Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

【誰が脱炭素社会へ導くのか】パナソニックのカーボンニュートラル宣言と「水道哲学」

 

 パナソニックが2030年までに事業活動に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を表明したという。少しばかり遅くないかと感じた。

 電機業界にいたときは、家電ではパナソニックにはかなわないと思っていた。そのブランド力と総合力が武器に思えた。

 そのパナソニックが喘いでいるという。共同通信によれば、業績が停滞する中、新たな成長事業の育成が課題となっているという。

 楠見CEOは「今後2年間は攻めるべき領域を定め、競争力を徹底的に高めていく」と話したそうだ。

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 強みを活かしていれば、もっと早く苦境から脱することができたのではなかろうか。

 かつては様々な企業ランキングで上位を欲しいままにし、家電といえば「Panasonic」、家電のナショナル(国民)ブランドになっていたのではなかろうか。今はどうなのだろうか。隆盛の時は過ぎ、かつての輝きは失ったのかもしれないが、それでもPanasonicへの信認は今も厚くないだろうか。

 

 

 2050年のカーボンニュートラルの達成が国の目標になった。エネルギー部門の脱炭素に注目が集まり、水素が次のエネルギー源と目され、多くの企業が参入を始める。それはそれでいいことなのであろうが、もっと身近なところで、省エネや再エネの利活用できるようになれば、全員参加型の脱炭素活動になったりしないだろうか。その具現化は一体誰が実行するのだろうか。

 かつてのナショナルブランドPanasonicだったり、シャープが市場をリードしてくれればと切に願ってしまう。

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(画像:パナソニック

 そのパナソニックが、水素を燃料とする燃料電池太陽光発電を組み合わせた企業向けの電力システムを事業化するという。事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄い、温室効果ガスを実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を後押しするそうだ。

 パナソニックによれば、滋賀県草津拠点に500kWの純水素型燃料電池と570kWの太陽電池を組み合わせた自家発電設備と余剰電力を蓄えるリチウムイオン蓄電池(約1.1 MWh)を設置し、実証を行なうという。発電した電力は草津拠点内の製造部門の全使用電力を賄うそうだ。

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実証に用いる当社製の純水素型燃料電池は、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」で培った技術を活用して開発したものです。コンパクトな筐体で発電効率が高いことに加え、複数台の連携制御により需要に応じた発電出力のスケールアップが可能であるほか、屋上や地下室、狭小地など柔軟な設置に対応します。 (出所:パナソニック

 

 

 この6月に社長に就任する楠見CEOが経営方針説明会で、創業者 松下幸之助が提唱した「水道哲学」にふれたという。

産業人の使命は貧乏の克服である。そのためには、物資の生産に次ぐ生産をもって富を増大させなければならない。水道の水は加工され価あるものであるが、通行人がこれを飲んでもとがめられない。それは量が多く、価格があまりにも安いからである。

産業人の使命も、水道の水のごとく物資を豊富にかつ廉価に生産提供することである。それによってこの世から貧乏を克服し、人々に幸福をもたらし、楽土を建設することができる。わが社の真の使命もまたそこにある。 (出所:パナソニック

www.panasonic.com

 そして、幸之助は、いくらモノが充実しても、それだけでは「理想の社会」を達成できず、「人々の精神的な安定」も同じように大事なことしたそうだ。

 この使命を達成するために、「建設時代10年、活動時代10年、社会への貢献時代5年、合わせて25年を1節とし、これを10節繰り返すという250年計画」を幸之助が発表したそうだ。

 国内の電機が勢いを失ったのが2012年頃といわれる。それから10年あまり。それまでの社会への貢献が終わり、次の社会貢献、脱炭素「カーボンニュートラル」に向けての建設の時期ということなのだろう。そろそろパナソニックの復活があってもよさそうだ。

 家庭用に開発されたエネファーム技術を活かして、大規模設備を敷設し、産業界に貢献する。今度は、それをもって家庭用に、水道の水のようにさらに廉価に提供していく。それが松下、Panasonicの使命なのではなかろうか。

 そうすることで人々がそれを安価に利用することができ、そして人々も自分自身がカーボンニュートラルに貢献していると実感できるようになるのではなかろうか。

 パナソニックにはその技術があるはずだ。そして、それを具現するときなのだろう。

 

 

 復活したソニーの礎を築いたのは、平井前CEOといわれる。その平井氏は、ソニーのBCLラジオ「スカイセンサー」をこよなく愛していたという。そのソニーハードウェア、プロダクツへの愛がソニーエレキ部門を復活に導いたのかもしれない。中興の祖と呼んでいいのかもしれない。

 前CEOの都賀社長は「くらしアップデート」を提唱した。その上で、楠見CEOが幸之助の哲学に立ち返り、それに徹すれば、パナソニック復活の日も近いのかもしれない。