。筆者の書いている内容が全て正しいとも言えませんが、どうかこれを読んだ方々が、ただただファストファッションを糾弾するのではなく、建設的な議論を目指してくれる事を切に願います。(出所:スタイルイット)
一方で、こんな意見もある。スタイルイットの記事に対する意見のようだ。
正解なんていないのが「社会課題」だから、たぶんピンポイントで解決なんかできない。
— 💫🌹じゃすCEO✨服を捨てないシェアエコ古着👗 (@JasK_official) 2020年3月4日
でも、誰かが話題にすることによってそれに目が向く流れが出来ていることは良い事なんだと思う。
間違った認識よりも、「無視」の方が怖い。解決したいという思いの表明はやめちゃダメだよね。と自分用メモ。 https://t.co/JfBCxsvGLz
Twitterを投稿した人がいうように正解はないように思う。私たち消費者の行動によってしか決まらない。
SDGsが国連で採択され、また、EUでサーキュラー・エコノミー・パッケージが採択されてから5年あまりの時間が経過した。こうしたことを契機に、イノベーターたちが変化をしかけているのかもしれない。
いつの世も、一定の形でとどまるものはない。
自然の摂理なのだから。
かつて人々の移動手段は馬車であった。自動車が登場した時、人々や馬車馬を驚かせるとして取り締まりの対象にもなったこともあったとどこかの本に書いてあった。
自動車メーカの努力もあったのだろうが、人々は自動車を選択し、馬車は消えていった。馬車に関わる産業は選択を迫られた。止めるか、違う産業に変わるか。
新しいことが萌芽し始めると、必ず反対論者がいる。それは影響を受ける人たちだ。様々な意見が飛び交いながら、消費者の声を聞き、いつしか収束していく。
「参考文書」