多少偏見はあるのだろうが、大手電力会社に対する不信がある。
事情があることは理解するが、足元では電力料金は上がり続けるし、原発への不信は未だに拭えず、石炭火力に固執し続け、気候変動対策は進んでいるのだろうかと疑い目の持ちたくなる。
そんな疑いを九州電力が少しばかり晴らしてくれている。
昨年11月末に、「カーボンマイナス」を2050年よりできるだけ早期に実現しますと公表した。
電力会社が「カーボンニュートラル」より一歩踏み込み「カーボンマイナス」に言及することに少々驚く。
さらに、「電気料金が上がってはいけない。歯を食いしばって上がらないようにしないといけない」と、九州電力の池辺和弘社長が日経のインタビューで、そう答える。
ただ、「電気料金を安くするために、最もコスト効率的でCO2を出さない方法は原子力の再稼働を進めることです」という。
九電・池辺社長に聞く「脱炭素と電力自由化」、カーボンマイナスに込めた狙い | 日経クロステック(xTECH)
何が一番大事かというとカーボンニュートラルです。
そのために今できるのは、電化を進めることであり、電化を進めるには電気料金が安くなければなりません。そのための有力な選択肢は原子力の再稼働です。(出所:日経XTECH)
「カーボンニュートラルの達成」を一義とすれば、原子力の活用は避け得ない。現状では、現実的な解なのだろう。ただ2050年のカーボンマイナスが現実的に達成が見込まれるところまで、検討をすすめられているのなら、脱原発の検討も同時に進めることはできないだろうか。
新電力も発電事業に
「新電力は、ともに電力需要を開拓して電気を売る仲間だと思っています」と渡辺社長は述べ、「新電力にも発電所に投資してもらいたいです」という。
規模が小さくて単独ではファイナンスが付かないというなら、複数社で集まって作れば良いし、我々に声をかけてくれてもいい。電気事業を手がける以上、なぜ新電力が発電所を作ると言わないのかよくわからないのです。(出所:日経XTECH)
増える電力需要を思えば、説得力ある言葉に聞こえる。このような状況下にあれば、新電力が小売事業者のままでいいとは思えにくい。
なぜ九州電力は「カーボンマイナス」を目指するのか
カーボンマイナスを公表した理由を渡辺社長は2つあるという。公表することで社内が本気なるだろうと思い、また、それが地域との共創につながると考えたようだ。
人口が減り、産業が減り、子供たちの働く場所がないことへの不安です。子供たちが九州で働けるようにするには何が良いかと考えた時に、CO2を出さない電力が1つの売りになると考えました。(出所:日経XTECH)
自らの強みを活かして、低廉でクリーンなエネルギーで産業を呼び込み、地域の活性化に貢献するということであろうか。
サービスだけに終わることなく、発電という事業があってこそ、成し得ることなのかもしれない。
2020年度冬の電力危機を渡辺社長は振り返り、「LNGが不足し、よもや停電するのはないかという状況だった」という。それでも停電しなかったのは、発電機が過負荷運転をしたからだという。
発販分離したら、発電部門は過負荷運転なんかしません。
燃料調達にしても、この価格の燃料を電気にしたら売れるか分からないと思えば、正常な判断力を持ったビジネスマンなら買いません。
発販一体で企業全体で停電しないようにしようと動くからこそ、過負荷運転も燃料調達もできたと思います。(出所:日経XTECH)
渡辺社長は現在の電力自由化の問題を指摘し、「今のシステムのままの方が良いと思う」という。
電力自由化制度の見直しが必要なのかもしれないし、他の電力の発送電、小売りに携わる人々も意識を高くしなければならないのだろう。こうした人々が九電の競合となれば、もう少し状況に変化があるのかもしれない。
「参考文書」
九州電力 「九電グループ カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」を策定しました -九電グループは「カーボンマイナス」を2050年よりできるだけ早期に実現します-