Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

ポストコロナの循環型社会 「スローファッション」と「サーキュラーエコノミー」

 

 コロナ渦と言われる。ファッション・アパレル業界にとってはまさに災厄なのであろう。老舗アパレルのレナウンの破綻は衝撃だった。どこまで波及するのだろうか。 

 ビフォーコロナからアパレルサプライチェーンの不健全性、非持続性が指摘されていた。

 衣服は生活に欠かせないものだ。その上、彩りと豊かさを与えてくれる。

 しかし、一方で、地球に必要以上に負荷をかけていたり、その製造過程で誰かが犠牲になることでなることで成り立っているとしたら、それは悲しい現実でもある。

 

 

 

 

ファストファッションからスローファッションへ

 共同通信は、ファストファッションを批判するフィンランド・アールト大などの研究チームが発表した内容を紹介する。

「世界の衣料品の生産量が2000年からほぼ倍増する一方、9200万トンの布地や未使用の衣料品が毎年廃棄される」

 業界に大量生産・大量消費のビジネスモデルの抜本的変革を求めるとともに「消費者は衣料品の購入を減らし、長く使う必要がある」と指摘、持続可能な「スローファッション」に立ち戻るよう訴えている。

(出所:共同通信

this.kiji.is

 

「スローファッション」がアフターコロナのキーワードなのであろうか。「ファストファッション」の対義語だ。

 

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ポスト・コロナ 衣料品の回復は遅れる = 東レ

 繊維メーカの東レが業績発表を行った。2020年3月期の繊維事業は、売上高が4期ぶりに減収となるという。

 前期比9.4%減の8831億円、営業利益は同16.7%減の607億円になったとWWD Japanが伝える。

 コロナの影響で今期の業績にも影響が出ると東レは予測しているようだ。

「今年上期で新型コロナの感染拡大はピークアウトし、9月以降から世界経済は回復基調をたどる」との見通しを明らかにする一方で、「衣料品の回復は遅れる」との認識を示しており、21年3月期の繊維事業は売上高が前期比13.2%減の7250億円、事業利益は同37.2%減の370億円の計画になる。 (出所:WWD Japan) 

www.wwdjapan.com

 

 

GO TOキャンペーンとファッション業界のロビイング活動

 そのWWD Japanは、ファッション業界のロビイング活動の様子を「経済産業省がファッション商品の需要振興を検討 「GO TOキャンペーン」内で」という記事で紹介する。 

青田社長(UNITED NUDE 日本法人社長)らが18日に牧原副大臣に提出した書面には、そうした当初からの要望に加えて、ファッション業界特有の悩みといえる「在庫の負担軽減に対する補助案の検討」も追加した。

「在庫の負担軽減策に関しては、今後どのような可能性があるかをこれから検討する。また、コロナショック以前からある枠組みとして、10社以上まとまった形での展示会、販売会、実店舗やEC構築などの販路開拓事業に対し、上限5000万円で予算の3分の2を負担する中小企業庁の『共同・協業販路開拓支援補助金』もある。こうした制度を活用していただくのもいいかもしれない」と三牧課長(経済産業省商務・サービスグループ クールジャパン政策課長)は話す。 (出所:WWD Japan)

www.wwdjapan.com

 

 どの国、どの業界でもロビイング活動を行う。

が、WWD Japanが伝えた内容に少し驚く。コロナに便乗しているだけではと感じる。自分たちが発生させた在庫に対して、国の補助を求めるファッション業界に呆れるし、それを受けて販路開拓事業を紹介する経産省の提案内容にも驚く。 

 ファッション小売業は緊急事態宣言下で休業要請対象に指定されず、補償のない自主的な休業を続けてきた。そうした状況を不安視する声が業界内では非常に強まっているが、「今後は経済状況を見ながら、ファッションなど単価の高い小売業やレストランなどの支援もしっかり行っていきたいと考えている。業界が置かれた現状に対する声や要望などがあれば、われわれに伝えてほしい」と三牧課長は話す。(出所:WWD Japan)

 

経産省の「循環経済ビジョン 2020」が指摘するファッション業界の問題点

 その経産省が、5月22日、「循環経済ビジョン 2020」を発表した。サーキュラーエコノミーにかかわる内容だ。

 その中には、ファッション・アパレル業界のことも触れられる。

 

「繊維は我々の生活に不可欠である一方、世界で廃棄された衣類の 73%が焼却または埋立て処分されていると指摘されている

繊維・アパレル業界にあっては、恒常的にオーバーサプライ傾向にあるビジネスモデルについて検討していく必要がある。

すなわち、消費者嗜好が多様化する中、デジタルテクノロジーを最大限活用して産業の高付加価値化を図ることを前提に、マス・カスタマイゼーションへの転換や e-コマースの更なる促進、シェアリングモデルの積極展開等を通じ、流通販売形態の循環性の向上を図っていく必要がある。

加えて、繊維リサイクルの取組が進められており、一部企業では、自社製品を店頭回収し、途上国に提供・支援する取組が行われているが、今後はリサイクルを実現していくことも重要である。既に廃PETボトル由来の再生繊維の導入等が進められているが、リサイクルしやすい単一素材の機能性繊維の開発や繊維 to 繊維のリサイクル技術の開発等を進めていく必要がある。 (出所:経済産業省「循環経済ビジョン 2020」

www.meti.go.jp

 

 縦割り行政、同じ省内であっても、横のつながりは薄いのだろうか。

 

 「循環経済ビジョン 2020」は、「市場創出」についても次のように指摘する。

循環経済への転換に向けては、循環性の高い製品・ビジネスモデルが市場において適切な評価を受け、適正な対価を得られる環境を整備していくことがあわせて重要である。
「循環性」については、省エネ等と異なり、消費者の直接的なメリットとはならないため、消費者の支払い意思(Willingness to pay)に必ずしもつながっていないのが現状である。

令和元年8月に実施された「環境問題に対する世論調査」(内閣府)でも、プラスチックごみ問題への対応のための代替製品への転換について、「価格と品質ともに、こだわらず代替製品を購入」とした回答は 13.7%にとどまっており、価格もしくは品質面でのメリットが優先される状況にある。 (出所:経済産業省「循環経済ビジョン 2020」

 

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(資料出所:経済産業省「循環経済ビジョン 2020」

 

 

 

 ポスト・コロナ 「極端な消費主義」の終焉

 Business Insiderは、ファッション業界のブログメディア「The Business of Fashion」と経営コンサルタント会社のマッキンゼーが共同で作成した「The State of Fashion 2020
Coronavirus Update
」というレポートを紹介する。

 

パンデミックは、持続可能性という価値観に焦点を当て、物質主義、過剰消費、無責任な商慣行に関する意見をさらに対立させ、議論を活発化させるだろう」 

そうでないブランドは、チャンスを逃すことになるかもしれない。すぐに思い浮かぶのはファストファッションブランドだ。確かに、H&MZaraなどの小売業者の多くは、持続可能性を高めるために大きく前進してきた。しかし、流行の服を安くすばやく生産するという彼らのビジネスモデルの本質は、本当の意味での持続可能性とは相反するものだ。 (出所:Business  Insider)

www.businessinsider.jp

 

  「最終的に、消費者がさらに持続可能性に配慮した買い物をするようになり、「極端な消費主義」の終焉につながる可能性があると結論付けている」という。

 

ユニクロ エアリズム・マスクは真意は

 国内ファストファッションの雄「ユニクロ」は顧客の要望に応え、マスク製造を始めるという。何か、こうした新たな動きが、経産省が発表した「循環経済ビジョン 2020」につながっていけばいいのかもしれない。まして、ユニクロは「サスティナビリティ」や「サーキュラーエコノミー」を提唱するトップブランドなのだから。

 

www.fashionsnap.com

 

まとめ

  便利さと豊かさを享受したビフォーコロナ。少しばかりの不便さと制限がコロナとの共生ということなのかもしれない。 

 Business Insiderは、ヴォーグ編集長のアナ・ウィンターの言葉を紹介している。

 「ファッションは持続しなければならないし、感情的でなければならないし、思い出がなければならないし、意味のあるものでなければならない。」 

(出所:Business  Insider)

 

そのヴォーグは、ファッション熱を高めようとの記事を投稿する。

ファッションに興味のない人でも、着ている服にはその人なりのこだわりがつまっている

ファッションは、服好きの人だけのものではなく、すべての人に開かれたものだとも指摘する。

 

www.vogue.co.jp

 

ファッションには様々な選択肢があっていいのかもしれない。もちろん「サスティナビリティ」に配慮されているが前提にあることではあるけれども。

 

 

「関連文書」

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