登山を止めてから長い年月が経つ。また山に登りたいという気持ちはあるが、山登りで知った自然の厳しさを神聖化し過ぎて、足が遠のいているのかもしれない。山登りしていた頃の苦い経験が理由になっているのだろう。体力がまだ十分に備わっていない時期のことだから、そんなに深刻になることはないのだろうけど、体力の低下が気になりだすと、きちんとトレーニングしないと挑戦する権利さえないなんて考えてしまう。高校生の頃は毎日基礎トレーニングし、多いと30kg以上を担いで山に登っていた。もうそんな真似はできないと思ってしまうのだろう。
山を始めて2回目の山行は残雪期の八ヶ岳だった。学校のクラブ活動にしては少々無謀だったのかもしれない。装備が貧弱なのに、蒼氷が残る稜線を歩けというのだから。霧が濃い横岳でルートを間違え、断崖絶壁をトラバースせざるを得なくなったときはさすがにビビった。山行に同行してくれたエキスパートがすぐさまにルートを作り、ザイルを張ってくれたからよかったが、その人がいなかったらどうなっていたのだろうか。
その次の山行は梅雨時の西丹沢だった。蒸し暑さと重いザックに苦戦、稜線上で動けなくなる始末、パーティのメンバーに迷惑をかけてしまった。そんな経験があると、装備にこだわるようになる。軽量コンパクト、必要最小限ミニマルな装備が当たり前になった。そんなことが後々の生活信条の礎になったりしたのだろう。
素材にも気を使うようになった。最新素材はいつも憧れの的だった。年を重ねるごとに徐々に装備も整うと、憂いも薄らぐ。そうは言っても高価なものだけに大切に使うと気持ちが育ったのかもしれない。ただ、そうした最新素材はみな化繊からできているものが多い。今にして思えば、「サステナブル」とは言い難いものもばかりなのかもしれない。
高すぎて最後まで買えなかったのが、ゴアテックスの雨具。山を止めてから何年も経ってから、ゴルフ用の雨具として買うことにした。わざわざ登山用品店に行って、念願のゴアテックスの雨具を買った。結構高かったような記憶があるが、ゴルフ用に限らず今でも使うときがある。
アウトドアブランドとかスポーツブランドが好きな理由もこんなことにあるのかもしれない。
国内アウトドアブランド「スノーピーク」が、全国10カ所の主要拠点と直営キャンプフィールドの電力をCO2排出量ゼロの自然エネルギーに転換を始めたと発表した。ユーザーやサプライヤーとともに持続可能な社会形成を追求していくという。
より環境負荷の少ない、サステナビリティを追求したアウトドア体験を提供すべく、みんな電力を通じて、全国10カ所の主要拠点や直営キャンプフィールドで使用する電力をCO2排出量ゼロの自然エネルギーに順次転換します。直営キャンプフィールドにおいては、炊事場やシャワーでの給湯をはじめ、トイレや道路における安全確保のための照明などに使用予定です。 (出所:スノーピーク)
なぜか「スノーピーク」については、ちょっと厳しい目でみたしまうところがある。それは、「もっとできるでしょう」「もっとうまく伝えてよ」という、期待が大きいからなのかもしれない。そればかりでなく、新潟三条の金物問屋がその始まりだということを知って、余計に、「もっともっとできることがあるでしょ」と過度に期待しているからなのだろう。世に言う「サステナブル」なことばかりでなく、「地方活性化」ということに期待を膨らませ過ぎているのかもしれない。
「自然がなければ野遊びができない」とスノーピークはいう。キャンプ、グランピングという観光を通した地域活性化だけでなく、地域に根差した産業の発掘と深耕、それもまた、自然エネルギーの活用と同じように、サプライヤーやユーザーとともに創る「持続可能な社会」ということになるのではなかろうか。