6月を迎え、だいぶ日常が戻ってきたのだろうか。ニュースで流れる学校に通う子供たちの笑顔を見るとほっとする。感染リスクを考えるとオンライン授業なのかもしれないが、今まであった風景が戻ってきてよかったと思ったりする。平穏であることが何よりも大切なことなのだと感じる。
目を海外に転じれば、アメリカや香港でのデモや暴動が収まらない。早く収まって欲しいと願うばかりである。
矛を振り上げたところで、対立が収まることはない。逆効果になるばかりだ。矛は収めるもの。抜いた刀は元の鞘に収めなければならない。
入社して3年目のころ、初めてシンガポールに出張した。乗ったタクシーの運転手に、「日本人か」と聞かれた。「そうだ」と答えると、「君のおじいさんたちがこの国で何をしたか知っているか」と聞かれた。驚き、身構えた。
細かなことまでは思い出すことはできないが、太平洋戦争当時の話を聞かされた。最後にセントーサ島にある歴史博物館に行けと言われた。
行ってみた。日本占領下にあったシンガポールの日常が展示されていた。日本が占領していたという事実はひとつかもしれないが、占領する側とされる側で、違った現実があることを知った。学校教育だけでは学べないことかもしれない。
正義とは
「義(正しいこと)」ほど怪しいものはない。それなりに「義」を掲げた戦でも、受ける側にとってそれは「義」でもなんでもない。結局、「義」は人の数ほど存在する。
香港の金融業界で働く労働者が、「国家安全法」に反対するストライキの実施を模索しているとブルームバーグが伝える。
われわれの行動がこの悪しき法律を阻止し、国際的な金融センターとしての香港を守ることを強く望む」と述べ、「金融業界の雇用主である企業には、これは「正義」と「業界」のために闘っているのであって、雇用者に反発しているからではないということを理解してほしい」と説明した。(出所:ブルームバーグ)
中国 メインランド側にも同じように「正義」は存在するのだろう。
過剰反応
ニューヨークのセントラルパークで、飼い犬にリードを付けるよう注意した黒人男性を、白人女性が警察に「アフリカ系米国人に脅されている」と通報したという事件があった。
翌日、その女性は勤務先から「人種差別」を理由に解雇されたという。その女性は「過剰反応だった」と謝罪したそうだ。
ちょっとした「思い込み」と「過剰反応」がこうした事件の背景にあるのだろうか。
この事件のその後をCNNが伝える。
黒人男性は、「自分が投稿した動画がこれほどの騒ぎになるとは思わなかった」といい、白人女性に対しても「自分と同じくらい大量のメッセージを受け取っているだろう」と思いやったそうだ。
クリスチャンさんは26日夜、CNNの番組の中で、エイミーさんの謝罪について「心からの謝罪だと思う」とした上で、
「彼女は自分では人種差別主義者だと思っていないかもしれないが、あの行動は間違いなく人種差別だった。それを本人が認識しているのかどうかは分からない」とした。
・・・
さらに、「彼女に腹を立てた人たちが、彼女が警官によって私を殺させようとしたことに腹を立てておきながら、今度は彼女に対して殺人の脅迫をしようとしているのはおかしいと思う。そこにどんな理屈があるのか」
「どう解釈すれば筋が通るのか」と問いかけている。
(出所:CNN)
理解と思いやり
CNNは、「デモ隊に笑顔で「一緒に歩こう」 米保安官に共感広がる」と、心が和むデモ、パレードの様子を伝える。
米ミシガン州フリントタウンシップで5月30日に開かれた抗議デモ。暴動鎮圧の装備で出動した警官隊とにらみ合う市民らに語りかけたのは、ジェネシー郡の保安官クリス・スワンソンさんだった。
スワンソンさんは警棒を下ろすと、「抗議ではなくパレードにしたい」とデモ参加者に語りかけ、「私たちがここにいる唯一の理由は、あなた方が確実に声を上げられるようにするためです。ここにいる警官たちはあなた方を愛しています」と訴えた。 (出所:CNN)
すこしばかりほっとする。
力で押さえつけようとすれば、必ず反作用が起きる。それが自然の法則というものだ。ニュートンの第3法則で、作用と反作用は等しい力が逆向きに働くということを学んだ。人もまた同じようなものなのかもしれない。
ナイキ動く
米ナイキが、「人種差別」に抗議するTwitterを投稿した。
Let’s all be part of the change.#UntilWeAllWin pic.twitter.com/guhAG48Wbp
— Nike (@Nike) 2020年5月29日
「もうこれっきりでやめよう…アメリカに問題がないふりをするのは」と呼び掛けるキャンペーン動画をツイッター(Twitter)に投稿した。
動画では続けて、「人種差別に背を向けるな。無実の命が奪われることを認めるな。もう言い訳はするな。自分には関係ないと思うな」と訴えている。 (出所:AFP BB News)
自分が属するコミュニティから、こうした変化が起きればいいのかもしれない。そのコミュニティには、自分の仕事場である「職場」も含まれるはずである。
だからこそ、「Nike」はこうしたキャンペーンを発信することができるのだろう。何もすべてがCEOの指示で発信されているということではあるまい。
「関連文書」