Up Cycle Circular’s diary

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【矛盾する脱炭素】JICAが支援を続ける東南アジアの石炭火力発電、矛盾解消はできないか

 

 COP26も閉幕し、すっかり「脱炭素」がビジネスサイドの語り口になっているようだ。専門家、知識人たちが一斉に意見を述べる。

 こういうときは、奇をてらうよりはまずは「正論」ではないだろうか。「兵は詭道なり」、相手を欺くことばかりに精を出すとろくなことにならない。トヨタの豊田社長ではないが、「敵は炭素で、内燃機関ではない」ということなのだろう。

 

「今後20~30年かけてカーボンニュートラルを実現するという、不連続の大きな変化が始まっている」。「様々な規制や制度が今後出てきて競争条件も変わる」と、経営コンサルタントの富山氏がいう。

 ビジネスの環境が変化し、日本や日本企業がその変化に適応するのかしないのか、というシンプルな問いを突きつけられているという。

 

 

 これまで競争を繰り返しては敗れてきた企業にはこの方がわかりやすいのかもしれない。

半導体や太陽光の失敗繰り返すな 「分厚い付加価値」で勝負しよう:日経ビジネス電子版

人口が減っても、割と皆で愉快に、経済的にも環境的にも豊かに暮らせる国になるのか、それとも、何か知らないけど歯を食いしばって、コストサイドでものづくりを続けて、どんどん所得は下がり、二酸化炭素(CO2)を大量に出す、ある意味、発展途上国に戻っていくのか、今我々は、その岐路に立っているんだと思います。(出所:日経ビジネス

「日本の周囲を見渡せば、すぐ西に10億人以上の市場があり、東南アジア諸国連合ASEAN)は6億人を超え、インドだけで十数億人です」。このスケールを活かすのが日本の生き残る道という。正論なのかもしれない。近隣国と協力関係を作るべきなのだろう。

 一方、マネー現代は、カーボンプライシングの導入とFIT制度の廃止を提言する。 こうした意見も一理あるのではないでしょうか。

 

 

脱炭素に舵を切るアジア

 COP26で、アジアの首脳もまた温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す長期的な目標を相次いで表明したという。

目標出そろい脱炭素本格化へ 気候危機「決定的な10年」(1) - NNA ASIA・日本・マクロ・統計・その他経済

 インドのモディ首相が、30年までに電力需要の50%を再生可能エネルギーで賄い、70年までにカーボンニュートラルを実現することを表明した。インドネシアは60年を目標とし、ベトナムは50年までにカーボンニュートラルを目指す。タイも同様に50年を目標にした。

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 COP26では、温室効果ガスの排出削減対策がとられていない石炭火力発電所について、先進国は30年代、世界全体では40年代に廃止するという内容の宣言が発表され、47の国と地域が賛同した。

 アジア主要国では韓国とシンガポールのほか、石炭への依存度が高いベトナム、さらにインドネシアとフィリピンも条件付きで署名したそうだ。

 石炭火力発電の比率が4割を超える東南アジアの3カ国が宣言に署名した狙いについて、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの東梅貞義事務局長は「脱炭素をしながら経済発展を目指すには、海外投資を呼び込んで新しい生産設備や技術で社会全体を脱炭素へ移行させる必要がある。その際に先進国が石炭火力発電に投資してくれる見込みがなくなったと判断したのだろう」と話す。 (出所:NNA ASIA)

 

 

続く石炭火力への融資

 そんな中、日米豪の環境NGO 5団体が、JICA 国際協力機構が発行したドル建て債券発行時に、調達資金を石炭火力発電事業に充当しないとする説明が事実と異なるとして、SEC(米国証券取引委員会)に異議申し立てを行なったという。

 NGOが問題視したのは、JICAが4月に発行した5億8000万米ドルの債券、債券発行時に米国証券取引委員会に提出した目論見書には、調達した資金を石炭火力発電事業に充当しない、と説明しているにもかかわらず、現実には石炭火力へ融資しているとNGOは指摘する。

FoE Japan |プレスリリース:石炭火力にJICA債資金を充当しないとの説明を巡って環境NGOが米国証券取引委員会に異議申立て

 そのNGOのひとつである「FoE Japan」によると、JICAは、バングラデシュのマタバリ石炭火力発電事業フェーズ1の本体工事と、インドネシアのインドラマユ石炭火力発電事業のエンジニアリング・サービスに対する融資について貸付実行中であると同時に、マタバリ石炭火力発電事業フェーズ2及びインドラマユ石炭火力発電事業の本体工事に対する融資について契約締結に向けた手続を行っているそうだ。また、債券発行による調達資金は、これら事業の融資資金の拠出元となるJICAの有償資金協力勘定で一括して管理されていることが異議申し立ての根拠としている。

 JICAは外務省が所管する独立行政法人。政府指導が行き届きにくいのだろうか。

 理想と現実は異なるのかもしれない。それでも、やるからには何ごとも徹底にやらなければならない。目論見書記載内容を逸脱するのは言語道断ではなかろうか。