持続化給付金事業などで、電通への再委託や委託金額の多さが問題になっているようである。CSRやコンプライアンスが問われる時代になっても、こうした問題が出ることは憂慮すべきことなのかもしれない。政府、行政機関、大企業のガバナンスが機能していないことを露呈している。
率先垂範、社会に範を示すべき国の事業で、こうしたことが繰り返されることをただ残念に思う。
多額の費用で大手企業を使うのであれば、効率的な業務運営を誰もが期待する。しかし、その結果が正反対なものであるというのだから、何ともお粗末な話だ。イノベーションを標榜する政府だが、「Society5.0」を目指す前に、「倫理」のイノベーションが必要になっているのかもしれない。
何かが明らかに変化しなければ、同じことが繰り返されるの自明である。
東京都が、3月に「新型コロナウイルス感染症対策サイト」を立ち上げ、話題になった。 そのサイト開発を率いたのが東京都の副知事になった元ヤフーの宮坂氏だという。
その宮坂氏は、FNNのインタビューに答え、「東京都の行政手続きの98%をデジタル化する」と語っている。
教育、医療などのサービスのデジタル化は待った無しの状況ですが、その中の代表的なものが行政のデジタルサービスだと思います。都議会でも行政手続きの98%にあたる169の手続きをデジタル化しようという方向になりました。
これまでの条例では、「原則文書、デジタルでもいいよ」というものでしたが、「原則デジタルにする」と方針が大転換します。 (出所:FNNプライムオンライン)
「新型コロナウイルス感染症対策サイト」の開発では、これまでの行政で見られなかった「オープンソース」という手法で進められたという。
長い目で見れば税金で作るシステムをオープンソースという公共財にするというのはとてもいいことだなと。ソース、データをオープンにして、他の自治体も使えるようにし、我々も他の自治体が作ったものを使えれば、日本全体がよくなると思うんですよね。 (出所:FNNプライムオンライン)
電通は、戦後間もないころに、吉田秀雄氏が社長に就任し、その後大きな発展を遂げる。吉田氏は「中興の祖」と言われる人で、それまでの広告業界の慣習を大きく変えたという。
Wikipediaによれば、電通入社25周年回顧座談会で吉田氏は、「広告取引というものが本当のビジネスになっていない。実業じゃないのだ。ゆすり、かたり、はったり、泣き落としだ。僅かにそれを会社という企業形態でやっているだけで、まともな人間や地道なものにはやれなかった仕事なんだ」と戦前の広告業界を語っていたという。
1951年には「鬼十則」を制定したといわれる。この「鬼十則」が、後の電通事件を始めとする過労死続発の原因なのではないかと世論の批判を呼んだという。2016年10月には労働局の調査が入る事態に発展した(出所:Wikipedia)。
「鬼十則」(一部抜粋)
1:仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない
2:仕事とは、先手々と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない
3:大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする
4:難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある
……
(出所:Wikipedia)
吉田氏とともに発展した電通。吉田氏存命のときは「鬼十則」がガバナンスの一部として機能していたのかもしれない。その電通は「鬼十則」を捨てた。
スティーブ・ジョブズが存命のころ、自身がコンパックから引き抜いたティムクック氏を後継者に指名した。クック氏は、ジョブ氏とは全く畑が異なるオペレーション側を担当していた。
何か変化を求めるのでは、やはり人を変えるしかないのだろうか。
それは、明確な会社の存在意義「パーパス」や「ミッション」を作れる人と言うことなのかもしれない。