昨日6月18日に首相の記者会見があった。コロナの感染は続いているが、会見内容からいって、ひとまず一区切りということなのであろうか。
中国で発生した新型コロナウィルスが一気に感染拡大し、パンデミックに認定され、欧米各国で信じ難い甚大な被害となった。経済は疲弊し、世界が終末期を迎えるような雰囲気さえもあった。世界で新型コロナの封じ込めには至っていないが、感染抑止から経済へと軸足が移ったといことなのだろう。
不確実性が増す世界 萌芽のとき
経済復興の動きが世界各地で進むが、「世界的な景気回復、「不確実性著しく高い」とロイターは伝える。そうした中にあっても、何か新しい芽が萌芽し始めるのではないかとの予感もないわけではなさそうだ。
抑制策実施で先送りされていた消費需要でサービス産業が急速に回復する可能性があるものの、消費者行動の変化や貯蓄率の上昇などで急速な回復は必ずしも保証できないと指摘。
観光業への依存度が高い国が受ける長期的な影響が最も懸念されるとし、各国政府は縮小が予想される産業から成長産業へ労働者を再配分する政策を打ち出す必要があるとの考えを示した。 (出所:ロイター)
新たな発想 「長く使う」
ウォールストリートジャーナルは、「セールは流行遅れ? 衣料業界に新たな動き」との記事を投稿し、米GAPやカルバン・クラインの親会社PVHなどが、1年先に在庫を持ち越す方針を表明したと伝える。
大量消費、大量廃棄が当たり前だったアパレルで、生き残りをかけた変化の始まりになるのだろうか。
スウェーデンのIKEAは、英エレンマッカーサー財団と戦略的パートナーシップを締結し、「サーキュラーエコノミー」を強化していくと公表した。
エレンマッカーサー財団のニュースリリースによれば、IKEAのCSO最高サステナビリティ責任者は、
Our goal is to give products and materials a longer life through the four circular loops: reuse, refurbishment, remanufacturing, and, as a last option, recycling.
「私たちが目指すゴールは、材料を含めて製品の寿命を延ばすことにあり、それを実現するのが、リユース、改修、再製造、そして最後のオプションとしてリサイクルがある」と語ったいう。
長く使える商品を作ることが目的であって、「サーキュラーエコノミー」は単にそれに導く手段ということであろうか。
より長く使える商品やサービスが増えることになっていくのだろうか。
IKEAのcircular designの責任者 Malin Nordin氏は、「私たちができること、CEOから求められていることは、サスティナビリティアジェンダに従い、気候変動関連、そして2030年までに循環型の企業になること」とdezeenで語っている。
「IKEAは、EUのグリーンリカバリーに署名しているため、企業としては、後退せずに前向きに進み、より持続可能な方法で、パンデミック後の市場に参入する必要がある」ともいう。
IKEAも目指す ポストコロナのグリーンリカバリー
4月、[European alliance for a Green Recovery]が立ち上がり、IKEAもこのアライアンスに参加を表明した。
IKEA Signs Call to Action on European Green Recovery(IKEA)
この時、IKEAのCEOは、
「COVID-19ウイルスの発生により、人やビジネスへの影響を軽減するための緊急対策が必要になっても、長期的な目標を見失うことはありません。
私たちはすべてのことを長期的に続け、2030年の野心的な持続可能性の目標にコミットし続けます。
これは「どちらか一方」の状況ではありません。
今日の困難な状況により、気候変動への取り組みを加速する決意がさらに強まっています」
と語ったという。
オルタナによれば、欧州を中心に始まった「グリーンリカバリー(緑の回復)」の動きは、持続可能性、生物多様性の保護、EUの農業食糧システムの変革などの「グリーン投資」を求めている」という。
ここに「グリーンリカバリー」の一つの本質がある。気候変動対策や、「クライメイトニュートラル」は世界共通の課題であり、おそらくCO2ゼロを企業の長期目標に掲げられない企業は今後、グローバル市場で存在感を高めることはできないだろう。
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実は、「グリーンリカバリー」も、SDGsも、パリ協定も、環境対策としてはほぼ同じことを違った言葉で言い換えているに過ぎない。SDGsの17ゴールや169のターゲットに真剣に、地道に取り組んでいれば、それはグリーンリカバリーの達成にも通じるのである。 (出所:オルタナ)
脱皮のとき
昨日の記者会見で、気になるワードとして、「集中から分散へ」、「治に居て乱を忘れず」があった。
抽象的過ぎて具体的に何を意味するかがつかみ難かった。この先、何か大きな変化は起こるのだろうか。
集中から分散へ、日本列島の姿、国土の在り方を、今回の感染症は、根本から変えていく、その大きなきっかけであると考えています。
コロナの時代、その先の未来を見据えながら、新たな社会像、国家像を大胆に構想していく未来投資会議を拡大し、幅広いメンバーの皆さんに御参加いただいて、来月から議論を開始します。
新たな目標をつくり上げるに当たって、様々な障害を一つ一つ取り除いていく考えです。そして、ポストコロナの新しい日本の建設に着手すべきは今、今やるしかないと考えています。
パンデミックの脅威は、かねてから指摘されてきたことです。しかし、我が国の備えは十分であったとは言えません。テレワークなどの重要性も長年指摘されながら、全く進んでこなかった。そのことは事実であります。
治に居て乱を忘れず。今回の感染症の危機によって示された、最大の教訓ではないでしょうか。
(出所:首相官邸公式サイト)
「新型コロナでSDGsの盛り上がりはどうなる?」というデロイトトーマツの山田太雲氏とのインタビュー記事を日経ビジネスが伝える。
山田氏は、
「日本では経済における行政の規範設定の力が強い。企業は国が出す指針を絶えず気にし、忠実に守る。そのため、政府のイニシアチブが極めて大事になる。しかしその政府が、産業界を次のフェーズに引っ張っていくような政策を作っていない」
と指摘する。
欧州企業は政府やNGOと常に対話しており、そこでの議論が先進7カ国(G7)での会議などを通じて国際的なルールになっていく。
日本企業はルールができてはじめて対応しなければならなくなる。ルールメーク側に回っていれば早めから投資できていたはずなのに、だ。
常にルールテーク側に陥ることがないように、能動的に動く側に回る。それが今、日本企業に求められている「脱皮」だ。
日本の政治環境や労働市場を鑑みると、企業がこうした世界的な変化を正確に捉えるのは簡単ではなかったかもしれない。
能動的にグローバルな動向を感知し、情報を収集する「センシング」の機能を持つ必要に迫られている。 (出所:日経ビジネス)
山田氏の主張は理解できる。このコロナで明らかになった給付金委託事業などの実態をみれば、肯けるところが多い。
経産省ともビジネスを行うデロイトトーマツならでは視点なのかもしれない。
(写真出所:IKEAニュースリリース)