COP25がスペイン マドリードで始まり、国連のグテーレス事務総長が最初の会合で次のように語ったとAFPBBNewsは伝える。
「一つは降伏という道であり、われわれは夢遊するうちに、地球上のすべての人の健康と安全を危険にさらし、二度と後戻りできない地点を通過してしまった」と指摘。
「われわれは本当に、現実から目をそらし、地球が燃えている間に時間を空費した世代として記憶されたいのか」と警鐘を鳴らした。 (出所:AFP BB NEWS)
厳しい言葉である。現実を直視すれば、正しいことなのかもしれない。
今年の台風被害を見れば、「100年1度の災害」がではなく、気候変動の影響が深刻化していることを自然が教えていると理解したほうがよいということであろう。
- 地球過熱化という気候危機
- 脱炭素化を目指す 「ファッション業界気候行動憲章」
- グリーンウォッシュと揶揄されるH&M
- 雑誌『VOGUE』のコンデナスト社、「ファッション業界気候行動憲章」に参加
- ナイキ 北極航路不使用を宣言
- まとめ
地球過熱化という気候危機
もはや気候変動、地球温暖化ではなく「気候危機」「地球過熱化」
国連のグテーレス事務総長は2018年9月に「気候危機」という言葉を使い、世界に対策を加速するよう訴えています。
英国気象庁で気候研究の第一人者であるリチャード・ベッツ氏は「地球のエネルギーバランスが変化しているのだから、global warming(地球温暖化)ではなく、global heating(地球過熱化)のほうがより正確だ」と述べています。日本でも東大名誉教授の山本良一氏が「気候非常事態宣言」を訴えています。(出所:SankeiBiz)
脱炭素化を目指す 「ファッション業界気候行動憲章」
「ファッション業界気候行動憲章」が、昨年12月に発表され、多くのアパレル企業が署名した。
パリ協定の目標とも整合するこの憲章は、2050年までに正味でゼロ・エミッションを達成するという業界のビジョンを盛り込むとともに、生産段階の脱炭素化から、気候に優しく持続可能な素材の選択、低炭素の輸送、消費者との対話と意識の向上に至るまで、拡大可能な解決策の促進に向けて金融関係者や政策立案者と連携し、循環型ビジネスモデルを模索することで、署名団体が取り組むべき課題を定めています。
「参加企業」(出所:UNFCCCニュース)
Adidas(アディダス)、Burberry(バーバリー)、Esprit(エスプリ)、Guess(ゲス)、Gap Inc.(ギャップ)、Hugo Boss(ヒューゴボス)、H&M Group(エイチアンドエム)、Inditex(インディテックス)、Kering(ケリング)、Levi Strauss & Co.(リーバイ・ストラウス)、Puma SE(プーマ)、PVH Corp.(PVH)、Target(ターゲット)を含む43社のリーダーのほか、 社会的責任のためのビジネス、サステイナブル・アパレル連合、中紡織工業連合会、アウトドア産業協会、テキスタイル・エクスチェンジなどの有力な会員組織、グローバル物流企業のMaersk、そして世界的なNGOのWWFインターナショナルは、ファッション気候憲章の基盤である16の原則とターゲットの実施または支援を約束しています。
グリーンウォッシュと揶揄されるH&M
この発表時に、H&MグループのCEOカール・ヨハン・パーション氏は、「この憲章は、重要な気候変動対策で業界の結束を図るものです。私たちの業界は全世界で活動しており、緊急に必要とされる変化を作り出すには、力を合わせねばならないからです。私たちのバリューチェーンで クライメット・ポジティブを達成するという野心の一環として、この憲章に署名できたことを嬉しく思っています」と語ったとUNFCCCニュースは伝える。
そのH&Mでさえ、ノルウェーでは「グリーンウォッシュ」と批判を受けているという。
6月、ノルウェー消費者庁は、同企業が「サステイナブルなファッション」として謳う「Consious」シリーズが、事実上「サステイナブルで環境に優しい」のか疑わしいとして、広告が「違法行為」だと指摘した。
北欧で、H&Mが以前から特に批判される理由は、企業の人気と影響力の高さゆえ。格安ファッションを広め、スウェーデンのファッション業界を発展させる貢献はした。だが、エシカル・ファッションの必要性が強まる中、業界のリーダーとしての道徳観と責任が、今求められている。(出所:Yahooニュース)
H&Mも汚名挽回に躍起なのだろう。1週間レンタルできる新たなサービスを開始したとFRONTROWが伝える。
アイテム1点あたりのお値段は約4,000円。1週間にわたって服を借りることができ、店舗ではH&Mのスタイリストにコーディネートの相談をすることも可能となる。今のところ同サービスを体験できるのは、ストックホルムにある旗艦店のみ。3ヶ月後にレンタルサービスの効果を検証し、さらに拡大するかを検討するという。(出所:FRONTROW)
ナイキは子ども向けシューズでサブスクを始めた。レンタルやサブスク、シェアリングがファッション業界でも定着していくのだろうか。こうしたサービスを利用すれば、洋服などを廃棄する必要がなくなるかもしれない。
雑誌『VOGUE』のコンデナスト社、「ファッション業界気候行動憲章」に参加
ファッション業界は裾野が広く、関連する企業は広範囲に拡がる。ファッション雑誌もそのひとつであろう。
ファッション雑誌『VOGUE』や『GQ』『WIRED』などを保有するコンデナスト社が、メディア企業として初めて「ファッション業界気候行動憲章」に参加すると発表した。
「ファッションはいつの時代も社会の大きな変化を反映し、文化の一翼を担ってきました。今日、デザイナー、アイテムの製造に関わる人々、ファッション・ブランド、およびファッション・ジャーナリストには、私達がファッションをどのように創造し、消費するべきかということを根底から想像しなおし、デザインを変え、再構築する責任があります。
世界でナンバー1のファッション・パブリッシャーとして、このような前向きな取り組みを牽引し、最善を尽くすことを私達は約束します。
私達には、パリ協定の目標を達成するという確固たる意志があります。」とコンデナスト・インターナショナルのグローバル・COOウルフギャング・ブラウは述べています。(出所:PR Times)
パトリシア・エスピノーサUNFCCC事務局長は、「ファッション業界は常に、世界の文化の二歩先を行っています。よって私は、業界が気候行動も主導することになったことを嬉しく思います。憲章は、世界各地で行われるファッションショーと同様、他の人々も追随することが望まれる模範を定めるものだからです」と、語っているという。(出所:UNFCCCニュース)
ナイキ 北極航路不使用を宣言
その言葉を象徴するように、Nikeは、先頃、北極海航路を使用しないと宣言、他の企業や業界へも『「アークティック シッピング コーポレイト プレッジ」(北極海航路企業宣言)』の署名を促している。
署名した企業には、ベストセラー、コロンビア、ギャップインク、H&Mグループ、カーリング、利豊、PVHを始め、海運業のCMA CGM、長栄海運、ハパックロイド、MSCが含まれる。(出所:ナイキ)
まとめ
世界各地では、「ブラックフライデー」から始まる年末商戦が本格化している。多くのアパレル企業がこの商戦での売り上げ拡大を図ろうと躍起になっているように見える。その姿を見てしまうと、果たして「ファッション業界気候行動憲章」が求める「消費者との対話と意識の向上」に反しないのかと疑問をもってしまう。
日経ARIAは、 「ファッション業界気候行動憲章」に日本のアパレル企業が1社も参加していないと指摘する。やはり、私たち一人ひとりの行動も重要ということでしょうか。
「参考文書」