Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

ズレた感覚、届かぬ思い、遠退く目標 東京オリンピックのビジョンは何処に

 

 ミニマルなくらしがいいのではないかと思えば、「新しい日常」も悪くはないかと思ったりもしたが、長引いてくると少しばかり不自由さと退屈さを感じたりする。

 日々のニュースからは閉塞感みたいなものが見えてくる。どこか心の片隅にあきらめが芽生えてしまっているのだろうか。

 AERA.dotが作家村上春樹さんの言葉をインタビュー記事で紹介する。

 生活のリズムはコロナ以前も以後もそれほど変わりません。

でも、新型コロナウイルスの感染拡大で社会そのものが大きく変化しました。僕の中のなにもかも変わりました。走りながら見る風景も、呼吸する空気も以前とは違います。

それが今後の僕の作品にどんな変化をもたらすかは、今はなんとも言えませんけど。 (出所:AERA.dot)

なんとなく共感してしまう。 

 

 

 村上さんは、「コロナ禍で、日本の政治の脆弱さが浮き彫りになった」と指摘する。

国政にしても、地方行政にしても、常に正しい判断ができるわけがない。

でも、僕はうまくいかなかった後の対応に問題があったと考えています。間違いはきちんと認めて次の政策を明確にアナウンスすれば、国民は不信感を持たなかったのではないでしょうか。 (出所:AERA.dot)

dot.asahi.com

 誰も経験したことがない。過去に学ぼうとしても、その事例が極めて少ない。暗中模索でベターな方法を積み重ね、失敗を正しながらやっていくしかない。それがコロナ渦なのだろう。しかし、失敗が続けば、誰もが失望する。

 今までの政策実行とは違ったアプローチが必要なのだろう。今まで以上に国民感情を気にかけなければならないのかもしれない。協力無くしてうまくいくはずなどないのだから。

 

 

 五輪組織委員会が「東京2020大会と男女共同参画ジェンダーの平等)について」との文を公式ページに掲載した。会長の問題発言を受けてのことのようだ。

「多様性と調和」が東京オリンピックの核となるビジョンの一つだと、組織委員会はいう。

 私どもは、改めてビジョンを再確認し、引続き、人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを尊重し、讃え、受入れる大会を運営します。ビジョンを追求しながら、多様性の調和、持続可能性、復興に重きを置き、大会後の社会の在り方にもレガシーを残すように取り組んで参ります (出所:公益財団法人東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会

tokyo2020.org

 そういえば、どこかの政治家が 「余人をもって代えがたい」と発言したことを思い出す。どんな感覚をもちあわせているのだろうか。この問題に、この言葉かとがっかりした。そうした言葉がまた波紋を広げる。

 発言は撤回できても、記憶に残る。

 大会後の社会の在り方にもレガシーを残すように取り組む、そういうのであれば、自らけじめをつけるべきなのだろう。

 

 

 陸上女子100メートルハードルで12秒97の日本記録を持つ寺田明日香さんが時事通信のインタビューに答える。

 この問題が収束したかのような動きに、寺田さんは、「人ごとになっているのではないかとすごく感じる」という。

「組織委の中で大きな改革がないといけないかなと思うけど、周りから少しずつ中央に力を与えて、渦を起こしていくことが必要。組織としての弱さ、権力に負けてしまうところが、日本はまだまだ遅れていると思われる一つのきっかけになりかねない。今がみんなで力を合わせて頑張る時なのでは」ともいう。

www.jiji.com

いろんな選手が(開催は)難しいと思っていても、一つの望み、光を目指して頑張っている中、トップの方が世界から反感を買うような言葉を発してしまうことで、日本の五輪は本当に大丈夫なのか、日本の多様性についての考え方はどういうものなんだろうと思われてしまう。選手の頑張りや、(五輪開催に向けて)ご尽力してくださる方の努力が見えなくなってしまっているのはすごく残念。 (出所:JIJI.COM) 

 

 

 ジェンダー平等を望む人たちがいて、その意見が受け入れられ、それが多くの人たちの尽力によってオリンピックという一つのカタチとして結実する。それが心ない人の発言によって壊れていくとしたら、あまりにも悲し過ぎる。

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サステナビリティは戦略といった小手先だけのものではない。企業の方針であり、企業としての在り方だ。今の時代、またこれからの時代、地球に暮らす人々が幸福になるよう活動していくということが必要となる。企業として何ができるかを考えて実行していきたい」と話したユニクロ柳井氏の言葉を思い出す。

 説得力あることばだ。どんな組織にも方針なり目標が必要となる。

  企業として業績目標は絶対に必要だ。ただ、サステナビリティか業績か、どちらかといった次元の問題ではない。サステナブルであることはすべての前提だ。平和で安定した豊かな社会がない限り、企業の繁栄はない (出所:Forbes)

forbesjapan.com

 

 組織は人で動く。目標があるからこそ、動けるのかもしれない。

 志気を下げるような振る舞いをする人にはもうそろそろ退場いただいた方がよいのだろう。

 

 

(2021年2月11日 追記)

 森会長の発言撤回で問題が終了したとしていたIOCが、世論や選手、スポンサー企業から非難の声が相次いだことから、新たな声明を出したという。

 朝日新聞はこの声明を次のように報じた。

オリンピック・ムーブメントにおけるジェンダー平等についてのIOC声明

インクルージョン(社会的包摂)、多様性、そしてジェンダー平等は国際オリンピック委員会IOC)にとって不可欠な要素だ。

 過去25年間にわたり、IOCはスポーツ界やスポーツを通じて女性の参画を増やそうと重要な役割を果たしてきた。今後も野心的な目標を立てながら続けていく。現在我々が住む難しい環境では、多様性が根本的な価値であり、これまで以上に尊重し、力を引き出していかなければならない。

 最近の森会長の発言は極めて不適切で、IOCが取り組むアジェンダ2020での改革や決意と矛盾する。彼は謝罪し、その後もコメントを続けている。

 また森会長の謝罪とは別に、東京大会組織委員会も会長の発言を不適切と認め、ジェンダー平等に向かう決意を再確認した。

 オリンピック・ムーブメントを率いるリーダーとして、五輪憲章でもうたわれている女性の参画をこれからもスポーツ界での全レベル、全ての組織で支援し、奨励する使命を果たしていく。 (出所:朝日新聞) 

digital.asahi.com

「森会長の発言、トヨタの価値観とは異なり誠に遺憾=トヨタ社長」と ロイターは報じた。

  豊田社長のコメントを代読するにあたり長田氏は、「(森会長の発言に対して)社内でも議論を重ねてきた。その上で、トヨタが何を大切にしているのか、世界をどのようにみているのか、皆様に正しく理解してもらうためには、ここで沈黙してはいけないと判断した」と経緯を説明したという。  

jp.reuters.com

 トヨタは五輪の最高位のスポンサー企業。五輪組織委員会にとって無視できない意見が増える。どこに矛を収めるのだろうか。

 

 五輪組織委員会は12日に「評議員会・理事会合同懇談会」を開くと発表、森氏が改めて発言を謝罪した上で理事、評議員が対応を協議すると共同通信が伝える。

 国際オリンピック委員会IOC)が「完全に不適切だ」とする声明を発表したのを受け、自民、公明両党の幹部から10日、本人が出処進退を決めるべきだとの声が上がった。 (出所:共同通信

 これまでに森氏を擁護してきた政治家たちも責任を問われるべき存在ではなかろうか。

this.kiji.is

「ズレた感覚、届かぬ思い、遠退く目標」、東京オリンピックのビジョンは何処にいったのだろうか。

 こういう人たち、こういう政党では、ジェンダー平等やSDGsを推進することに無理があるのだろう。それがはっきりわかったような気になった。

 自民党総裁もけじめをつけて国民に世界に謝罪すべきなのだろう。