Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【五輪に犠牲】ニュースはメディアの都合で変わっていいのか

 

 想像できることは実現可能といわれる。どうせ未来を想像するなら、ディストピアより希望に満ち溢れ、明るい未来のほうがいい。コロナが収まり、五輪開催できて、アスリートたちが活躍する姿を見る、そんな未来が実現すればと願うが、足元の状況や諸々の要素を鑑みると、そんな未来を想像することは難しそうだ。

 

 

 孫正義さんが五輪中止について、「今、国民の8割以上が延期か中止を希望しているオリンピック。誰が何の権利で強行するのだろうか」とツイートしたという。

 また、「違約金が莫大だという話はあるが、ワクチン遅れの日本に世界200カ国から選手と関係者10万人が来日して変異株がまん延し、失われる命や、緊急事態宣言した場合の補助金GDPの下落、国民の我慢を考えると、もっと大きな物を失うと思う」と指摘した。

 ロイターによれば、CNBCに対し、新型コロナウイルスパンデミック(世界的流行)のさなかに東京五輪を開催することを恐れていると述べ、日本と、代表選手を送る国々の双方に対し懸念を示したという。

 孫さんのツイートの真意は、ロイターが指摘した通り懸念を示すことだったのだろうか。そうした懸念を示すことで、何か違ったものを期待しているのだろうか。

 ただ、懸念を強調し過ぎるあまり、それが現実化する方が恐ろしい。個人的には明るい未来を想像したいが、それでも五輪よりはコロナの収束が優先されるべきとの思いに変わりはない。まして世論の8割が反対であれば、強行突破は如何なものかと思わざるを得ない。仮にそうするのであれば、相当の労力をかけ緻密に対話して、行動しない限り理解を得るのは厳しいのだろう。それとも、そんなことは端から諦めているのだろうか。

 

 

「五輪のため「犠牲を」バッハ会長 反発必至」との共同通信の記事が目にとまった。気にはなったが素通りしていた。この「犠牲」が話題だという。その真意が知りたくなった。

「Sacrifices」という単語が使われていれば、直訳すれば犠牲との意味になる。そればかりか、「Sacrifice」は、生贄も意味するので、誤解を生みやすいとも感じた。でも、そんなバカげた発言をするのだろうかと。

this.kiji.is

 共同通信の記事は、インドの通信社PTI通信の情報をもとに書かれているようだ。

 インドPTIの記事には以下のように書かれていた。先週の土曜日22日に開催された第47回国際ホッケー連盟(FIH)大会での演説の中で、声明を発表したという。

"With Tokyo (Olympics) finally on the horizon, the final countdown has begun. During this difficult times, we need to send a strong message of resilience, unity and our diversity. Tokyo will show light at the end of the tunnel," he said.

(東京(オリンピック)が間近に迫った今、最後のカウントダウンが始まった。この困難な時期に、私たちはレジリエンス、団結、多様性の強いメッセージを送る必要がある。東京はトンネルの終わりに光を放つだろう)

"The safety and security of our everyone is utmost priority. But together with our Japanese colleagues we will have to ensure that our athletes came come together and compete in a safe environment.

(私たち全員の安全と安心は最優先事項です。しかし、日本の同僚と一緒に、私たちはアスリートが集まって安全な環境で競技することを確実にしていかなければならない) 

The IOC chief said everyone has to make some sacrifices to fulfil their Olympic dreams.

IOCチーフは、オリンピックの夢を実現するために、誰もがいくらかの犠牲を払わなければならないと述べた)。

"We have to make some sacrifices to make this possible. The athletes definitely can make their Olympic dreams come true," Bach said.  (出典:PTI)

「これを可能にするために、私たちはいくつかの犠牲を払わなければなりません。アスリートは間違いなく彼らのオリンピックの夢を実現することができます」とバッハは言いました。PTI SSC SSC AH AH 

www.outlookindia.com

 文脈からすれば、ホッケー協会向けのメッセージであろう。これを共同通信は次のように報じた。

五輪開催を実現するために「われわれは犠牲を払わなければならない」と述べたと、インドのPTI通信が23日までに報じた。「われわれ」に日本人を含める意図があるのかは不明だが、国民感情に配慮を欠く発言として反発を招きそうだ。 (出所:共同通信

記事タイトル「Tokyo Olympics on schedule, says IOC chief Bach despite Japanese opposition」(日本の反対にもかかわらず、IOCチーフのバッハ氏は「五輪はオンスケジュール」と言う)からすれば、共同がそう報じるのも理解できないことではないが。

 

 

 その後、IOCは報道内容を否定したという。朝日新聞によれば、取材に対し「会長は『この前例のない状況に適応するため、オリンピック・コミュニティーの中にいる全員が犠牲を払わないといけない』と述べた。日本の人々に対してではない」と説明したという。

www.asahi.com

 また、「犠牲」について「参加する方も今までと違った形なのでいろいろな制約があるけど、それは我慢してやるべきだというニュアンスと受け止めた」と述べたという。PTIの記事を読んでもそう読むのが普通のように感じられる。

 共同通信も英語版でIOCの反応について報じた。

english.kyodonews.net

 あるできごとのある断片を取り出し、それを伝えるのがニュースとすれば、それは意図あってのことなのかもしれない。今回の報道はある意図があっての報道だったのか、それとも恣意的なものだったのだろうか。

 国民感情を考慮したのかもしれないが、現実から乖離があるように思える。

 

 

 英ガーディアン紙は国内の混乱ぶりを伝え、マスメディアの報道内容を紹介し、「東京2020に公式スポンサーとして投資しているほとんどの全国紙はオリンピックについて話したがらず、地方紙はもっと積極的に発信している」という。

amp.theguardian.com

 スポンサーでもある北海道新聞菅義偉首相を「人の命と健康への責任を失った」と非批判し、信濃毎日新聞は大会を中止すべきだと報じていると紹介する。

 メディアそれぞれにも都合というものがありそうだ。

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 ブルームバーグが、「米国務省、日本への渡航中止を勧告-東京五輪に新たな懸念」と報じる。

 「日本の国民や国際社会は五輪開催が可能な状況かどうかという点で納得しておらず、米国の渡航中止勧告は日本政府にとって打撃となる」とブルームバーグはいう。

 米国務省は何か意図をもっての発表だったのだろうか。さて、風向きに変化はおきるのだろうか。