東証1部上場のアパレルメーカー株式会社レナウンが経営破綻、再生手続き開始決定を受けることになった。
今年初の上場企業倒産と調査会社帝国データバンクが伝える。負債138億7900万円。
帝国データバンクによれば、国内トップクラスのアパレルメーカーとして90年には年売上高約2317億6500万円を計上していたというが、その後は、基幹・戦略ブランド凋落などから業績がジリ貧となり、2004年の年売上高は約591億5500万円にまで減少したという。
経営の合理化により2007年には年売上高約924億7500万円をあげていたが、同業他社との競合など近年は苦戦を強いられ、2017年には年売上高が約494億円にとどまり、同期以降は営業損益段階での赤字が続いていたという。
そうしたなかにあって、新型コロナウイルスの感染拡大が業績に打撃となったということだそうだ。
コロナがかつての名門アパレルにも影響を及ぼしたということであろうか。
レナウン発行のニュースリリースによれば、経営効率化のため、2019年に策定した中期経営計画“Target 2023”をもとに、主力事業等への選択と集中、サブスクサービス「着ルダケ」や EC 事業の強化、不採算売り場の見直し等を行ってきたというが、昨年夏の台風による店舗休業、記録的な暖冬による防寒衣料の不振などにより、主力販路である百貨店向け販売が苦戦していたという。
これに加え、新型コロナ感染拡大により全国の百貨店などでの営業自粛や消費者の巣ごもりによる購買行動の変化により、販売が著しく減少、2020 年春夏物の商品を主力チャネルで販売ができなくなったという。
そうした中、資金調達および売掛金回収に注力するも、5 月中旬以降の債務支払の目処が立たないことから、民事再生手続開始決定を受けることになったと報告する。
レナウンは、親会社である山東如意の香港の子会社「恒成国際発展」に対する売掛金53億円を抱えていたが、回収遅滞により業績が悪化したことが、今年始めニュースにもなっていた。
レナウンは歴史あるアパレルメーカだった。
レナウンの創設者尾上清は、 NHKの朝の連ドラ「べっぴんさん」に登場した野上潔のモデルになった人物である。ドラマで描かれた坂東営業部が、レナウンの前身佐々木営業部といわれる。
1960年代、「これからはTVの時代」と早くからTV CMを展開、話題性のあるCMで知名度をあげることになる。
Wikipediaによれば、バブル崩壊後の1990年代までにはアパレルメーカーとしては世界最大の売上高を誇ったという。
その後、SPAの台頭や百貨店自体の低迷から、百貨店の平場売りを主体としていた販売手法は相対的にブランド力の低下を招いていたという。
そこに、気候変動の影響ともいえそうな「昨年夏の台風」「記録的な暖冬」が追い討ちをかけ、そして、このコロナが引き鉄を引く。
何か、今を象徴する破綻劇のように感じてしまう。
アパレルの国内市場規模は、バブル期の15兆円から10兆円規模に縮小したが、供給量は倍増し、購入単価は6割減になったといわれる。その間に、ユニクロがSPAとして成長、シェアを拡大していく。そのユニクロは、今やサスティナビリティのトップ企業になっている。
TV CMで成功した名門が故の末路なのだろうか。もし時代の変化に合わせ、レナウンも変化していたら、この事態を避けえたのだろうか。
コロナの影響で、衣料品販売の動向に変化があるとのニュースを多く目にするようになった。
ロイターは、オンライン通販を手掛ける企業が「勝ち組」となっていると伝え、AFPは、人々が自宅で勤務するようになって以来、世間ではおしゃれよりも快適さが優先されるようになったという服飾ブランドおよびマーケティング調査の結果を伝える。
そんな中、1989年創業のユナイテッドアローズが、新中期経営計画「Change and Challenge」を発表した。
ユナイテッドアローズによれば、中期経営計画の立案にあたり、10年先、国内を含めグローバルでどのように変化していくか、グローバルでの人口動態の変化や気候変動、テクノロジーの進化、消費スタイルの多様化等を検討してきたという。
それに加え、アパレル業界が抱える課題を分析、その一つに、大量生産と過剰供給による不良在庫、大量廃棄を挙げている。
そうした経営環境分析の結果として、「サスティナビリティ」を経営理念に次ぐものとし、中期計画は「サスティナビリティ」に位置付けるようにしたという。
アパレル業界が抱える古い商習慣や衣服の大量廃棄問題解消に取り組むという意思の表われだろうか。
今回レナウンは民事再生法を適用し、新たなスポンサー企業を探して、再建していくことになる。
3月末に毛利氏が新社長に就任したばかりだったことから推測すれば、何か古いしがらみを振り切ろうとの意思もあったのではなかろうか。
「暮らしに豊かな潤いを与えてくれるもの、生活に楽しい彩りを運んでくれるもの、それらはすべてファッションである」私たちはそう考えています。
1902年にメリヤス製品の卸売業者として創業以来100年を超える長い間、レナウンは災害や戦後の混乱、高度成長期など様々な困難や経験に学びながら、ファッションを通じて人々の暮らしに寄り添うパートナーとして事業を展開してきました。
戦後のレナウングループの創設者である故・尾上清は、「レナウンの経営理念の原点は『人生を楽しく暮らす』である。繊維に限らず、人生を楽しくするものをつくっていくのがレナウンという会社である」と語っています。
この精神のもと、私たちは常にお客様や社会のニーズを大切にし続けてきました。 (出所:レナウン 公式ページ「企業情報」)
コロナばかりでなく、気候変動や環境問題が、従来の経営に待ったをかけたようにも見える。
ユニクロなど新興勢力は、「サスティナビリティ」を中核に据え、成長を続けている。
歴史あるレナウンは、古い習慣を打ち破り、この先、どこまで、真剣に社会のニーズでもある「サスティナビリティ」に向き合うことができるのであろうか。
新生レナウン、名門アパレルの復活はあるのだろうか。
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