労働組合の中央組織「連合」が、来年の賃上げ目標を「5%程度」に引き上げる方向で調整に入ったそうです。物価高騰で家計の負担が増していることを踏まえているそうです。
朝日新聞によれば、経団連の十倉会長は「ベアの役割、機能を再認識することが必要だ」と述べ、ベアを含めた賃上げに前向きに取り組む姿勢を示したといいます。
物価高で賃上げ必要 5%要求は「相当厳しい」―桜田同友会代表幹事:時事ドットコム
一方、経済同友会の桜田代表幹事は、日本のGDP国内総生産の成長率などを踏まえ「平均5%は相当厳しいと思う」と指摘し、「社員の価値にどうやって報いるかは、経営者が真剣に判断すべきだ」と強調したといいます。
洋菓子などを製造・販売するシャトレーゼが、「値上げはしないが、社員の給料は上げる」と宣言したそうです。
値上げはしないが、社員の給料は上げる…シャトレーゼが「前代未聞の宣言」をした本当の理由 創業会長が「社員の給与増」にこだわるワケ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
「物価が高くなった今だからこそ給料を上げなくてはならないのです」。
「うちの給与の平均は少し前は年間580万円くらいでしたが、今は620万円にはなってます。ゆくゆくは800万円にはしたい。山梨県ではトップレベルの給与水準をめざします」と、創業社長の齊藤寛氏がそう語ったといいます。
シャトレーゼの本社は決して新しくはない。節電しているから廊下は薄暗い。しかし、内部は掃除が行き届いていて清潔そのものだ。(出所:プレジデントオンライン)
また、社長は本心から「お客さまのため」を考えて、値上げしないと決めたそうです。
賃上げのためには、生産性の向上が不可欠とされます。その背景には、日本の労働生産性が低いとの指摘があります。
「こんなに一生懸命働いていて、もうこれ以上働けないくらいなのに、生産性が低いといわれても……」。(出所:東洋経済オンライン)
誤解多い「日本の中小企業の生産性低い」真の理由 | 日本はなぜ上がらない? 「生産性」の謎を解く | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
記事は、日本でダイナミズムがなくなり、ともすれば現状維持に意識が向きがちになる点が問題と指摘し、人材不足を原因の一端にあげます。
そのため、賃上げで有能な人材を集めるべきといいます。
イノベーションは学歴やスキルだけで生み出されるわけではない。しかし、専門性やスキルに多くの投資をする魅力に欠けているのに、多くのイノベーションを期待するのは酷な話であろう。
こうした状況は一気に変えられるものでもないが、専門的なスキルを持つ人材が多く育成され、(成功すれば)多くの見返りを得られるような環境づくりをしていかなければ、いつまでも状況は変わらない。(出所:東洋経済オンライン)
間違いではないのでしょうが、シャトレーゼのようなケースがもっと増えてもいいのではないでしょうか。現実に賃上げにつながっているのだから。身近な成功事例を学ぶことがあっても良さそうです。そこにも何か専門的なスキルが存在しているのかもしれません。
学び直しが説かれ、デジタルなどの専門知識がDXやイノベーションへの近道のように語られることが多くなっています。ただ専門知識だけでイノベーションが起こった事例などあるのでしょうか。
日銀の黒田総裁が国会で、最近の円安は「経済にとってマイナスで望ましくない」と答弁し、これまでの「プラス」としていたトーンが変わったといいます。
円安は「マイナス」・イケアの脱炭素・ホンダジェット: 日本経済新聞
「急速かつ一方的」な円安は「企業の事業計画策定を困難にするなど先行きの不確実性を高める」という点を第一の理由にあげ、「その影響は業種や企業規模、経済主体によって不均一だ」とした発言したといいます。
これは円安による物価高に悩む中小企業に配慮する姿勢をにじませたともとれると日本経済新聞は指摘します。
賃上げムードが高まる中で、発言を変えては水を差すことにはならないのでしょうか。
「参考文書」
連合の「5%程度」賃上げ目標に、「驚きはない」と十倉経団連会長:朝日新聞デジタル