この秋に開催されるCOP26に向け、各国が準備を加速させているのでしょうか。
米国の気候変動問題を担当するケリー大統領特使が、気候変動問題の解決に向けた窓口は狭まっているとし、11月に英国グラスゴーで開催される第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を重要な転換点にする必要があるとの認識を示したそうです。
「気候変動に対応し、最終的にこの危機を終わらせなければ、コロナ禍による苦しみは何倍にも膨れ上がる」とし、「気候変動への対応をコロナ禍後まで待つ余裕はない」と語ったといいます。とても印象的な言葉です。
欧州では、EUの執行機関欧州委員会が、2030年の温室効果ガス削減目標「1990年比で少なくとも55%削減を達成」するための政策パッケージ「Fit for 55」を発表しました。まだ紆余曲折が予想されるようですが、今後、これが基調になり、加盟国や欧州議会で議論され法制化されるといいます。
今回の政策パッケージは多岐に及んでおり、相互に連関している。
しかし大別した場合、発表された法令案はおおむね、改正EU-ETSおよび新たに発表されたCBAMなどカーボンプライシングに代表されるEU独自の枠組みの見直しおよび整備(1~5)、エネルギー利用に関する規制(6~8)、自動車をはじめとする運輸・モビリティ分野の排出削減に関する規制(9~12)の3領域に整理することができる。(出所:JETRO)
JETROによると、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は、政策の方向性は正しいとし、「悪魔は細部に宿る」ということわざを用いて、多くの産業に多大な影響を及ぼすことが予想される同パッケージの今後の検証が重要だと指摘したといいます。
国内でも「エネルギー基本計画」の素案が固まり、今後10月までには閣議決定されるといいます。また、「地球温暖化対策計画」の素案の内容も明らかになったとNHKが伝えています。
「すべての社会経済活動において脱炭素を主要課題の1つとして位置づけ、持続可能で強じんな社会経済システムへの転換を進めることが不可欠」として、政府が脱炭素を軸に政策を進める姿勢を鮮明にしています。
また、家計に伴う消費による排出量が全体の6割を占めるという分析を示し、省エネ・脱炭素型の製品への買い替えやサービスの利用を促すことで、「国民一人一人の自主的な行動や積極的な選択に結び付け、ライフスタイルの脱炭素化を図る」としています。 (出所:NHK)
こちらも秋までに計画を閣議決定する方針だといいます。
COP26を意識した日程で議論が進められているということでしょうか。従来のようにCOPの場で単に削減目標を示し国ごとに競うのではなく、各々国がきわめて実効性の高いものを目指すときになっているような気がします。
ただ計画を作り、押しつけるのではなく、企業や国民、すべてのステークホルダーが理解を深め、能動的に「脱炭素」に参加するように仕向けるのが、国の仕事、役割でもあるような気がします。
『われわれは数字にコミットしているだけでなく、非常に明確な具体策も持っている』と、欧州の政策パッケージ「Fit for 55」の発表について、ヨーロッパ気候基金のローレンス・トゥビアナ最高経営責任者が述べたと東洋経済オンラインが伝えています。
ヨーロッパ委員会がこのタイミングを選んで包括案を公表したのは、気候変動対策で先行するヨーロッパの立場を際立たせ、中国やアメリカなど他の主要排出国に圧力を加えるためだ。 (出所:東洋経済オンライン)
国はどこまで意識できているのでしょうか。COP26でも、リーダシップを発揮することができる実行計画が作ることはできるのでしょうか。