ミドリムシが自動車レースに参戦するといってもいいのだろうか。
ユーグレナ社の100%バイオ由来のバイオディーゼル燃料を使用し、マツダのディーゼルエンジン SKYACTIV-D 1.5を搭載したレース車両が、11月13日(土)と14日(日)に岡山国際サーキットで開催されるスーパー耐久レースin岡山に参戦しているという。
マツダによれば、エンジン自体を変更することなくバイオディーゼル燃料で十分な性能を発揮することができるという。
マツダのレース車両にユーグレナ社のバイオ燃料
マツダによれば、来年からフルシーズンの参戦の準備を進めているそうだ。
MAZDA NEWSROOMマツダ、次世代バイオディーゼル燃料でモータースポーツに参戦|ニュースリリース
100%バイオ由来の次世代バイオディーゼル燃料の実証実験として、ユーグレナ社からのバイオ燃料「サステオ」供給と、レーシングチームNOPROからの協力を受け「MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」としてST-Qクラスに参戦します。また、ユーグレナ社から来シーズンも燃料供給を受ける計画です。
スーパー耐久レースは1991年から続く市販量産車をベースとしたレースで、ST-Qクラスはスーパー耐久機構事務局が参加を認めたメーカー開発車両が出走可能なクラスです。 (出所:マツダ)
世界ではインディカーレースでも、バイオエタノールが採用され、ルマン24時間耐久でもバイオ燃料が採用されるという。そればかりでなく、F1においても合成燃料の使用が検討されている。国内の自動車レースにもいよいよカーボンニュートラル、脱化石燃料が参戦する。
トヨタとスバルは合成燃料を使って来年レースに参戦
トヨタ自動車など国内自動車と二輪メーカー5社が13日、「スーパー耐久レース in 岡山」(3時間レース)において、カーボンニュートラル実現に向け、内燃機関を活用した燃料の選択肢を広げる取り組みについて共同で発表した。
トヨタら国内自動車・二輪5社、脱炭素燃料や水素エンジンで連携 - Bloomberg
トヨタとスバルは、バイオマス由来の合成燃料、マツダはバイオディーゼル燃料を搭載した車両でレースに参戦し、また、川崎重工業とヤマハ発動機は二輪車向けの水素エンジンの共同研究の可能性について検討を開始するという。
ブルームバーグによると、トヨタの豊田社長が「敵は炭素であり、内燃機関ではない」と強調したという。
スバルの中村知美社長は、今回の合成燃料での連携はトヨタから持ちかけられたと明らかにし、「われわれとしては選択肢を狭めない、バッテリーEVだけでなく、内燃機関を活用した道にもチャレンジしたいという思いがあり、それはトヨタと一緒」と語った。
レース参戦により関連技術の開発やエンジニアの育成にもつながると考え、「すぐに賛同して一緒にやりたい」となったという。(出所:ブルームバーグ)
自動車レースを通して、バイオ燃料や合成燃料がカーボンニュートラルに貢献できることを証明し、それが広く社会に認知されればいいのだろう。
そして、何よりバイオ燃料などなら、今あるガソリンスタンドなどの社会インフラをそのまま活用することもできる。
トヨタの水素エンジン
トヨタは、「スーパー耐久レース in 岡山」に水素エンジンを搭載したレース車両で参戦、豊田社長もドライバーとして参加しているという。
レースに使用される水素エンジンはヤマハ発動機やデンソーと共同開発したものという。 ヤマハが、エンジンの試作・燃焼検討・出力性能向上検討やレースでの適合・耐久試験のサポートに加え、一部エンジン部品の設計を担当し、デンソーは、直噴インジェクター・点火プラグの開発を担当したそうだ。
また、水素の運搬には、トヨタ輸送の大型・中型トラックが使用され、その燃料はユーグレナ社のバイオ燃料だったという。
南米ではバイオ燃料 = 独フォルクスワーゲン
欧州で強力にEVシフトを進める独VW(フォルクスワーゲン)が、南米地域ではカーボンニュートラルの実現をバイオ燃料の普及で補完するという。
VW、南米でのカーボンニュートラル戦略はバイオ燃料で | 日経クロステック(xTECH)
日経XTECHによれば、南米は充電網がなく、再生エネルギーも供給されていないため、急激な電動化は見込めないという。このため、既存のバイオ燃料研究開発センターにさらなる投資を行うそうだ。バイオエタノールはCO2排出量がガソリンに比べて最大90%低減できる(実際にはガソリンとの混合比によって変わる)という。
高まる電力需給に再生可能エネルギーの発電能力が追い付き、すべてがクリーンな電力になれば、自動車のEVシフトを強力にすすめるべきなのだろう。しかし、現実には、急激なEVシフトは電力需給に負担をかけ、圧迫しかねない。
未来のクリーンな電力が供給される社会を見据えEVシフトを進めるにしても、今は一定程度、カーボンニュートラルな内燃機関の自動車を走らせる必要があるのだろう。自動車の脱炭素は、現時点ではこれがベターではなかろうか。