Up Cycle Circular’s diary

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【失われる倫理観】相次ぐ企業の不祥事、問われる道徳心、道徳をアップデートするとき

 

 五輪開催の是非をめぐり世論がわかれる。開催推進派はコロナ抑制に躍起になり、開催できる雰囲気作りに奔走する。中止派は感染が収まらないことを前提にし、開催によってさらに状況が悪化することを懸念するのだろうか。時間経過とともにコロナの状況も変化する。東京では下降傾向に転じたとみられるが、まだ予断を許さないのだろう。必然中止派が勢いを増すのだろうか。

 そんな中、IOC国際オリンピック委員会のコーツ調整委員長が、東京が緊急事態宣言下でも今夏の大会を開催する考えを示したという。

jp.reuters.com

 ロイターによれば、「宣言が出ていようと出ていまいと、われわれが取っているすべての対策で安全な大会は可能だ」と語ったそうだ。

日本国内の世論調査過半数が開催に反対している現状について、コーツ氏は「ワクチン接種率と世論調査に相関がある。ワクチン接種者が増えれば世論調査の数字も良くなることを期待している」と述べた。 (出所:ロイター)

 議論の余地はないということであろうか。さらに物議を醸すのだろうか。

 

 

 倫理やコンプライアンスが問われるニュースが増えていないだろうか。選挙買収や署名偽造は言語道断だ。買収は倫理に反し、偽装は道義に外れる。

 企業倫理に外れる行為も後を絶たない。SBIソーシャルレンディングは集めた資金を目的外に使ったことを見逃し、金融庁から業務停止命令を受ける見込みだという。住友重機では下請け企業が中国企業に図面を渡してしまうコンプライアンス違反が発覚した。

www.jiji.com

 その前には、ジェネリック医薬品を製造する日医工や小林化工などが承認されていない工程で医薬品を製造としたとして業務停止命令を受けた。その後も不祥事は続き、日医工の子会社のエルメッドが厚生労働省から業務改善命令を受けたという。

www.nikkei.com

 日本経済新聞によれば、小林化工と共同開発申請した品目について、虚偽のある結果を含む承認申請資料が作られていたという。厚労省は再発防止や法令順守、役職員に対する教育を含めた組織体制の構築などを命じたそうだ。

 こうしたニュースを見るたびに、道徳や倫理の劣化を感じずにはいられない。そうした守るべき規範がなくなってしまったのではないかと危惧する。

 

 

 「種の保存にあらがう」 自民議員のLGBT差別相次ぐと報じる朝日新聞の記事が気になる。

西田昌司・党政務調査会長代理(62)=参院京都選挙区、当選3回=は「(性的少数者の当事者も非当事者も)お互い我慢して社会を守る受忍義務がある」と主張。こうした「道徳的な価値観」を無視し、「差別があったら訴訟となれば社会が壊れる」との趣旨の発言をしたという。 (出所:朝日新聞

digital.asahi.com

 議員がいう「道徳的な価値観」とは何だろうか。

 朝日新聞によれば、議員は「受忍」を「寛容」という意味で使ったという。本来、迷惑や損害をこうむっても、耐え忍んで我慢することを意味する言葉だ。疑問を感じてしまう。

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道徳を再定義した方がよいのではなかろうか。古来、道徳は時々の状況に合わせ変化してきた。

 「温故知新」という言葉がある。故(ふる)きを温めて新しさを知る。過去の伝統を冷え切ったままで固守するのではなく、現代の火にかけて新しい味わいを問い直すということを意味する。つまり伝統に墨守するのではなく、永遠の真理の今日的意味をさぐることだと、文学者桑原武夫はいう。道徳にもアップデートが必要ということであろう。

 今年のNHK大河ドラマの主人公渋沢栄一は「論語と算盤」といい、道徳と経済は両立すると説いた。その彼は日本資本主義の父といわれ、新しくなる一万円札の顔になる。

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

 

 「温故知新」も論語に出てくる言葉だ。その論語は利己的な行為を忌み嫌い、徳を説く。紀元前に説かれたその道徳を、渋沢は自身の時代に合わせて読み直し、経済と両立すると主張し実践、日本経済の礎となる会社を数多く立ち上げた。彼の精神に学びたい。