Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

SDGsや脱炭素社会における経済の新機軸とは

 

 経済産業省で「経済産業政策新機軸部会」が立ち上がり、この先、避けえなくなる産業構造の変化における経済活動の新機軸や人材育成のあり方の協議が始まったようだ。

 国が突然、カーボンニュートラル宣言すれば、経済界では動揺が走り、多少の混乱があったのだろう。従来であれば十分な根回し的な手続きがいく度も繰り返され、それから国の発表となっていたのかもしれない。

 今回、経済産業省で立ち上がった新しい部会もそんな香りがしないでもないが、公表された資料に目を通せば、これまでの違ったアプローチを標榜し、そうせねばならないとの意気込みも感じないわけでもない。

 

 

経済産業政策新機軸部会

 長期で到達すべきゴール・ビジョンを明確に設定(当面、2030年、2050年)し、政府が「ミッション志向」で積極的政策対応すべき社会・経済課題や分野を特定するという。

 差し当たっては、グリーン社会、デジタル社会、経済安保・グローバル社会、包摂的社会、健康・ヘルスケア、レジリエンスの実現を「ミッション志向」で取り組み、人材、スタートアップ・イノベーション、企業改革、行政アップデートをそれらの実現の基盤として抜本的に強化するという。

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(資料:経済産業省「経済産業政策新機軸部会」)

世界で「ミッション志向」で取り組むべきとされるのはグリーンや格差(包摂的社会)であるが、日本では、デジタルやグローバル化は世界に対して周回遅れとなっていることが問題であり、積極的政策対応が必要。(出所:経済産業省

 従来はそれなりに構想し、そりなりに上手く絵を描くことはできても、政策実行がうまく伴なわず、かえって企業の足を引っ張ていたのかもしれない。

 国際社会が脱炭素を目指し、SDGsや格差解消に動けば、企業も否応なしにその流れに引きずられる。そこに政策的な後押しがあるべきことはいうまでもないのだろう。

きのうの優等生はあすの「負け組」

 自然界のエネルギーを機械の動力に変える装置はこの150年間、世界の富の源泉であり、重電産業は国家と不可分の関係にあった。COP26が開催されている最中、米GE(ゼネラル・エレクトリック)が会社分割を発表したことは、時代変化のはじまりのような象徴的な出来事という。

四半世紀の重電不況 きのうの優等生、あすの「負け組」: 日本経済新聞

 重電メーカの基幹であるタービンなどの原動機や変圧器、整流器などは、再生可能エネルギーが主電源になっていけば、従来ほどの需要はなくなるのかもしれない。GEなどのメーカは既に火力発電用タービンからの撤退を決め、構造改革を進めていた。この会社分割はその仕上げなのかもしれない。

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 何も重電メーカだけではなく、化石燃料メーカを筆頭に、CO2排出量が多い産業への構造改革の圧力は強まっている。

 経済産業省が指摘するように、気候問題や米中摩擦など国際情勢の変化によって、事業環境も大きく変化することになる。きのうの優等生はあすの「負け組」になる。サバイバルレースがますます激しくなると日本経済新聞はいう。

 

 

変化すれば歪みが生れる

 一方、資源価格は、脱炭素がもたらす需給の歪みによって、今後も押し上げられる可能性があるとニュースイッチが指摘する。

脱炭素がもたらす需給の歪み、石油開発の停滞で景気減速の懸念|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

国際エネルギー機関(IEA)によれば、石油・ガス田への21年の世界投資額は14年比で約5割減となり、微増する再生可能エネルギーへの投資額を2年連続で下回る見込みだ。世界各国が表明済みの脱炭素政策を反映したIEA予測では、30年代半ばに石油消費がピークアウトを迎える見通しで、供給が先行して減少し、需給がタイトになる可能性がある。(出所:ニュースイッチ)

 日本においては、上流権益の確保や調達先の多様化、サプライチェーン(供給網)の連携による原材料の調達コストの低減など、資源高への対策強化が求められそうだと、ニュースイッチはいう。

 構造改革などの大きな変化がおきれば、歪みが生じるのが自然の摂理というものだ。その歪みに正しく対応すれば、変化をさらに進めることができる。

 何かを変える機会なのだろう。デジタルの出番かもしれないし、サプライチェーンの統廃合を含めた調達を刷新する好機なのかもしれない。そうした絶え間ない改善・改革で、脱炭素社会に一歩ずつつ近づいていく。