6月19日、1863年のこの日、エイブラハム・リンカーン大統領が奴隷解放を宣言した。米国では、この日を「Juneteenth」と呼ぶそうだ。
奴隷解放記念日のこの日、企業や自治体が、休日にしたり有給の休暇とする動きが広がっているという。
日本経済新聞によれば、小売り大手のターゲットやナイキ、ツイッターは、この日を会社の休日にするという。JPモルガン・チェースも支店を午後早くに閉めるという。
ニューヨーク州はクオモ知事が州の職員の休日とする知事令を出した。来年には州の休日とする法律の制定を提案する意向も示した。
(出所:日本経済新聞)
日本経済新聞は、「米国の白人警官による黒人暴行死事件で人種差別に対する関心が高まり、人種や多様性について考える機会を提供している格好だ」と指摘する。
ナイキは、「従業員に自身を啓発し、黒人の歴史に向き合うことを促した」といい、JPモルガン・チェースは、「学び、それぞれの共同体で平和的に活動できるようにする」という。
ナイキとBLM
Forbesもナイキの動きを伝える。ナイキのジョン・ドナホー最高経営責任者(CEO)は
「Black Lives Matter」とは、世の中のことであると同時に、ナイキ社内の黒人のチームメイトのことでもある」と語り、「端的に言えば、会社とブランドの品位に照らして、わたしたちは自分たちを高い基準で律していかねばなりません」と話したという。
ナイキは今月、全従業員が2週間、人種間の不平等について学べる多様性教育プログラムも始める。
さらに、社内でアフリカ系、中南米系(ヒスパニック)、女性が適切に代表されるようにするほか、従業員の専門能力開発への投資も増やす計画だ。 (出所:Forbes)
アマゾンとJuneteenth
米国アマゾンは、「The history and significance of Juneteenth(Juneteenthの歴史と重要)」というタイトルのブログを投稿した。
「Juneteenth」のその日、
アマゾンはシアトルのキャンパスに、「パンアフリカ旗」を掲げ、世界中の従業員がオンライン学習ツールとリソースにアクセスできるようにしたという。
個人、チーム、会社としての自分たちが、どのように世界中の人種差別、抑圧、不平等の解消に積極的に参加できるかについての対話を刺激することを目的としたという。
「今年のJuneteenthは違った感じがします」
「人々は、Juneteenthについてより普遍的に話している」
「私の祖先の血と汗を尊重することを願っています。」
とAmazon Web Servicesでグローバルインクルージョンと多様性を率いるLaDavia Draneは言ったという。
「今起きている人種的不正を克服するために国が取り組んでいるとき、「Juneteenth」を振り返ることは、今年は特に強く心に訴えてくると感じる。
私たちアメリカ人は長い道のりを歩んできたが、まだこの先長い道のりがあります」
とブログに記されている。
ナイキが目指すスポーツを通じた平等な社会
6月5日、ナイキは、「ブラックコミュニティへの取り組みに関する声明」を発表した。
この声明で、ジョン・ドナホーCEOは、
「ブラックコミュニティが直面する問題についてもっと深く学び、多大な苦痛と無意味な悲劇の人種差別が生み出すことを理解する必要があります。
多様な企業は、どのように行動するか、模範となる努力を決して止めることはありません。
私たちは、私たちがサービスを提供するコミュニティで私たちの役割を果たしながら、より多くの消費者を代表することに注力していきます」
とコメントした。
そのナイキは、この1年間、多様性に関して、包摂的な環境を育て、より多様な労働力を採用する独自の取り組みと説明責任への対策を強化してきたという。
その進捗状況と成果は、Nikeインパクトレポートを通じて毎年共有されるという。
「2019年度 Nikeインパクトレポートエグゼクティブサマリー(日本語版)」
「Nikeの目標は、スポーツを通じて世界を一つにし、健全な地球、活発なコミュニティ、すべての人にとって平等な社会を創り出すこと」
日本語版エグゼクティブサマリーに記載はないが、英語版インパクトレポートにはSDGsに関しての記載がある。
英語版公式サイトの「Sustainable Development Goals (SDGs)」が内容を確認できる。
声なき声に耳を傾ける
今年2月、アマゾンのジェフ・ベゾス氏は、1兆円の資金を投じて「気候変動対策基金」を設立すると発表した。その背景にアマゾンの従業員の声があるといわれた。
米国では、従業員が声を上げ、会社や社会を変えようとするということなのだろうか。社会課題を自分事として声にしているということなのだろうか。
そして、経営者もその声に応える。経営者は、従業員の声が社会の声でもあると理解してのことなのだろうか。
国内企業にも、こうした経営者と従業員の関係ができるといいのかもしれない。
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